第6話 俺、買い物する

日向に連れられて、俺は学校から近いところにあるショッピングモールにやってきた。

平日なのに、結構人がいた。

「全くあり得ないんだけれど…何で約束したこと忘れるかなー?」

「いや、だって、友達と仲良くするのは大事なことだろ?それに…約束って言ってもそっちが一方的に取り付けたものだし…」

俺は反論しようと頑張ってみたが、最後の方は小さい声で言ってしまった。

「は?なんか言った?ん?」

「いえ!何でもございません!有り難く荷物持ちさせていただきます!」

これ以上反論したら、殺される!と判断した俺は素直に従った。


ショッピングモールでスーパーにより今日の夜ご飯や明日以降の買い出しをしておくそうだ。母さんがよくやってくれてるが、日向も母さんの手伝いとして、こうやって買い出しに行く。

ついでに、俺は何も手伝っていない、いや、手伝ってはいけないらしい…前に手伝おうとして、掃除機や洗濯をしようとしたのだが、何故か両方とも機械を壊してしまった。母さんが、

「あんたは、電化製品を壊してしまう体質でもあるんかい?もう、掃除機も洗濯もしなくていいから、余計に仕事が増える!」

って言ってきた。それ以来、料理と、買い出し以外は手伝えなくなった。

スーパーでは、お肉や果物、野菜など、たくさんの食材がずらりと並んでいた。

「今日は特売だから、人が多いのかも…勝たなきゃ!!」

日向がなんか、やる気に満ちていた。

(何でみんな必死になってるんだ?)


「ただいまから、特売セールを始めますー!お買い得商品がいっぱいだよー!」

特売が始まったようだ。店員さんの呼びかけと同時に多くの主婦の方達が突撃して行った。

「れい兄!始まったよ!行くよ?」

「え…」

俺は日向に引っ張られながら人混みに突っ込んでいった。


日向に引っ張られながら人混みを掻き分けて、次々と商品をかごの中に入れていく。

人が多すぎて揉みくちゃになっていた。

(こんなのどうやって大量に商品を手にするんだよー)

俺は必死に商品を取っている日向を見ながら、自分も商品を手に取っていく。

だが、主婦の方の力に押し負けて、商品を取れそうになかった。

「日向どうするんだ?この状況…」

「ふぅー、やっぱり凄いね!でも、大丈夫!れい兄あれがあるでしょ?」

そう言われて、俺は考えた。

(俺にできるあれ?ふむ……)

「え?分かんない?あれだよ、指だけ動かして、物を操る…あ・れ!」

(物を操るあれ……ん?まさか…)

「クイックのことか?」

「そう!それだよ!それを使えばー突っ込まなくていいのです!」

クイックとは、指に意識を集中させて、自分が欲しい物を能力で引き寄せる技だ。

(確かに、この力使えば、簡単に物が取れるが……ってそう思えば…)

「じゃあ、何でさっき突っ込ませたん?俺を主婦の群衆に」

「え?いつも手伝わないれい兄が使える時って、その身長を使って、多くの食材や商品を手にすることでしょ?」

「いや、突っ込む必要なかったんじゃん!俺、無駄に労力使ったんだが?」

「ええー大丈夫っしょ?じゃ、れい兄、ちゃっちゃとやっちゃってー」

「はぁー、人使いが荒い妹ですわー、

[クイック]」

俺は手を前に突き出し、食材や商品の方へ指を向けた。力を込め、そして、グッと握った。

すると、食材が糸に引かれたみたいにこっちへ飛んできた。大体15種類もの食材を10個ずつ引っ張ってきた。

「これでいいか?」

「もちろん!流石!実力者は違うねー、にしし!これで、ご飯が作れるー」

ウッキウキで買い物かごに詰め込んでいく日向。俺はこいつが将来凄くズル賢い人間になりそうで、とっても不安になった。


凄くズルをして手にした食材を特別な買い物袋:籠屋亭(かごやてい)に入れて、俺たちは別の店へ移動していた。因みに、籠屋亭はどんな物でも収納でき、その量は無限大だと言われている。

クラムを倒した者がたまに手に入れられる特別な材料で作られている。

「次はどこの店に行くんだー?」

「えっとねー服とか見たいんだよねー服の種類とか枚数とか増やしたくてさー」

女子は何かと服にこだわるねー俺なんか、Tシャツ5枚とジーパン5枚ぐらいあったら、十分なのになーってこれ、俺が服に興味なさすぎるだけか?他の男子もそうなんじゃねーのー?違うのー?わっかんねー

そんなことを考えていた時だった……ピリッ

俺と日向の動きが止まった。

「日向…感じたか?」

俺は一応日向に聞いてみた。

「うん、しっかりとね、奴の気配がするよ、このショッピングモールに侵入したみたいだね」


バリバリバリバリバリ…ゴンッ!メリメリメリメリッ…バキッ、ガラガラガラガラガラガラ…

凄い音がショッピングモールに鳴り響いた。

「何だ?!」「ギャーーーーー!!」「怖いよーお母さん…」「大丈夫…大丈夫よ…」

人々が驚き、戸惑い、慌てる姿が見えた。突然の大きな音にみんなが驚き、逃げ惑う人でいっぱいだった。

そしてショッピングモールの壁に穴が空きそこからとても大きなバケモノが現れた。

俺と日向は急いで大きな音がした場所まで走って行った。

現場に着いた俺たちはそのバケモノを見上げた。

体の色が赤く手足が4、5本生えており、体長が4mほどで凄く大きい。ウジャウジャと手足を動かして、人間の動きを見ていた。そして……

キエエエエエエエエエエ!!

凄い雄叫びと共に、その大きな手を振りかぶって、振り下ろそうとしていた、それも逃げ惑う人々の方へ。

(マズイ!)

俺は飛び出した。

「こい!陽炎(かげろう)!!」

俺は、自分の能力の一部を解放した。

ガキィン!!ガリガリガリガリ……バケモノの手が俺が持っている陽炎と擦れ合った。

俺の陽炎は、赤色と黒色が入った日本刀でその長さは普通の日本刀より短い。短剣といってもいいぐらいだ。だが、その刀身に宿る赤き炎はどんなものも焼き尽くす煉獄の炎だ。

(重たいなーこいつ)

俺はダルすぎるーって思いながら剣をしっかり握り直した。

「ギェエ?」

バケモノは自分の手を止められてしまったことに疑問を持っているようだ。

このバケモノこそ、この世界の脅威と言われている、[クラム]である。

人の何倍もの大きさで、現れることがあれば、人と同じぐらいの大きさの時もあり、その姿も様々で、現れるタイミングもバラバラだ。

そして、俺たちカルムはクラムを倒すため、力を付けなくてはならない。

なにせ、カルムになっていない人もいるからだ。その人達を死なせてはならない、それがカルムの絶対条件だ。


「とりあえず、こんなとこで俺たちが暴れたら、すぐにバレるからな、なんとかしねぇーと…」

今はたった1本の剣で凌いでいるが、こいつの強さがまだわからない以上、戦い続けるとこっちが不利になる。

今俺たちは力を解放することが出来ない、せいぜいこの1本の剣のみ出現させることができるぐらいだ。

(くっそー、能力を解放できない俺では時間稼ぎが限界か?いや、この気配は…!あれが来る!)

「れい兄!下がって!」

日向の声が聞こえたと同時に俺はクラムから離れた。その瞬間、

ドドドドッ、ドゴッ!!ガラガラ、バリバリ、ドガーン

クラムが赤い光を四方八方に放ったせいで、ショッピングモールが壊滅的な状態になった。

俺は間一髪、避けれたため無傷だったが、ショッピングモールを支えている柱が何本も見えていて、壁はボロボロに壊れていた。


「おいで、宵闇!」

日向の声に反応して、紫色の弓矢が現れた。名前は宵闇(よいやみ)、綺麗な紫色で、夜になると淡い紫色に光る。

その弓矢を構えて矢をかけ、弓を引っ張っていた。矢が紫色の炎を宿し、燃え上がっていた。

「踊れ!宵闇!」


「幻紫飛焔(げんしひえん)!!!」


宵闇の矢が放たれた。そして、その矢がクラムに直撃した。

「ぐおおおおおおおお!!」

もがき苦しみ出したクラム、宵闇の炎がクラムを包み込んでいた。

「れい兄!今だよ!」

「おう!サンキュー!日向!」

俺は駆け出して、陽炎を握りしめた。

「とっととくたばれやーーーーーー!!!!」

俺は空へとジャンプすると、クラムの頭上まで飛んだ。そして陽炎を振り上げて重力に従って振り下ろした。

「うなれ!!陽炎!!」


  「炎龍斬破(えんりゅうざんぱ)!!!!」


「ぐぎゃああああああああああ!!」

俺の陽炎がクラムを真っ二つに切った。そして、陽炎の炎と宵闇の炎が合わさって、クラムの体を跡形もなく燃やし尽くした。


「ふぅー、討伐完了っと」

何とか倒すことが出来たため、俺は安心していた。

「れい兄ーおつかー!何とかなったねー」

「そうだな…ってこのままじゃあ、クラム殲滅部隊と警察が来ちまう。」

「あああ!!それは、マズイよ!!バレたら、学園とかにも連絡行くかも?!」

「それは、マジでシャレになんねー!!俺は平穏で平和で楽に目立たず学園生活を過ごすという目標があるんだーーーー!!」

「いや、心配するとこ、そこーーーーー?!」

俺たちは、急いでその場から離れた。


※あとがき


おーっす!如月 零です!

次回予告するぞーーーー!


次回 学園で実演練習?!なんか、すごい訓練するらしいってどんな訓練だよ!

お楽しみにー!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る