第2話「性別よりも、あなたを愛してる」

豪志の問いは、太郎の心に深く突き刺さった。「女になる私を、一生愛せるの?」その言葉には、長年の葛藤と不安が滲んでいた。太郎は一瞬、言葉を失った。けれど、すぐに心の奥から湧き上がる感情が口を突いて出た。


「豪志さん、ボクもゲイです。だから、性別なんて関係ない。ボクは豪志さんという人間を愛してるんです。」


その瞬間、豪志の目が潤んだ。驚きと安堵、そして喜びが混ざったような表情だった。「太郎ちゃん……そんなふうに言ってもらえるなんて、思ってもみなかった。ずっと、自分のことを誰かが受け入れてくれるなんて、夢みたいな話だと思ってた。」


二人は布団の中で向き合いながら、互いの過去を語り合った。豪志は、幼い頃から自分の性別に違和感を抱いていた。ランドセルの色、制服の形、体育の授業で分けられる男女の列。どれもが、自分を「男」として扱うことに違和感を覚えさせた。


「小学校の頃、スカートを履いてみたくて、姉の服をこっそり着たことがあるの。でも、母に見つかってすごく怒られて……それ以来、自分の気持ちを隠すようになった。」


太郎もまた、ゲイであることを隠しながら生きてきた。中学の頃、好きになった男の子に告白できず、ただ遠くから見ているだけだったこと。高校では、周囲に合わせて無理に女の子と付き合ったこともあった。


「誰かに本当の自分を受け入れてもらえるって、こんなに嬉しいことなんだね」と豪志が言った時、太郎は涙がこぼれそうになった。


「豪志さん、ボクは豪志さんのすべてを受け入れたい。性別が変わっても、豪志さんの心は変わらない。ボクはその心に惹かれたんです。」


豪志は、太郎の手を握りしめた。「ありがとう。太郎ちゃんがいてくれるなら、どんな未来でも怖くない。」


その夜、二人は手を繋いで眠った。ぬくもりが、心の奥まで染み渡っていくようだった。太郎は、豪志の手の温かさを感じながら、これが本当の愛なのかもしれないと思った。


夜が明ける頃、太郎はふと目を覚ました。隣で眠る豪志の寝顔は、穏やかで美しかった。太郎はそっと彼女の髪を撫でながら、心の中で誓った。「豪志さんを、絶対に幸せにする。」


その誓いは、ただの感情ではなかった。社会の偏見や制度の壁があっても、二人で乗り越えていくという覚悟だった。


つづく

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