学校の有名美少女たちの悩みをなぜかモブ陰キャの俺が聞くことになった件
しろみず
第一章 ︎︎出会い
第1話 ︎︎君だったのね
︎︎俺、
︎︎入学して一か月が経とうとしているがそんな俺に「また明日」と声を掛ける友人もいない。
︎︎所謂どこにでもいるモブ陰キャである。
︎︎学校から走り去る俺だが、特にバイトや習い事の予定がある訳でも無い。
︎︎ではなぜそんなにも早く帰宅するのかと言うと、帰り道にいる黒猫が俺のことを待っているからである。
︎︎その黒猫と会ったのは今から1週間くらい前のことだろうか。
︎︎それは土砂降りの雨の中、学校からの帰り道を歩いている時のこと。
「天気予報では雨なんて言ってなかった気がするんだけど…」
一応傘は持ってるんだけど折り畳み傘なんだよな…。
︎︎これでどこまで凌げるのかだが、大分心許無い。
︎︎一応持っている物は使おうとの事で差してみたはいいが、少し経つとさらに雨足が強くなってきた。
︎︎案の定というかなんというか、折り畳み傘では全く歯が立たない。
︎︎雨は強いわ、風で雨が斜めに差し込んでくるわ、で右半身がびしょ濡れになったし。
「最っ悪。カバンの中までぐしょりだし、帰ったら教科書を乾かさないとな…」
これだから雨の日は嫌いなんだよ。
と心の内で愚痴を零しつつ、いつもの公園の前を通る。
︎︎ふと屋根付きのベンチの方を見てみると、いつもは何の変哲もない場所に黒い物体がぽつりといるのが目に付いた。
「猫か」
︎︎きっとあの猫も突然の雨に驚いて雨宿りしているのだろう。
「お互い災難だな」
︎︎そう呟きつつ少し先の空を見てみればちらほらと光が差し込んでいるのが見えた。
「もう少しで止みそうだし、俺も猫にならって少し雨宿りしていくか。これ以上濡れるのも嫌だし」
︎︎ぐしょぐしょになった重たい足を忍び忍び休憩所まで忍ばした。
︎︎ペタペタと音を立てて近づくが黒猫は逃げるそぶりも見せない。
「案外逃げないもんなんだな」
︎︎人に慣れているのだろうか?だとすると飼い猫かな。
︎︎と思い首元に目をやると、その猫は鈴の着いた可愛らしい赤色の首輪をしているではないか。
︎︎見たところ毛並みも綺麗なため、おそらく最近の迷子猫なのだろう。
「となり座ってもいい?」
「にゃーん」
︎︎なんとも可愛らしい返事をしてくれる。
︎︎おそらくいいよと言っているんだろう。
︎︎てなわけで俺は濡れた折り畳み傘を仕舞いながら、横に腰を下ろした。
それから隣に座らせてもらって5分くらい経った頃だろうか。
︎︎ぴたりと雨がやみ、太陽の光が差し込んできた。
その間、猫を撫でてみたのだが全く逃げる気配がなかったため、最高の毛並みを堪能させてもらった。
「じゃあね。その毛並みをまた堪能させておくれ」
そう呟くとまた「にゃーん」と可愛らしい返事を返してくれる。
︎︎必ずまた来よう。
これがその黒猫との出会いだった。
それから次の日、また同じとこにいるかもとチュールをもって行くとやはりベンチに佇む黒猫がいる。
︎︎チュールを手に持って近づいてみるとぺろぺろと舐めてきてくれた。
その姿がなんとも愛くるしい。
下あごに手を触れてみれば「ごろごろ」と喉を鳴らしているのが直で伝わって尚更尊い。
︎︎時間にすれば5分も無いくらいの黒猫と接する時間だが、明日も癒されに来ようと思って次の日、また次の日と続いて今に至るというわけだ。
︎︎そして今日も公園に行くと、当然のようにベンチに黒猫がいる。
「ほらお食べ-」
そう言っていつものようにチュールを差し出すが、どうも様子がおかしい。
︎︎いつもなら駆け寄って来るはずなのに、今日はどうしたのだろうか。
︎︎舐める勢いがあまり無く、しぶしぶ舐めているように見える。
もしかして体調でも悪いのだろうか。
そんなことを考えてながら黒猫を撫でていると後ろから突然、凛とした涼やかな声が響いた。
「君だったのね…、いつもこの子に餌を上げていたのは」
︎︎振り返るとそこには同じ学校でクール系美少女として有名な
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