第1話 猫のトレジャーハンター
「ふあぁ~あ……」
オレの名はアルファス。しがないトレジャーハンターだ。毎日遺跡を漁っては、見つけた品を売って生計を立てている。
この遺跡都市ジ・オークスは何千年も前に栄えた古代都市で、今でもボロボロと貴重な物が手に入る。勿論正式な調査隊も発掘に関わっているが、ここは元々一度滅んだ街に盗掘目当てで集まった人間が作った街だ。だからこそ、正式な発掘隊よりトレジャーハンターの方が今でも多い。
そして、そう言う成り立ちなだけにそう言う人間が住みやすい街でもある。ブツさえ手に入れば後は何も気にしないんだ。人種、国籍、様々な人間で溢れかえっている。
こう言う場所は治安が悪いってのが相場だけど、何しろ今でも発掘品がぼろぼろ出てくるし、しかもみんな質がいい。だから、こう言う都市にありがちな貧困やら貧富の格差で嘆く話を驚くほど聞かない。
つまり、いい街なんだよ。だからオレみたいな猫でさえ平等に扱ってくれる。二本足で歩いて言葉を喋って……。そんな猫を気持ち悪がらずに受け入れてくれるんだぜ?
本当、ありがたい話だよな。
何故オレがこんな猫になったかだけど、遺跡で遊んでいた時に見つけたアイテムがオレに力を与えてくれたんだ。遺跡のアイテムに反応する者を遺跡体質者って言うらしいんだけど、何とオレもそうだったんだよ。
遺跡体質者って言うのは、人間だけのものじゃなかったんだな。
折角人間と同じ能力に目覚めたんだ。オレは人間と同じ生活が楽しくて仕方ない。仕事だってトレジャーハンターで十分食っていける。同じ二本足で動ける猫の仲間はいないけど、人間の友達なら何人も出来たさ。
それにちゃんと普通の猫とだってコミュニケーションは取れるから、猫情報網も利用出来る。これが結構仕事に役に立つんだなぁ。
オレはトレジャーハンターも生業だが、夜にはもうひとつの顔もある。それが悪党専門の泥棒さ。
やっぱり、生きていれば吐き気を催すような悪と出会う事もある。オレはそう言った奴がどうしても許せないんだ。人間の頭脳と猫の俊敏さがあれば忍び込み、盗み出すのはそんなに難しい事じゃない。
それで、これまで何人もの悪党を懲らしめて来たもんさ。
ま、自己紹介はこれくらいにしよう。それじゃ、今日も元気にトレジャーハンターの仕事を始めるとするかね。
今日の仕事は遺跡の南側のハズレにある通称『猫の耳』の探索だ。ここはまだ調査隊が入っていない手付かずのお宝がわんさかあるって話だ。
まずは商売敵がいないか慎重に辺りを確認しながら、抜き足差し足忍び足……。猫足は物音を立てないから本当に便利だぜ。
「うん、まだ誰もいそうにない! よし! 今日はオレがこの場所一番乗りだ!」
早速金になりそうな物を探すとしよう。くんかくんかくんか。いいお宝はいい匂いがする。それが長年の経験でオレが得たノウハウだ。ただ、こんな芸当が出来るのは猫であるオレくらいのものだろうけどな。
「おおぅ……。この匂い、美味しそうなお宝の匂いがギュンギュンするぜ」
こう言う遺跡には罠があったりするのが定番だけど、このジ・オークスのはよっぽどでもない限りそんなものはない。だからいつだってお宝は早い者勝ちなんだな。
「さて、足場に気をつけてっと」
一歩を踏み出したところで、カラ……と足元の床が崩れていく。やばいやばい……。思わず崩れかけの部分に足を乗せてしまった。いくらオレが猫とは言え、この高さから落ちたらちょっと無事じゃ済みそうもない。ここは慎重に慎重を重ねないとな。
オレは感覚を研ぎ澄ませると、嗅覚に集中する。くんかくんかくく――!
「うおぅ!」
すごいお宝を見つけたが、これは……。ここから直接取りに行けるルートが存在しない。道が崩れてしまっている。どうにか迂回ルートを探して、回り道してでも手に入れなくては!
前に何度もあったんだよ。お宝を目の前にして、道が繋がっていないせいで同業者に横取りされる事が。鼻が良くてつい最短ルートを辿ってしまうんだよな。あんまり能力があるってのも困ったもんだぜ。
オレは周りを見渡して、ここまでの道のりを整理してみる。空間把握能力が試されるな、うん。ま、同業者ならこんなスキルは持ってて当たり前、標準装備なんだけど。
とりえず、まだ足を運んでいないルートからもう一度お宝を目指すぜ!
この遺跡都市の遺跡は場所によって構造が全然違う。あるエリアでは全体的に腐っていて崩れやすかったり、別のエリアではまだ当時のままのように作りが強固だったり――。
中には、数千年前のシステムが未だに動いているようなところすらある。仕組みの分からない頃は、そう言うのは古代人の呪いだと言われていたんだっけかな。
この猫の耳は、どちらかと言うと放置されて崩壊が始まっている部類のエリアだ。だから移動も慎重にしないといけない。
折角お宝を手に入れても、帰りのルートが崩れたらそこで終わりだ。
「おおっと!」
油断していたら、またしても床がガラガラと派手に崩れていった。何だこれ。道の痛みようが半端じゃないぞ。オレは猫だからここも渡れるけど、人間の体重で踏み込んだら間違いなく崩壊するだろうな。
やはり、同業者がやってくる前に事を急いだ方が良さそうだ。
オレは息を整え、神経を研ぎ澄ませる。そうして、タイミングを見計らってすたたたたたたたたたっ! と一気に駆け出した。名付けて、秘技、風猫走り。これは風の様に素早く駆け抜ける技だ。
折角2本足で行動出来るようになったのに少し癪だが、猫本来の4本足で走る事で全体の荷重を分散させ、崩落の危険のある場所でも道にあまり負担をかけずに通り抜けられるのだ。その早さ、風の如しッ!
「ふぅ……」
なーんとか危険地帯を切り抜けられたぞ。目指すお宝は目の前だ。
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