第14話 宣戦布告
『助けて』
その短いメッセージがスマホの画面に表示された瞬間、うちの心臓が激しく鳴った。
部屋の柔らかな照明がベッドのシーツを優しく照らし、さっきまでの余韻が体に残る中、圭くんの顔が鮮やかに浮かぶ。
あの優しい笑み、汗だくの姿——イライラが吹き飛んで、代わりに不安が胸を締めつける。何があったん?
圭くん、危ないんちゃうか?
うちの指が震え、すぐに返信を打つ。
「どうしたん? 今どこや!?」って。
返事が来るまでの数秒が、息苦しくてたまらない。
窓から入る夕風がカーテンを揺らし、部屋の空気が重く感じる。
過去の孤独がよぎる——パパのいない家、再婚の家族の隙間。
圭くんも今、そんな孤独に飲まれてるんやろか?
返事が来た。
「この喫茶店。早く来て」って、住所が添付されてる。
バイト先の近くの人気喫茶店——まさか、北条の奴…!
うちの血が沸騰し、家を飛び出した。
心の中で暴走が始まる。
あのストーカー野郎、圭くんに手ェ出したんか! 許さへん!
夕暮れの街路が橙色に染まり、車のヘッドライトが道を照らす中、うちの足音がアスファルトを叩く。
息が上がり、胸が痛い。
圭くんのピンチに駆けつける——そんな想像が頭を駆け巡り、うちの瞳が熱くなる。
絶対守ったる!
息も絶え絶えでようやく喫茶店に着く。
ガラス窓から見える店内は暖かな照明で満ち、テーブルに座る人々のシルエットが揺れる。
ドアを勢いよく開け、中に飛び込む。
コーヒーの香りが鼻を突き、BGMの軽やかなジャズが流れる中、うちの目は圭くんを探す。
そこにいたのは……圭くんと、彼を囲む4人の女子。
みんな笑顔でテーブルを囲み、圭くんの頰が赤く染まってる。
ピンチ……ちゃうやん!
うちの膝がガクッと力が抜け、ドアの近くでへたり込む。
「あ、使ちゃーん! 噂をすればー! もしかして、彼氏くんのピンチに駆けつけたのー?」
同僚のあかりちゃんが手を振って笑う。
茶髪のポニーテールが揺れ、バイトの制服じゃなく私服のTシャツがカジュアルに映る。
他の3人もくすくす笑い、テーブルに置かれたケーキのフォークを止める。
「ウケる。ね、見て。彼氏くん顔真っ赤。可愛いよねー」
みゆきちゃんが圭くんの肩を軽く叩き、圭くんがさらに赤くなる。
彼女のショートヘアが耳にかかり、悪戯っぽい目がうちを捉える。
「使ちゃんはこういうタイプの男の子が好きなんだね! なんか意外かも!!」
さくらちゃんが目を細めて言う。
ロングヘアが肩に落ち、柔らかな笑みが部屋を温かくする。
「…可哀想」
最後のゆきちゃんが、クールに呟く。
黒髪のボブが顔を縁取り、いつも通りの無表情が少し緩む。
…助けって……こういうことかいな……。
うちの腰が完全に抜け、床に座り込む。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/822139836514315208
息が荒く、汗が頰を伝う。
圭くんの視線が申し訳なさそうにうちに向き、テーブルに置かれたコーヒーカップの湯気がゆっくり上がる。
店内のジャズが軽やかに続き、隣の客たちの話し声が遠く聞こえる中、うちの胸に安堵と脱力が広がる。
◇
同僚たちに引き上げられ、テーブルに座らされる。
圭くんの隣に押し込まれ、うちの肩が彼の腕に触れる。
温かな体温が伝わり、心臓の鼓動が少し速くなる。
みんなの視線が集中し、うちは少し怒り気味に圭くんに問いかける。
カフェの照明が柔らかくテーブルを照らし、ケーキの甘い香りが漂う。
「…事情を聞こうじゃないか。助けてって、何やったん?」
圭くんの頰がさらに赤くなり、コーヒーカップを握りしめて目を逸らす。
声が小さく、照れくさそう。
「いや…たまたまこの近くを歩いていたら、この人たちに捕まって…」
あかりちゃんが手を叩いて笑う。
茶髪が弾け、悪戯っぽい目が輝く。
「そーそー。彼氏くんがナンパしてきたわけじゃないからー。むしろ、うちらが逆ナンしたみたいなもんだしー? でも、あの誰にも靡かないと噂の使ちゃんがあんなメロメロな姿を見せてたわけだしー? 気になるじゃん?」
みんなの視線がうちに集中し、うちの頰が熱くなる。メロメロ……そんな大げさな!
うちの白髪が耳にかかり、淡い青みがかった瞳が圭くんに絡む。
「め、メロメロとか言うなし…//」
みゆきちゃんがくすくす笑い、フォークでケーキを突く。
さくらちゃんが目を細めて続ける。
「だって、使ちゃんの『いちごスマイル』が彼氏くんに向かってるの見たら、気になっちゃうよー。ね、ゆきちゃん?」
ゆきちゃんが無表情で頷き、「…使ちゃん、幸せそう」って呟く。
うちの胸が温かくなり、圭くんの視線が優しく絡む。
ひとまず安心——ピンチじゃなくてよかった。みんなの笑い声が店内に広がり、うちのイライラが溶ける。
圭くんの存在が、うちの心を落ち着かせる。
それから、いじられまくる時間。
みんなが圭くんに質問攻めし、うちの過去のエピソードを掘り返す。
あかりちゃんが「使ちゃん、バイト中彼氏くんの写真見てニヤニヤしてたよねー」って暴露し、うちが慌てて否定。
圭くんの頰が赤くなり、うちの肩に軽く寄りかかる。
カフェのBGMが優しく流れ、ケーキの甘さが口に残る中、笑いが止まらない。
圭くんの温もりが、うちの孤独を少し埋めるようだ。
◇
みんなでひとしきり楽しんで、喫茶店を出ようとしたところで、人にぶつかる。
夕陽の残光が店先を染め、街の喧騒がドアから流れ込む中、うちは慌てて謝る。
「あ、すみません」
そこにいたのは……北条だった。
茶髪が夕風に揺れ、目にクマが浮かぶ。
停学中の彼が、ここにいることに胸がざわつく。
全身に身の毛がよだつ感覚が走り、うちの瞳が鋭くなる。
「…謝ることなんかないよ。使」
北条の声が低く響き、みんなの視線が彼に集まる。
あかりちゃんが「えー! 誰このイケメン!」と騒ぎ出しそうになるのを、うちは大声で牽制する。
「そいつに近づいたらあかん!」
みんなの動きが止まり、店先の空気が張りつめる。
北条が少し呆れた顔をし、圭くんに目を向ける。
夕陽の光が彼のピアスをきらめかせ、影が地面に長く伸びる。
「…今日はお前に宣戦布告をしにきた」
「…」
圭くんの体が固まる。北条の瞳が暗く輝き、声が冷たく続ける。
「俺はお前を許さない。死ぬまでな」
そう言い放つと、北条は踵を返して去っていく。
夕風が強く吹き、落ち葉が足元で舞う。みんなの視線が圭くんとうちに集まり、うちの胸に不安が広がる。
北条の影が街の雑踏に溶け、夕陽が沈む中、うちの心に新たな棘が生まれる。
圭くんの肩を軽く叩き、みんなを安心させるように笑うけど、心の奥で暴走が始まる——絶対、圭くんを守ったる。
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