第21話 サークル活動と新しい視点
あの狂乱の一夜から数日が過ぎた、週明けの火曜日。俺たちは、何事もなかったかのように、大学のキャンパスを歩いていた。降り注ぐ午後の日差し、学生たちの賑やかな声、木々の葉を揺らす穏やかな風。全てが、あの日以前と、何一つ変わらない日常の風景のはずだった。だが、俺の目に映る世界は、もはや、以前とは全く異質なものに、鮮やかに、そして、どこまでも色鮮やかに、変貌を遂げていた。
俺の数歩前を、詩織と瑠璃が、仲睦まじげに並んで歩いている。サークル内でも一際目を引く美少女二人組。その光景は、以前の俺にとっては、ただ、眩しいだけの、自分とは決して交わることのない、別世界のワンシーンでしかなかった。だが、今は違う。彼女たちは、俺だけの「雌」なのだ。その事実が、俺の心に、王だけが知りうる、絶対的な余裕と、揺るぎない自信を与えていた。
俺たちが向かう先は、週に一度の定例会が開かれる、「サブカル研究会」の部室だった。あの夜の、全ての始まりとなった場所。扉を開けると、そこには、いつも通りの、雑然とした、しかし、どこか居心地の良い空間が広がっていた。古本の黴臭い匂いと、誰かが持ち込んだスナック菓子の匂いが混じり合った、独特の空気。その空気を吸い込んだ瞬間、俺は、自分が、この世界の確かな支配者であるということを、改めて実感した。
「あ、桜井さんに神宮寺さん! ちわーっす!」
「二人とも、先週の飲み会、大丈夫だった? 山岸さん、しつこかったでしょ?」
部室にいた他の男子メンバーたちが、待ってましたとばかりに、詩織と瑠璃の周りに、ぶんぶんと尻尾を振る犬のように群がってくる。その光景を、俺は、少し離れた場所から、腕を組んで、静かに眺めていた。以前の俺ならば、その輪に加わることもできず、ただ、劣等感と、どうしようもない疎外感を、一人で噛み締めていたはずだ。
特に、その輪の中心で、詩織に対して、ねちっこい視線を送り続けている男、山岸。あの夜、俺の支配者としての覚醒の、引き金を引いた男だ。彼は、俺たちの間で何が起こったのかなど、知る由もない。ただ、いつものように、自分の歪んだ欲望の眼差しを、無防備に詩織へと注いでいる。
だが、今の俺は、その光景を見ても、もはや、一片の嫉妬も、焦りも感じなかった。むしろ、哀れみすら覚えていた。お前たちが、どれだけ彼女に言い寄ろうと、その笑顔の裏にある、本当の顔を知らない。お前たちが、神聖なものとして崇めているこの少女が、つい数日前、俺の下で、淫らな言葉を叫び、俺の精液を、その身体の奥で、喜んで受け入れた「雌」であるということを、お前たちは、永遠に知ることはないのだ。その、圧倒的な優越感。俺だけが知る、甘美な秘密。それが、俺の心を、仄暗い喜悦で満たしていった。
定例会が終わり、部室を後にする。俺が、一人で帰路につこうとすると、背後から、詩織と瑠璃が、慌てたように追いかけてきた。そして、他のサークルメンバーの姿が見えなくなった、大学の裏庭に続く、薄暗い渡り廊下で、二人は、まるで示し合わせたかのように、俺の腕に、左右から、同時に、その柔らかな身体を絡みつかせてきたのだ。
「……陽介くん」
「……陽介センパイ」
甘く、そして、熱を帯びた声。公衆の面前で見せていた、あの「普通の女子大生」の仮面は、もはや、どこにもない。そこには、ただ、自らの「雄」に、甘え、そして、次の交合を求める、「雌」としての、本能的な姿だけがあった。
「……お願い。早く、お部屋に帰って、抱いてください……❤️」
「もう、我慢できないです……❤️ 早く、めちゃくちゃにしてください……❤️」
二人の、切実な囁き。それは、俺の、この世界における絶対的な支配者としての地位を、何よりも雄弁に、そして、これ以上ないほど、官能的に、証明していた。俺は、満足げに微笑むと、二人の腰を、力強く抱き寄せ、俺たちの城へと、その歩みを、速めたのだった。
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