第32話 クラムの原因

「おーっす!れいちゃーん」

「おはよー龍牙」

元気よく声をかけてきたのは龍牙だった。

「朝から元気だなー」

「おうよ!あ!昨日、俺のことほっていっただろ!!」

「………ナンノコトカナ?」

「何と戦ったか知らないけれど、戻ったら校門がぐっちゃぐちゃになってたし、花壇とか昇降口とかボロボロだったし、元に戻すのむずかったんだからな!!」

「……ごめん」

「しかも!なんか悠真が倒れてたし!マジ焦ったからな!後で聞いたら、れいちゃんが気を失わせたって言うし!」

「その通りだね」

龍牙の声を聞いたのか、悠真が来た。

「悠真……マジごめん!」

「……俺、零ほど強くないけれど、一応戦えるんだぞ!……もう少し頼ってくれよ」

「……ごめん」

ゴッ……!!

「いってー!!」

悠真が俺の頭を殴ってきた。

「これでチャラだ」

顔を上げると、笑っている悠真がいた。俺もつられて笑ってしまった。

それから、3人で談笑していた。


「あ!れいちゃん!」

「何だー?」

「あれ」

「ん?………は?」

龍牙が指を指した方を見ると、教室の扉に見覚えのある人がいた。その人と不意に目が合ってしまった。

「やべっ……」

その人がこっちにくる気配がした。

「如月 零さん、至急、生徒会にお越しください。」

「うげぇ……」

その人物は、生徒会の人だった。確か、書記担当だったはず……前に金髪ロールお化け、んんん……ヴァイオラ先輩と言い合いした時にいた取り巻きみたいな人だ。顔を見た瞬間嫌な予感がしていたけれど……当たっていたみたいだ。

「何やらかしたんだよ、れいちゃん」

「何したの?零」

「身に覚え……あったかも」

「「はぁー?」」

俺はトボトボと歩いて、書記の人の後ろをついていった。


コンコンコン……

「失礼します」

扉が開いて、書記の人が中に入って行く。俺も部屋に入った。

中では、生徒会の人が仕事をしていて、忙しそうだった。その部屋の奥に生徒会長の部屋があるらしい。

書記の人は迷わずそこに向かっていった。

(生徒会長……まさかな)

俺は頭の中で1人の人物を思い出していた。

生徒会長室に入ると……


「来ましたわね、如月 零」

「………はぁ」

深いため息を吐いた。そこにいたのは、ヴァイオラ先輩だった。

「何ですの?そのため息は」

「いえー、会いたくないやつに会ったなーって思っただけですよ?」

「なっ……?!あ、会いたいですって?!そ、そんな簡単にお会いになったりしませんわ!!……で、でも、あなたがどうしても!!と言うのでしたら……し、仕方ありませんわね……」

「いや、そんなこと言ってないし!!勝手に話進めんな!!」

「なっ……!!い、今会いたいって言ったでしょ?!」

「言ってない一言も」

「そんな馬鹿な!!」

ガクッとなんか1人ショックを受けているヴァイオラ先輩。

(はぁ……めんどくせぇー早く帰りたーい)

「おい!貴様!!」

「あ?」

声がしたため、そっちを見ると、制服を着た男子生徒が俺を睨んでいた。

「ヴァイオラ先輩に何というか態度だ!無礼者が!!この方は神なのだぞ!!それに、めんどくさいと思っているだろ!!」

(なんか知らないけれど、心読まれてる?!)

「はぁ?だから何だよ、俺には関係ないんだが?てかお前誰だよ」

「き、貴様!!先輩に対しての言葉遣いが出来ていないぞ!!ましてや、会長に失礼な言葉を述べるとは……貴様!万死に値する!!」

「なんか、めんどくさいやついるんだけれど……」

はぁ…とため息を吐いた。

「貴様ー!!」

今にも殴りかかってきそうな雰囲気があった。

「おやめなさい、バルカス副会長」

「はっ!!」

ビシッと立って、俺を睨んできた。てか、こいつ副会長なのかよ…

「で、何の用ですか?」

「あなたに聞きたいことがありまして」

「聞きたいこと?」

「学校に不審者が現れたの…その不審者を先生に渡した人物がいると聞いてね……誰か問いただしたら、あなたの名前を聞きましたの……」

「それで?」

「何があったのか、その不審者は何なのか教えて下さる?」

「何故?」

「教えて下さるのね……ん?何故?」

「ああ、何故そんなことをあんたに話さないといけないんだ?」

「それは、生徒会長ですもの、この学校で起こったことを把握するのは当たり前でしょ?」

「……先生に聞けばいいだろ」

「……下さいませんでしたの」

「は?」

上手く聞こえなかったため、もう一度聞き返すと…

「教えて下さいませんでしたの!!」

大きな声で怒ったようにそう言ってきた。

「先生が教えなかったのなら、あんたには関係ないって判断されたからだろ?なら、俺が話す必要もないよね?帰っていい?」

早口で急かすように言った。

「なっ……わたくしは生徒会長なのですわよ?その生徒会長に話さないなんて……ありえないわ!!」

「そのありえないことが起こってるだろうが……生徒会長だからって何でもかんでも教えてもらえるわけないだろ」

「そんなことは…ありませんわ!!」

お互いに睨み合った。俺が言ったことが理解できないのか、認めたくないのか知らないが、こいつはだいぶ自分勝手だった。

「とにかく、先生が話してないなら、俺からも話すことはないよ。じゃーな」

部屋を出て行こうとすると……

シュバ!!カッ!!

「うおお!!」

扉に刃物が刺さった。後ろを振り返ると、副会長さんが小刀を俺に向かって投げてきていた。

「あぶね!!」

「貴様!!ヴァイオラ先輩に話せ!貴様が見たもの、知ったこと!全て!!」

「はぁ?何であんたの命令で話さないといけないんだよ…」

「当たり前だ!この方は神なのだ、全てを知る権利がある!!」

「ほう!神様だって言うなら、全て見てるはずだよね?その神様が知らないって言ってんだ、なら、こいつは神様でも何でもない、だから、そんな権利使えないってわけだ!ってか神様って何だよ、こいつ生徒会長ってだけじゃねーか」

「ちがーーーーう!!この方は神様だ!!この学校を守る女神様だ!!貴様はこの方がどれほど偉大な方か分かってないな?!」

「知らねーよ!!てめーの価値観を押し付けてくんな!!」

俺と副会長が睨み合った。この金髪ロールお化けが神様とか、ヤバすぎだろう。頭がおかしいとしか言いようがなかった。

すると……

「うるさいんだけれど……」

会長室に入ってきたのは、可憐さんだった。

「可憐……?!」

「あら、会長、何しているのかしら?てか、零くんが何でここに?」

「ちょっと聞きたいことがありましたの」

「聞きたいことねー、不審者のことかしら?」

「………ええ」

「それなら、先生からある程度報告を受けていたのでは?」

「そうですけれど……どんな人物だったのか、その人は何が目的で来たのか、それを教えてくださらなかったから」

「だから、知ってる可能性のある零くんに聞いたってわけね」

何だろう、ヴァイオラ先輩が可憐さんの前でだと大人しい。てか、副会長が一言も話さないんだけれど……

「あなた達が知ることではないわね」

「「なっ……!!」」

ヴァイオラ先輩と副会長さんが驚いていた。

「わたくし達が知る必要がないって……何故ですの?!」

「そうだ!!ヴァイオラ先輩は知るべきだろう!!」

「あんた達がそれを知ったところでどうすることもできないし、何それ?ってなるわよ」

「そ、そんなの分からないじゃない!わたくしでも分かるかもしれないわ!」

「『セレスティアル・アルカナ』」

「へ?」

「!!!!」

ヴァイオラ先輩は何それ?って顔をしていた。

「何でもないわ」

それだけ言うと、可憐さんが俺のところに来て、

「行くよ?零くん」

「あ、はい」

立ち上がって部屋を出ていった。


「あの、可憐さん?どうしてここに?」

「龍牙から連絡があって、零くんが生徒会の人に連れて行かれたって聞いたから」

「あー、なるほど」

納得していた。龍牙は弟だ、何かあれば可憐さんに連絡入れるか…

「でも、よく入れましたね」

「私、生徒会の1人だから」

「あーなるほど」

「そんなことよりも…気づいた?零くん」

何を?って聞き返す必要はなかった。可憐さんが真剣な目で俺を見てきた。だから…

「あの、副会長さんのことですか?」

俺も真剣な目でそう聞いた。

「ええ…気づいていたのね、なら、良かったわ」

「安心できることじゃないですけれどね」

「いえ、あなたがまだ、衰えていなかったってことに安心してるのよ」

「……流石に衰えてませんよ、あの時以降も訓練を続けてますから」

「そう……」

「あの副会長、『セレスティアル・アルカナ』のこと知ってたみたい。」

「そうね、反応してたものね」

ヴァイオラ先輩は何のことか分からないみたいな顔をしていたが、あの副会長は驚いた顔を一瞬していた。俺も可憐さんもその一瞬を見逃さなかった。

「あの副会長、何か知ってるのかも?もしくは、あいつの……」

「仲間かもね」

「どうするんだ?」

「今は泳がせとくわ、何かあっても零くん達がいるからね」

にっこり笑いながらそう言ってきた。

「いや、俺らを頼らないでよ……まあ、頑張るけれど……」

それから、雑談をしながらそれぞれの教室に戻った。


「れいちゃーん、おっかえりー」

バシンッ!!

「いっ……たー!!!」

思いっきり背中を叩かれた俺。マジ痛くて叫んでしまった。

「あはははは!!!」

その反応が面白かったのか、龍牙は爆笑していた。

「龍牙……殺す!」

「ひぎゃぁぁぁぁぁああああ!!!」

俺は龍牙の首に腕を巻きつけ、締め上げてやった。

「ぐぇぇぇぇえええ…死ぬーーー」

バシバシと俺の腕を叩いて抵抗してきた。

だから、さらに締め上げてやった。

「死ぬ死ぬ!!タンマタンマ!!」

俺は龍牙を離してやった。ゲホゲホと咳き込みながら龍牙が俺を睨んできた。

「死ぬじゃねーかよ!れいちゃん!」

「お前が叩いたからだろ?お返しだ」

「そのお返しがきついわ!!」

「何ぎゃあぎゃあ言ってんの?うるさいんだけれど」

そこへ日向が来た。

「日向っちーれいちゃんがいーじーめーるー」

龍牙が日向に助けを求めにいった。すると…

「……毎回言ってるよね?」

ビクッ……

龍牙がビクッとして止まった。

「抱きついてこようとすんなー!!!」

ボコッ……!!

「ぐへぇぇぇ!!」

日向が龍牙の顔面を殴って飛んでいった。


「日向は何しに来たんだ?」

俺と龍牙は日向にこっぴどく怒られたため、正座していた。

ちなみに龍牙は日向に殴られて、顔が変形していた。

「ちょっと言っときたいことあって」

「言っときたいこと?」

「うん、最近さ、クラムが活発化していて、その原因を私なりに調べたんだよ」

「「……マジか」」

俺たちは感心していた。日向がいつの間にかそんなことをしていたから。

「まあ、叔父様に頼まれたからなんだけれど……」

「あの叔父、また、日向に頼んだのかよー他に頼める人いないのか?」

「まあまあ、日向っちは優秀だから」

「はいはい、お世辞はいいからねーさて、それで、調べた結果なんだけれど……」

「「うん」」

「クラムには3種類いることが分かったの」

「「3種類?!」」

「そ、1つ目は自然に発生するやつ、大気汚染とか環境の変化とかで生まれるやつね、2つ目が私とれい兄が見た人がクラムに変わるやつ、人工的に生まれている感じなんだわー」

「まあ、今までのやつだな」

「うん、でね、3つ目が問題なんだー」

「問題って?」

「海とか学校とか人が多く集まる場所に現れるクラム、調べてみたら、人の負の感情から生まれてるみたい」

「「!!!マジ?」」

「うん、マジ」

「だから、海とか学校とかに現れてたのか、頻繁に」

「うん、それで、そのクラム達が人為的に生まれるように仕向けられてる気がしてさ」

「なるほどな……」

「『セレスティアル・アルカナ』が関わってんのかな?」

「さぁ?分からんが、もっと詳しく調べる必要があるみたいだな。」

「だね」

「なら、なるべく人が多いところを気にしする必要があるな」

「うん!」

「叔父にも話すのか?」

「その予定」

「なら、早めに言っといたほうがいいかもねー」

「だな」

俺たちは叔父に報告しにいった。


叔父に報告した帰り……

「人工的に生まれるクラムをどうにかしないとねー」

「だな」

「でもよ、『セレスティアル・アルカナ』の居場所分かんなくね?」

「そこなんだよなーまた、探さないといけないのかね?」

「やーだーなーーもうしんどいんだけれどー」

「まあ、クラム殲滅部隊が動き出すだろ、見つけたらよ」

「もしくは、あの副会長を問い詰めるか……」

「ん?副会長?」

「ああ、副会長が知ってるっぽいんだ」

「なるほどね」

「ありだね、尋問しますかー」

なんて言いながら俺たちは帰宅した。


※あとがき

おーっす!!みんなーひっさー!!

龍牙でーす

いやー、れいちゃんの首締め死ぬわ。あれ力強すぎて……


次回!

第5章 学校大会!!

俺、学園大運動会!!出場!

お楽しみにー

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