#11 魔女の報復
いつかのフィルムは、手の中で青い炎に包まれた。
最強ババアを冒涜した人々よ、魔女の報復におびえるがよい。
「編集長! 市民たちの抗議デモで、外に出られませんっ」
2階の局長室。べチャリと窓ガラスが赤く染まる。
誰かがトマトを投げつけたのだ。
「局長、なんとかしてください! この地獄から出ることもできない!」
廊下で爆竹カボチャが弾け、カサカサ虫が這い回る。
逃げ惑うスタッフ達で、編集局は阿鼻叫喚。
「うるさいっ。君のせいだろうが……!」
抜け落ちた髪を握りしめ、局長は涙した。
街には小型の蛇が迷い込む。
街の周囲に何重にも打たれた杭の魔法陣。
最強ババアの丁寧な修繕があってこそ力を発揮するのだが――
ほんの少し、手を抜いた。
脅威は低いものの、これまで完全に守られた街の中央に蛇が出た。
それだけで街はすっかりパニックだ。
「最強ババアを怒らせたんだ」
「責任者は謝れ!」
皆が悟った。
ババアの怒りに触れてしまったと。
当面、新聞記事が最強ババアを中傷することはないだろう。
けれども、シティの心は晴れなかった。
「彼の記憶改ざんを……」
青年に、罰をくださなければならないのに。
術の行使に躊躇った。
(本当に、彼がやったの……?)
優しい甘さ、温かな時間。
それら全てが偽りだったと認めたくなくて。
だから排斥術を使った。
もう一度、青年の顔を見るのが怖かったのだ。
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