熊撃ち

八重森 るな

プロローグ

焦土。

なぜこんなことになってしまったのだろう。


都心の変電所には、焼けただれたアンドロイドの死骸が転がっている。

しかし、問題はそれだけではない。


救急車のサイレンがけたたましく近づいてくる。消防車の音と混じり合い、まるで地獄の合奏のようだった。


人がひとり、倒れている。

それを囲んでいるのは「反乱アンドロイド銃撃隊」の腕章を巻いた人々。銃以外の装備はなく、青ざめた顔でただ立ち尽くしていた。

誰も口を開かない。ただ倒れている男がかすかに唸る声と、近づくサイレンだけが響いていた。


やがて救急車と消防車が到着し、救急隊員が車から飛び出してくる。

「傷病人は?」

隊員の一人が銃撃隊員に声をかける。後ろではストレッチャーを構えた三人が待機している。

「この人です…」

案内された救急隊員たちは男を囲み、容態を確かめ始めた。

「もしもし、聞こえますか?」

問いかけに、男は「うん…」と答え、自分の名前を告げる。


「意識はありますね。驚いて倒れただけでしょうか」

救急隊員が銃撃隊員に柔らかい声で言った。


「野次馬なんです…あの人…」

銃撃隊員はさらに顔をこわばらせ、震える声で続ける。弁明なのか混乱なのか、判別できなかった。

「ロボットを撃っていたら…流れ弾が…」


そこへ「警視庁」と書かれたパトカーが到着する。

警官が救急隊から状況を引き継いだ。


「あなたが撃った弾丸が被害者に当たった、と」

「はい…人を撃つつもりはありませんでした。でも、あの人が規制線の中に入ってしまって…」

「結果的に、当たってしまったということですね」

「…はい」


硝煙と焦げた匂いが漂う中、白い緊張が張り詰めていく。

銃撃隊員は、警官に連れられてパトカーへと乗せられていった。

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