『高評価よろしくな! − 禁断の未公開映像』 🎬

SACKY

第1話 プロローグ:StreamZの伝説

 暗い劇場に、ざわめきが広がっていた。上映開始前の緊張と期待が入り混じった空気は、どこか特別な雰囲気をまとっている。

 観客の多くは若者だった。SNSで話題になった「未公開映像の映画化」がついに実現するとあって、チケットは完売。中には、初めて映画館に足を運んだという学生もいた。


 「これ、マジでやばいらしいぞ」

 前列で囁く二人組の大学生。片方はスマホをいじりながら、もう片方はポップコーンを抱えて笑っている。


 観客の中には中年のサラリーマンや、戦争を体験した世代の老人も混じっていた。彼らは若者の浮ついた様子に苦笑しながらも、どこか真剣な表情でスクリーンを見つめていた。


 やがて館内の照明が落ち、ざわめきがすっと静まる。

 スクリーンの中央に、大きなロゴが浮かび上がった。


 **「StreamZ Original Documentary」**


 観客の何人かが小さくざわめいた。あの裏社会すれすれの動画配信サイトが、今や公式に映画化を手がける時代になったのだ。違法すれすれの過激動画から始まったStreamZは、今では「正規の歴史資料」を扱うとまで言われるようになっていた。


 画面はゆっくりと切り替わり、文字が映し出された。


 **「StreamZ小隊――公式記録映像」**


 観客席から小さなどよめきが起きる。SNSで断片的に広まっていた噂が、いま現実のスクリーンに姿を現そうとしていた。


 映像が始まる前に、簡単なイントロダクションが流れる。

 「この作品は、第一世代戦争の末期に活動した『StreamZ小隊』の記録である。

 彼らは自らの戦闘を配信し続け、その姿は娯楽として消費され、やがて伝説となった。

 だが、全ての映像が公開されたわけではない。今回上映されるのは、規制により封印されていた未公開映像である」


 観客は息を呑んだ。前列の若者は興奮気味に「マジかよ、ついに解禁だ」と囁いた。

 一方で後列の老紳士は、険しい顔で腕を組んでいた。彼の頭には、自分が若い頃に耳にした戦争体験が重なっていたのかもしれない。


 そして、スクリーンは暗転した。

 重低音が響き渡り、場内の空気が一気に引き締まる。

 いよいよ「笑い」と「死」が同居する伝説の映像が始まろうとしていた。


 ――この瞬間、誰一人として、映画が彼ら自身の心を試すものになるとは想像していなかった。

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