第29話 case 4-祖父の笑顔

「央吾、起きろっ!じいちゃん探しに行くぞ」


央吾が中学2年になる頃には深夜徘徊する祖父を探しに行くのも日常茶飯事だ。


「またぁ?…眠ぅぅぅ…」


とは言うものの祖父の事は心配だ。


「俺、大西の方行ってみるよ」


大西とは近所の酒屋の事。

たいてい祖父はどこかでお酒を飲んでいる。当然こんな時間に酒屋は開いてないが、店の前で座り込んでいる事が多かった。


真っ暗な路地を抜け大西を目指す。

車も全然走ってない。新聞配達のバイクが時々走ってるぐらいだ。


大西に着いたが、祖父は居ない…

寿司屋、病院、郵便局、駅…心当たりがある場所は探してみたが、全然居ない。


小学校の方に行こうかとおもったが、走って行くには少し遠い。

とりあえず家にチャリでも取りに戻るか。


家に着くと祖父が居た。


「良かったぁ、何処にいたの?」


「鈴木の酒屋。やっぱり酒飲んでたわ」


父親が面倒臭そうに答えた。鈴木の酒屋は大西とは逆方向にある酒屋の事。


「おぉ、ちょっと酒でも買おうかと思ってなぁ」


「じいちゃん、こんな時間に酒屋開いてないよ」


母親が原付で帰って来た。びっくりするぐらいノーリアクションの無表情。


「鈴木に居たんだって」


質問してくる前に答えた。


「そう、もうゴンギョウの時間よ」


母はヘルメットを脱ぐと、そそくさと家に入って行った。


「じいちゃん、ゴンギョウだって。家入ろ」


「央君、身長伸びたなぁ。もう、じいちゃんよりもずいぶん高いぞぉ」


「俺、もう中2だからね」


「もうそんなになるか、大きくなるのは早いなぁハハハハ」


祖父の中では毎日リセットされている様だった。毎日の様に同じ内容の会話がある。

ちょっとうんざりもするが、祖父が笑う顔は好きだ。

祖母が死んでからお酒の量が増え続けている。

体に良くないのは分かってるけど、ばあちゃんの事好きだったんだなぁ、そう思うと不思議と可愛く見えてくる。


「じいちゃん、こっちだよ」


元々祖父母の家があった高梨家の隣の土地には、最近アパートが建てられた。


じいちゃんは多分、前の家と勘違いしてるんだろう。たまにそっちに行こうとする事がある。


「ゴンギョウするなら、時子も呼ばないとな」


最近、記憶も曖昧らしい。ばあちゃんの名前を呼びながら泣いてる時もあるのに…


「俺が呼んでくるから、先上がってて」


「そうか、じゃあ央君頼んだよ。もう起きてると思うから」


祖父が家に入るのを見て、少し間を空けて家に入った。


「央吾、何してんの!?早くしなさいっ」


うるせぇよ、ピッコロ大魔王。

ピッコロ大魔王には優しさがない。

それは当然の事だ。

神様自身の体から追い出した悪い心がピッコロ大魔王だからだ。仕方ねぇよな。


って、神様って誰だよ。テンショウサマ?

ないない、神様なんか居ない。

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