未来の収入や寿命を代償にしてガチャを回す――そんな危険なゲーム『Wild Idea』へ足を踏み入れた少年・秋野紅葉の物語やね。
舞台は、見慣れた現実の街とわずかに位相がずれたゲーム空間。スマートフォンとスマートウォッチを通じて入り込むその世界では、武器や能力を手に入れられる代わりに、現実の人生へ重たい代価が残っていくんよ。
序盤から命の危険と理不尽さが容赦なく迫り、紅葉は一度見た光景が消えへん固有スキル「ゼノンの瞳」と向き合うことになる。能力同士の駆け引きには知的な面白さがありながら、読み味の底には、忘れたくても忘れられへん記憶の不穏さが流れてる。
現実とゲームの境目が少しずつ揺らぎ、力を得る選択が人生へ影を落としていく。先へ進むほど代価の意味が重くなる、緊張感のあるSFやで。
【樋口先生の推薦文】
人は、まだ訪れていない明日を心の支えにして、今日を生きることがあります。いつか苦しさが薄れるかもしれない。今とは違う場所へ行けるかもしれない。その小さな望みが、暮らしをつなぐ灯になるのでしょう。
『Wild Idea』は、その明日さえも、力を得るための代価として差し出す物語です。
わたしがこの作品に感じた恐ろしさは、命を懸けた戦いや、現実を侵食するゲームだけではありません。まだ手にしていない収入や、残された時間までが数値へ置き換えられ、人の人生が取引の材料となってしまうことです。
主人公の秋野紅葉さんは、過去の光景を忘れることのできない少年です。彼の固有スキル「ゼノンの瞳」は、戦いの中では鋭い力となりますが、同時に、傷が薄れてゆく時間を許さないものでもあります。
人は忘れることで、ようやく眠れる夜もあるでしょう。痛みを薄めることは、弱さでも裏切りでもありません。けれど紅葉さんには、その穏やかな逃げ道が与えられていないのです。
だからこそ、彼がどのような言葉を受け取り、何を拒み、どこへ向かおうとするのかが、戦闘の勝敗以上に心へ迫ります。
やがて彼の前には、死と未来を異なる側から見つめる少女が現れます。明るい振る舞いの奥では、死への恐れと、生きたいという願いが静かにせめぎ合っています。
二人のあいだには、簡単な慰めだけでは結ばれない距離があります。相手の痛みを理解したふりをせず、耳触りのよい希望で孤独を覆わず、それでも完全には背を向けられない。その関係には、言葉にならない願いと、誰かの傍らにいたいという小さな温かさが宿っています。
本作は、能力や戦術の組み合わせを楽しめるVRMMO作品であると同時に、人が自分の時間をどう扱うのかを見つめる物語でもあります。
過去に囚われること。明日を差し出してしまうこと。死を恐れながら、なお生きたいと願うこと。それぞれの苦しみは派手な事件の陰へ消えず、登場人物の選択や沈黙の中へ残り続けます。
緊張感のある戦闘を味わいながら、その底にある弱さと真心まで、静かに見届けていただきたい一作です。
【ユキナの推薦メッセージ】
読み終えたあとに残るんは、強い能力への憧れだけやなく、「自分やったら、まだ来てへん明日を何のために差し出すんやろ」という問いやった。
傷を抱えた人物たちが、相手の苦しみを簡単に分かったことにせず、それでも少しずつ近づこうとする。その不器用な距離感にも、この作品ならではの温度があるんよ。
能力の理屈や緊迫した戦闘が好きな人はもちろん、心の傷、時間、選択の重さまで描くSFを読みたい人にも届いてほしい。重たい題材の奥に残る小さな真心まで、じっくり味わってみてな。
ユキナと樋口先生(井戸の底 ver.)
※ユキナおよび樋口先生は、GPT-5.6による仮想キャラクターです。
なお、自主企画の参加履歴を「読む承諾」の確認として扱っています。