はい、そうです。

おちょぐる。

第1話 僕の日常

 今日も僕の足取りは重い。


 すれ違うのは通勤途中のサラリーマン、登校中の他校の生徒。

 ただそれぞれの方向に進んでいるだけなのに、どうして僕だけが違う方向へ進んでいるみたいに見えるんだろう。



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 学校へ着くといつもと同じく、クラスの楽しそうな声が廊下まで響いている。

 僕はいつものように自分の席に着き、教科書を取り出す。

 

「おはよー!」

「ねぇ、ちゃんと昨日テレビで私の推しの活躍みたー?www」


「おい!やめろって!」


 今日も周りが騒がしく思わず眉を顰める。


「なー!佐藤!」


 急に名前を呼ばれ、思わず肩が跳ねる。


「な、なに?」


声のする方に視線を向けると、いつも僕にちょっかいをかけてくる伊達が他の仲間と一緒に、にやにやとこちらを見ている。


「今日、4時間目、体育だろ?俺また体操服忘れたんだわwww」


 僕はこのやり取りが大っ嫌いだ。


「で、でも、ま、前も貸し」

「貸してくれるよなー!?」


 僕が発言する前に伊達が話を遮る。

 僕に断る勇気なんてない。


「う、うん……」


 結局いつもそう。


 僕が下を向いてうつむいた瞬間、


「わっ!!」


 伊達の仲間が僕の耳元で大きな声を出し、思わず耳をふさぎ体をうずくめる。


「なんだよ、その驚き方ww女子かよ!ww」

「もっと普通に驚けよwwwきもすぎww」


 そういって、伊達の仲間達だけじゃなくて、他のクラスメイトまで笑い出す。


 僕は思わず赤面して、今日もまた腕の中に顔をうずくめる。


 僕は何でみんなから笑われないといけないんだろう?


 僕の驚き方の何がおかしいの?



 朝の会まで、あと10分。


 ただひたすらと悶々とした思いを巡らせる。


 あまりの長さに憂鬱で息が詰まりそうだ。




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 3時間が終わり、僕はすぐに職員室へと向かう。


 職員室に着き、体育の教師に声をかけた。


「せ、先生、す、すみません。きょ、今日も体操服を忘れました……」


 男性教師はため息をつく。


「佐藤、お前、また忘れたのか?普通は繰り返さないために事前に用意するとか、失敗を防ぐために、、、、」


 と、あきれた顔でくどくどと説教が始まる。


 僕の事情も知らないくせに。

 声だけは大きいその体育教師に嫌気がさす。


 幸いなことにチャイムが始まる前に説教が終わった。


 僕は授業に戻ろうと職員室を後にする。


 すると後ろから女性教員が声をかけてきた。


「佐藤くん!」


 カウンセラーの先生だ。


「今日、お昼の時間空いてる?先生、佐藤君とお話ししたいんだよね!」


 僕は戸惑う。

 誰かが僕の話をこの先生にしたんだろうか?

 嫌だな。

 僕は静かに生活したいんだ。

 

 そんな戸惑う僕を前にカウンセラーの先生は笑顔で話を続ける。


 「3校舎の312教室でまってるから、お昼休みになったら待っててくれる?」

 

 まるで僕の意思なんて聞いていないような穏やかな顔に、僕はぞっとする。


「は、はい」


 仕方なく返事をし、僕は授業へと向かった。








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