光神殿の衝突

神殿の祭壇で、光結晶を背に衝突。

ナナの進化、勇者の介入、そして信仰の逆解析──


◇  ◇


「勇者パーティー……!」


リサが剣の柄に手をかける。


青年の後ろから、白いローブをまとった女性達と、

大剣を担いだ大男も現れる。


だが――


「斥候のミナがいないな、どこに潜んでいるんだ」


俺はわざと大声を出した。


「ミナは追放されたわ。

礼拝堂でジンの偽装を笑ったから」


聖女リオラが沈痛な面持ちで答えた。


「ガチか……」


ブラフかもしれないが、

聖女が嘘をつくとも思えん。


ジンの様子を伺うが、

彼らの視線はまっすぐ俺のスマホに向けられていた。


「おい、あの人たち……なんかナナをガン見してるんだけど?」


「……気のせいじゃないよね!?」


ナナはすでに光結晶に接続を開始している。


「光結晶、ただ触るだけじゃ反応しない。

私の信仰値が……」


俺はスマホを掲げた。


「ナナ、足りない信仰値は俺のを使え」


ナナは画面の中でうなづき、

再度、光のコードを伸ばし始める。


俺は迷っていたが、確認する。


なぁ、お前の言っている秩序の再定義って、

ひょっとして――


リサが低く呟く。


「ミチル、よそ見していい相手と違うよ」


ナナも振り返る。


「ミチル……一旦落ち着くまで待とうか?

接続が途中で途切れると光結晶は暴走してしまうの」


俺は笑った。


「ぎりぎりまでやってみろ。

勇者とは俺が話をする」


◇  ◇


勇者は穏やかな笑みを浮かべたまま、

一歩近づいてきた。


「この神殿は危険だ。

神格位に近い存在は特に……ね」


「は?」


「だから、君の魔獣には立ち入りをやめてもらえると助かる。

進化が進めば、世界にとって脅威になるから」


言葉は柔らかいのに、

目は一切笑っていなかった。


「……悪いな。ナナは俺のパーティーメンバーだ。

退く気はない」


「そうか。それは困ったな」


空気が一気に張り詰める。


次の瞬間、勇者の背後で風が渦を巻き、

ローブの女性が杖を構えた。


一触即発――そう思った、その時。


「ちょっと待って!」


その瞳は怯えているようで、

しかしどこか決意を宿していた。


「私、絶対に進化するんだ。

あなたのことは許す……だから、今度は邪魔しないで!」


一方でジンも迷いなく祭壇を見据えていた。


「光結晶さえ手に入れば……俺は次の段階へ進む」


その声を合図に、剣豪カイルが一歩前へ出る。


「結晶は俺たちのものだ。借金組は下がってろ」


「へっ……言うね」


俺は口角を上げ、スマホを操作した。


光結晶から漏れる残光が、

ジンのひび割れた銀鎧を鈍く照らした。


「終わりにしよう、ミチル。

残滓とは言え神獣を取り込む程の器を持った――

お前をもう侮ったりしない」


勇者の声は、まるで神託のように冷たい。


「出来れば戦闘は避けたかったがな!」


「神獣の口車に乗ればすべてを失うぞ!」


「俺はナナを信じる」


俺はスマホを振り上げ、

画面上のコードを弾くようにタップした。


《照準:信仰回路/モード:逆解析》


白い光線が床を走り、

会話の中で密かに展開されていた

勇者に刻まれた光の魔法陣を逆流させる。


「っ……!? 私の結界が……!」


賢者セラが杖を構えるが、

ナナの声がスマホ越しに響く。


「セラの術式、共鳴干渉開始。二秒稼げば止まる!」


リサが駆け出す。


足音が礼拝堂の石床に跳ね、

彼女のレイピアが閃光を描いて

セラの杖を弾き飛ばした。


「ミチル、いまだ!」


「任せろ!」


シルクの爪が閃く。


ジンの剣と交差し、火花が散った。

続く尻尾の連撃で足元が掬われる。


リオラが叫ぶ。


「ジン様、また前に出過ぎてる!」


だがジンは痛みを堪え首を振る。


「……勇者が二度は負けられない」


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