かいかぶり
前席の人が椅子の背もたれにジャケットを掛けてる。
そのジャケットが何かの拍子に床に落ちた、私わそれを拾う為に反射的に席を立った、きっとその人も気づくだろうと思いながら、だが気づかない全く気づかない、ただ勉強なのか仕事なのかよくわからないが何かに集中していた、声を掛けるのもどこか気まずく私わ無言で静かに椅子にジャケットを戻した、それでも相手は気づかない。
もしかしたら自分は存在していないのかもしれないと思うほどに気づかない、もしかしたら気づいているが面倒臭いので気づかないフリをしている薄情な奴なのかもしれないと思ってしまうほど、、。
ここから私の頭の中ではその人のあだ名は薄情になった。(本当に気づいていなかったら申し訳ない)
もし本当に気づいていないのだとしたら、気づかない間に誰かが何かしてくれていて、まるであたかもその物がそのままそこにあったみたいな事が起きていると考えると、自分の知らない世界は本当にあるのだと実感する。
一生懸命なにかに打ち込むその人を見ていると、
だんだんとこの人に変なあだ名を付けていた私自身が何だかちっぽけな奴に感じさらには結局は見返りを求めてるだけの奴みたいになっていて、少し自分自身を恥ずかしく思っていた。
そんな事をずっとその後も考えていると、前の人が席を立った、(帰るらしい、、)
この人は何かに一生懸命打ち込んでる人だと尊敬の眼差しで帰路につくその人の姿を見守った。
軽くジャケットを手で払いビシッと着直す薄情な奴の姿を見守った。
人間 @Nnnnooo
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