エピローグ「収穫祭の日に」

 さらに数年の時が流れた。

 アレクシスが治める辺境領は、今や大陸でも有数の穀倉地帯として、目覚ましい発展を遂げていた。かつての痩せた土地は、見渡す限りの黄金色の麦畑に変わり、豊かさを象徴するように風にそよいでいる。


 今日は、年に一度の収穫祭。領内の広場では、領民たちの笑顔が弾け、陽気な音楽と美味しそうな食べ物の匂いに満ち溢れていた。


 領主として領民から深く愛されるアレクシスと、公私にわたって彼を支え、領の守りを固めるカイ。二人は、その喧騒を少し離れた丘の上から眺めていた。そして、二人の間には、小さな男の子がちょこんと座っている。


 黒い髪はカイに、そして聡明そうな青い瞳はアレクシスにそっくりな、二人の間に生まれた愛らしい息子、フィンだ。


「父様、見て! おっきなカボチャ!」

 フィンが指さす先では、カボチャの大きさを競う大会が開かれ、大いに盛り上がっている。


「本当だ、大きいな。来年は、フィンが育てたカボチャで優勝しようか」

 アレクシスが優しくフィンの頭を撫でると、フィンは嬉しそうに頷いた。


 穏やかで、幸せな時間。

 数年前まで、自分がこんな未来を手にすることができるとは、夢にも思っていなかった。


「アレクシス」

 隣に座るカイが、アレクシスの手を優しく握った。ゴツゴツとした、けれど誰よりも安心できる手。

「君と出会えて、よかった」


 夕日に照らされながら、カイは真っ直ぐな瞳で告げる。その言葉に、アレクシスの胸は温かいもので満たされる。

「僕もだよ、カイ。君が、僕を見つけてくれたから、今の僕がある」


 追放され、すべてを失ったあの日。絶望の淵で出会った、無骨で優しい男。彼と共に土を耕し、互いの傷を癒し、愛を育んだ日々。これまでの軌跡の一つ一つが、かけがえのない宝物だ。


 フィンが、二人の間に割り込むようにして、ぎゅっと抱きついてくる。

「父様たち、大好き!」


 アレクシスとカイは顔を見合わせ、幸せそうに笑った。

 そして、愛する息子を真ん中に、三人で肩を寄せ合う。


 これからも、この幸せな未来は続いていく。

 愛する番と、愛する息子と、そしてこの豊かな大地と共に。辺境の空に沈む夕日は、三人の輝かしい未来を祝福するように、どこまでも美しく燃えていた。

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【BL】追放された偽αはΩとして覚醒、辺境で元騎士団長の運命の番と出会い溺愛される 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi

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