詩「春を齧る」

Nowaki Arihara(有原野分)

春を齧る

毛玉だらけになった冬の靴下

春は捨てる

書きかけの交換日記の中にある言葉を

選ぶために余白を掃除する


冬に買った入浴剤はまだある?

お土産にもらったもの以外は、と湯気は言う


春分の日に祈るといい、毎年そう言われる

たくさん勉強をして頭を使った分

毎日が楽しくない

紙の中の海

来年の宿題

いのちはすきですか?

なにか食べたいものは?

わからないよ

寝過ぎた日のように

少しだけ鬱

鏡に反射する春


オレンジを齧る

食べたものが芽になる

暇だったから

指の爪を齧っていたあの頃、母が食べていた

 みょうがの匂い、生まれて

好きになっていく予定

今日も本を読む

猫が近寄ってくる

冬だった

並べた膝の上に丸くなるいのち

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩「春を齧る」 Nowaki Arihara(有原野分) @yujiarihara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ