これは追放されて当然です

 私は追放系がそこまで好きではありません。
 その作品多くに「理由付けの弱さ」を感じてしまうからです。

 確かに筋の通った理由をしっかり描いてしまうと、追放した側に正当性が生まれてしまいます。すると読者は「主人公かわいそう!」ではなく「まあ仕方ないよね」と思ってしまう。そうなると「ざまぁ」展開が成立しにくくなります。
 だからといって、追放の場面で突然追放側の頭が悪くなったり、性格が急に悪人化したりする展開には、やはり違和感を覚えて読む手が止まってしまいます。作者が無理やり追放しようとするメタ臭が漂っているとでも言いましょうか。

 また、ざまぁ展開そのものも「そこまでしなくても……」と思うことが多いです。殺されかけたとかならともかく追放されただけで……。これは、私自身の生活にストレスが少ないからかもしれません。

 さて本作は追放系ではありますが、その理由付けに納得感があります。むしろ納得しかありません。「さっさと追放した方が双方のためでは?」と思わせるほどに。

 そして何より、キャラクターが魅力的でした。
 聖女の立ちすぎたキャラには思わず声をあげて笑ってしまい、勇者もなんだかんだで好人物。

 短編向きの設定だとは思いますが、ぜひ連作短編としても読みたい――そんな魅力にあふれた作品でした。

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