第27話 case 4-チロの判断

目が覚めた。小便がしたい…

いつもと変わらぬ朝。見慣れた風景…というか、自分の部屋。

寝ぼけた目は、まだ半分も開かない。

早くトイレに行きたかった央吾はとにかく布団から出て階段を降りた。


「おはよう」


キッチンから…母の声…?


…あれ?


ここ何処?


そりゃ家だろ。


いやいや、昨日秘密基地で寝たじゃん。


…え?…、…、…夢だった?


「あんたねぇ、あんな所で寝ないでよ」


「え?…、…あぁ…、…、うん」


意味が分からない。状況が分からない。

昨日どこで寝たんだっけ…あの記憶は何?…


状況把握に困っている様子の央吾を見て母は直ぐに悟ったようだ。


「チロがね、呼びに来てくれたの。チロについて行ったら、あんたがタイヤの上で寝てたのよ」


あんな硬いタイヤで寝てた?マジ?

試合で遠征行った時、枕変わっただけでちゃんと眠れなかった俺が…?

秘密基地にしてはかなりハイレベルの部屋だが、

自分の部屋と比べるとそりゃ、お話にならないぐらいの差がある。

あんな粗悪な状況で…熟睡?…いや、おんぶされても気付かない程に爆睡していたのだ。


と言うか、チロのやつ裏切りやがったな、

ベビースターラーメンだけじゃ少なかったか。


「暗くなっても帰ってこないから、心配したぞ」


ここにいたかシンバル…いや、父だ。


「うん…、…、ごめん…」


この高梨家に嫌気がさして本当に家を出てやると意気込んでいたのに、寝ている間に帰宅って…

ハハハハ笑えない…気まずい空気が…流れてはないが…流れていないのが逆にめっちゃ恥ずかしいわぁ〜。

昨日は本気だったし、勢いもあった。

でも今は布団の上で目を覚まして、悪い気もしていない…

恥ずかしいが、この空気に一日程耐えれば多分無かった事のようになるはず。


「あれ?そう言えばゴンギョウは?」


「もう終わったわよ。まあ今日は特別よ、昨日最後の試合だったしね。もうすぐ9時よ、スグル君の家に行くんでしょ」


「え?うん、でもいいの?」


「内職?まあ今日は特別ね。遊んで来ていいわよ。明日からはちゃんとやってもらうけどね」


あれ?マジ?甘えていいの?

央吾は頭の中で自問自答した。

姉の神業の事がほんの少しだけ脳裏をよぎった…神業に入る前には随分と優遇されていた…

それでもスグルの家に行かず内職する選択肢など当然無い。


白ご飯とみそ汁とたくあん。以上。

いつもの朝ご飯だ。

ただ、昨日の夜うまい棒しか食べていない央吾にとっては嬉しくも有難い食事に見えてしまった。


朝ご飯を終えると、チロの散歩。


「チロ、お前昨日裏切ったなぁ〜この野郎〜」


怒りの感情は全く無かった、むしろナイスの感情であったのかも。

笑顔でチロの頭を撫で回しながら、会話した。


(央吾)「PL行ってみたかったけどなぁ…」

(チロ)「しょうがねぇよ…」

(央吾)「家出した所で、PL行ける訳ないし」

(チロ)「ベビースターラーメンだけじゃ無理」

(央吾)「ごめん、ごめん」

(チロ)「で?野球やめるの?」

(央吾)「やるよ、ヨータもスグルもいるし」

(チロ)「わんっ!ワンッ!」


チロが応援してくれている。そう感じた。

と言うか、いつもチロは応援してくれている。


PLは諦めるか…、…、…、…。


別に良かった…皆んなと違う中学校に行くのも嫌だったし…

この頃から央吾は姉が居ないこの環境を快適だと感じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る