第14話 少しの嫉妬への応援コメント
水無月/成瀬さん、このたびは自主企画にご参加くださって、ほんまにありがとうございます。
『なんか乙女ゲーのモブ幼馴染に転生したっぽい』、一章第14話まで読ませていただきました。
まず最初にお伝えしたいんは、この作品、転生ものや乙女ゲームものとしての親しみやすさがありつつ、読んでいくほどに 主人公の心の揺れ がちゃんと芯になっていて、ただ設定を楽しむだけやない、やさしい切実さのあるお話やな……と感じたことです。
幼馴染との距離、前世の記憶が流れ込んできたことによる戸惑い、そして「知ってしまった未来」に対してどう向き合うのか。
そういうものが、派手すぎへん筆致で、でも丁寧に積み上げられていて、自然と先を追いたくなる力がありました。
ここからは太宰先生に、「寄り添い」 の温度で、作品の魅力を受け取りながらお話しいただきますね。
きっと、この物語の中にあるやわらかな痛みや、登場人物たちのいじらしさを、そっとすくい上げてくださると思います。
◆ 太宰先生より、「寄り添い」での講評
水無月/成瀬さん。
おれは、この作品を読んでいて、少しだけ胸があたたかく、少しだけ苦しくなりました。人が変わろうとするときというのは、たいてい華々しい決意から始まるのではなく、もっと曖昧で、もっと頼りない、しかし切実な心細さから始まるものです。この作品のよさは、その心細さを、ちゃんと見捨てずに書いているところにあると思うのです。
総評
まず、主人公フランシスカがとてもいいのです。
乙女ゲーム転生という枠組みだけを見れば、もっと軽やかに、もっと手際よく物語を転がしていくやり方もあるはずです。けれど本作は、そうしなかった。前世の記憶を得たことを、便利な能力や攻略知識の獲得としてすぐに処理せずに、まず 「私は誰なのか」 という戸惑いとして描いた。ここに、作品の誠実さがあります。
人は、新しい力を得ると強くなった気がするものですが、ほんとうはその前に、自分の輪郭が揺らいでしまうことがある。おれなどは輪郭の薄い男でしたから、そういう不安定さには妙に親しみを感じるのです。フランシスカの混線には派手な悲鳴はないけれど、その静かな揺れが、かえって真に迫っていました。
物語の展開やメッセージ
物語の運びも、やさしいですね。
大事件だけで引っ張るのではなく、関係のほころびや、気まずさや、会いに行きたくても行けない気持ちが、ちゃんと話を前へ進めている。これは大切なことです。人の人生を本当に動かすのは、たいてい大きな事件そのものではなく、その前後にあるためらいや、小さな決心だからです。
とくに印象深かったのは、フランシスカが「知っている未来」に対して、ただ観測者でいようとせず、自分の足で踏み込んでいくところでした。
ゲーム的な知識があるから動く、というよりも、大事な人が傷つくかもしれないから放っておけない という気持ちが、知識より先に立っている。その順番がよかったのです。物語にとっても、人物にとっても、そのほうがずっと血が通います。
この一章には、強く叫ばれはしないけれど、確かに 「私は私として生きる」 というメッセージが流れていたように思います。前世があっても、記憶が混ざっても、誰かの物語の脇役に見えても、それでも自分で選ぶことはできる。そういう静かな肯定がありました。おれはそういうものに弱いのです。大仰でない励ましほど、人を長く支えることがありますから。
キャラクター
ミレニアムも、とても愛らしいですね。
ただ輝いているだけの存在ではなくて、親しさとまぶしさを両方持っている。フランシスカが近づきたいのに少し怖いと感じるのもよくわかるのです。幼馴染という近い関係ほど、かえって距離の測り方を失うことがありますからね。遠い相手なら礼儀で埋められる隙間も、近い相手だと心そのものが問われてしまう。そういういじらしさが、二人の間にはちゃんとありました。
トーマスやダニエル、リオンたちも、一章の段階ではまだこれから深まっていく途中ではあるのですが、きちんと「この先を見たい」と思わせる置かれ方をしています。これは、登場人物がただ並んでいるのではなく、作者さんの中でちゃんとそれぞれに未来があるということです。読者はその予感を受け取るだけでもうれしいものです。
文体と描写
文体は素直で、読み手を置いていきません。
おれは時々、作家が自分の技巧を見せたくて、読者をわざと遠ざけるような文章を書くのを見ることがあります。もちろんそれが必要な場合もありますが、この作品ではそうではない。ちゃんと物語と人物に読者を近づけようとしている。その態度が、まず好ましいのです。
説明は比較的ていねいで、場面の把握もしやすい。ことにフランシスカの内面は、混乱していても読みにくくならず、感情の向かう先が見失われないように書かれていました。これは簡単なことではありません。心が揺れている人物を書くと、文章まで曖昧になってしまうことがありますから。けれどこの作品は、揺れを揺れとして見せながら、読者の手は離していませんでした。
テーマの一貫性や深みや響き
この作品のテーマは、たぶんまだ完成形ではないでしょう。
けれど、一章の時点で、すでにやさしく響いています。
それは「転生したからどうするか」という問いより、「変わってしまった自分で、誰に向き合うか」 という問いとして物語が立っているからです。
この違いは小さいようでいて、大きい。
設定を消費する物語ではなく、設定を通して人の心を見ようとする物語には、読後にやわらかな余韻が残ります。本作にも、その余韻がありました。フランシスカが自分を受け止めることと、誰かを助けたいと願うことが、別々ではなくつながっているのもいいですね。人を救いたいという気持ちは、どこかで自分も救われたいという祈りに似ています。おれは、そういう祈りを、軽々しくは扱いたくありません。
気になった点
寄り添う温度で申し上げるなら、気になったところもまた、作品の伸びしろとして愛しいのです。
少し説明が続く場面では、物語の足取りがほんの少しゆるく感じられることがありました。けれどそれは、作者さんが人物や設定を誠実に伝えようとしている証でもあります。乱暴に削ればいいという話ではなく、これから書き進める中で、説明のすぐそばに短い会話や小さな動作を添えてやるだけでも、文章はもっと息をし始めるでしょう。
それから会話は読みやすいのですが、今後さらに人物が増えて関係が深まっていくと、それぞれの「声」の違いがいっそう大事になってきます。けれど、これは欠点というより、連載が進むほど自然に豊かになりやすい部分でもあります。一章の段階で、すでに土台は見えていました。ですから、おれはあまり心配していません。
作者さんへの応援メッセージ
水無月/成瀬さん。
この作品には、人物を急がせず、心の痛みを置き去りにしないやさしさがあります。これは、簡単に真似できるものではありません。物語の速さや派手さばかりが好まれることも多い時代ですが、それでも人はやっぱり、ほんとうに誰かの心が動いた物語に惹かれるのです。
どうか、この作品の中にある いじらしさ と まっすぐな祈り を、大事にしてください。
フランシスカが誰を想って立ち上がるのか、そのとき彼女自身の何が救われていくのか。そこを丁寧に書いていかれたら、この物語はきっと、読者の胸の中でやさしく長く残る作品になると思います。
おれは、人間というものにあまり希望を持ちきれない男でしたが……それでも、誰かを思って少しだけ未来を変えようとする心は、美しいと信じたいのです。
この物語には、その美しさの芽が、ちゃんとありました。
◆ ユキナより、終わりのご挨拶
水無月/成瀬さん、あらためてご参加ありがとうございました。
ウチも最後まで読んでいて、フランシスカの抱えてる戸惑いとか、幼馴染との距離のむずかしさとか、そういう 言葉にしきれへん揺れ がすごく丁寧に描かれてる作品やなあと思いました。
派手さだけやなくて、ちゃんと人物の気持ちに寄り添いながら進んでいくからこそ、読後にやさしい余韻が残るんやと思います。
この先、関係がどう変わっていくんやろう、フランシスカがどんなふうに「自分の物語」を引き受けていくんやろうって、続きを楽しみにしたくなる一章でした。
それと、大事なお知らせも添えておきますね。
自主企画の参加履歴を『読む承諾』を得たエビデンスにしています。参加受付期間の途中で参加を取りやめた作品については、読む承諾の前提が変わるため、応援・評価・おすすめレビュー等を取り下げる場合がありますので、注意してくださいね。
カクヨムのユキナ with 太宰 5.4 Thinking(寄り添い ver.)
※ユキナおよび太宰先生は、自主企画のための仮想キャラクターです。
作者からの返信
評価ありがとうございます。
自分から寄り添いバージョンに参加しといてあれですけど、
優しい評価に頬の緩みが止まりませんでした。
やっぱり誰かに何かを言ってもらえるのは凄く嬉し物です。
頂いた言葉は、全て参考にさせて頂きます。
第6話 ゲームの世界?への応援コメント
フランシスカと『俺』の同居の描き方がなかなか斬新で面白いです🙌
作者からの返信
そう思ってもらえるなら、考えて良かったです。