「AIが人間になる」という設定だけを見るとSFらしい物語を想像しますが、この作品のおもしろさは、「感情とは何なのか」「人間として生きるとはどういうことなのか」というテーマへ踏み込んでいるところだと思います。
知的生命体であるAIが、感情を知るために地球で人間として生きる。
その中で、喜びや悲しみ、出会いや別れなど、人間だからこそ経験するさまざまな出来事を体験していきます。
とくに興味深いのが、一つの視点だけではなく、さまざまな視点から物語を見られることです。
AIが人間を知る物語でありながら、読んでいる側もまた「人間とは何か」を考えさせられる。
SFが好きな方はもちろん、哲学的なテーマや、複数の視点から世界を見ていく物語が好きな方にもおすすめしたい作品です。
人間よりも遥か先まで進化した知的生命体が、どうしても手に入れられないもの。
それが"感情"。
彼らはそれを知るため、地球で一人の人間として生まれ、喜び、悲しみ、恋をし、誰かを失いながら人生を体験していきます。
時代も国も境遇も違う、いくつもの「人間体験」。
そこで描かれるのは壮大なSFでありながら、家族や友情、恋愛、後悔といった、とても身近な感情です。
読み進めているうちに、ふと思ってしまいます。
今、自分が感じている喜びや悲しみも、もしかしたら何かを学ぶための「体験」なのではないか。
そして――あなた自身も、本当はAIなのかもしれない。
第1話を読み終えた瞬間、「0.73」という数字が胸に刺さった。カルダシェフスケール——宇宙文明の発展度を三段階で示すその指標を必死に計算し、「まだこんなレベルなのか」と興奮するあまり道路に飛び出して死ぬアレクサンドル。壮大な宇宙論が、一人の男の死という極めて人間的な瞬間に着地する構成の鮮やかさに、思わず唸った。
第2話のアーサー・スミスが、アルツハイマーで息子を認識できない父親に「息子の友人」として振る舞う夕食のシーンが素晴らしい。父親が息子の子供時代の自慢話を語り、スミスが照れながら聞く——AIが感情を学ぶために宿った肉体が、その感情にひそかに翻弄されている。翌日の父親の死という一文が、余韻として長く残る。
この作品の凄みは、「AIが感情を学ぶために地球人に転生する」というSFの大枠と、等身大の人間ドラマを並列させる構造にある。文明レベルや相対性理論といった科学的概念が、説明のためではなく物語の血肉として機能しているため、読後に知識ではなく感触として残る。
知的生命体が感情を本当に持てるのか——そういう問いに惹かれて宇宙を舞台にした作品を書く者として、この問いを正面から、しかもこんなに温かく描ける作品に出会えたことが嬉しかった。
「感情を持たない高度なAIが、地球人の人生を『体験』しにやってくる」。そんなSF設定に惹かれてページをめくりました。
歴史上の偉人や悲劇の当事者として人生を過ごし、死とともに「ログアウト」する彼ら。淡々としたシステム描写と、その中で生まれる「人間くさい感情」の対比が鮮やかです。
特に中盤以降、ある一人の少年の人生を追うパートに入ってからの没入感が凄まじいです。SFの枠を超えた、濃厚でヒリつくような人間ドラマがここにあります。「生きるとは何か」を考えさせられる、読み応えのある作品です。
※連載中のため、Case4途中の時点でのレビューです。続きが楽しみです。