千六百三十二話 ルビア<筆頭従者長>になる

「ンン、にゃお~」

「にゃァ~」


 ナロミヴァスは、黒猫ロロの鳴き声に釣られたように黒猫ロロを見ていた。

 黒猫ロロは、尻尾を傘の尾のようにピンと立たせ、四肢を前後させて太股の毛をふわふわっと動かすようにお尻のピンクな菊門を見せながら歩く。その姿を見たナロミヴァスは、


「おぉ、神獣様のお尻と太股と尻尾様が可愛すぎる……」


 ボソッと言って体から冷たい風のような<血魔力>を発しつつ柔らかい芝生を歩む。


 その足から放出された<血魔力>は輝き放ちながら朝霧のように芝生の草葉を掠めて濡らし、震わせるように草を揺らすと、その芝の草葉の中へと<血魔力>が浸透していく。


 そのナロミヴァスは、そこに居たハンカイとクナとエトアと握手をしていた。


 各々眷族に成ったことを示すように互いの<血魔力>の交換をし始める。

 皆の表情には、確固たる友情と信頼と愛があった。

 

 記憶を共有したことによる光魔ルシヴァルの絆は強まっていると分かる、良かった。

 俺たちは家族だからな。

 闇の悪夢アンブルサンと流觴りゅうしょうの神狩手アポルアも、


「ナロミヴァス様、おめでとうございます」

「ナロミヴァス様、おめでとうございます」

「ありがとうアンブルサンとアポルア」

「「はい」」


 ナロミヴァスとアンブルサンとアポルアはハグをしていく。

 悪夢の女王ヴィナトロス様と共に俺が助けた三人だから、感慨深い。そして、皆のため、これからがんばってくれると思うと自然に胸が熱くなってきた。


 ナロミヴァスは、皆に<血魔力>を有したマントを見せる。

 靡かせたマントの一部を刃に変化させ伸ばし、その先端を芝生に衝突させる、芝生を抉っていた。

 新しい能力を披露か、エトアは両手の魔竜の鱗の表面から<血魔力>を有した魔竜の頭部の幻影が出現させて披露していく。

 クナが興奮気味に何かを喋っている。ハンカイは金剛樹の斧をナロミヴァスに見せながら風と土属性を纏わせ金剛樹の斧を少し大きくさせていた。


 すると、そんな皆の足下に「にゃぉ~」、「ンン、にゃァ」と鳴いた黒猫ロロ銀灰猫メトが寄って甘えていく。はは、可愛い相棒たち。

 黒猫ロロたちも俺と同じ気持ちかな。

 新しい家族を祝福しているように思えた。


 そこに、


「ナロミヴァス、<筆頭従者長選ばれし眷属>、おめでとうございます」

「おめでとう~。これからはナロミ! と呼びます」


 メルとマルアが挨拶。

 続いて、ミレイヴァルが、


「過去はどうあれ、新しい選ばれし眷属! おめでとうございます。これからの南マハハイム地方の光魔の一人としての活躍を期待していますよ!」

「聖騎士、聖ミレイヴァル様に言われると、非常に嬉しい思いです。ありがとうございます」


 敬礼したナロミヴァスは真摯に語る。

 続いて、フィナプルスとアドゥムブラリとベニーとカズンにビュシエとキッカとグィヴァとレガランターラもナロミヴァスに近付いて挨拶をしては握手をしていった。


 やや遅れて、ハンカイたちもビュシエたちとも会話をしながら互いの<血魔力>を交換しあう。


 ファーミリアのヴァルマスク家たちは少し離れた庭の芝生から此方を見守っていた。さすがに光属性の<血魔力>が吹き荒れる状況だからな、闇が濃厚な吸血鬼ヴァンパイアが触れたら危険。


 シキとコレクターたちと聖鎖騎士団のハミヤたちと魔族殲滅機関ディスオルテの隊員たちは庭に設置された扉が無い大きい部屋に入り、カウンター席で御酒とお摘まみを食べては、椅子やソファに座って団欒していた。

 

 さて、まだ<血魔力>と精神力に体力などは大丈夫だ。

 

 ルビアを眷族に迎え入れよう。

 と、ナロミヴァスたちの様子を微笑んで見てていた周囲の皆に、


「では、ルビアを<筆頭従者長選ばれし眷属>か<従者長>に迎えようと思うが」


 石畳の訓練場に入っていたヘルメとヴィーネとユイとキサラとレベッカとエヴァとヴェロニカとルビアとクレインが振り向き直し、俺を見てから互いの表情を確認、


「ん」

「うん」

「大丈夫なのね」

「少し心配だけど」


 と発言し、ルビアは敬礼し、


「――はい、<従者長>でもいいです。光魔ルシヴァルならなんでも入ります!」


 気合いが入ったルビアは魔力を体から漏らす。

 背から〝魔命を司るメリアディ〟の幻影が現れては消えた。

 ヘルメが、


「魔命を司るメリアディ様と閣下は、少し前に念話でコミュニケーションを取りましたので大丈夫とは思います……しかしルビア、本当にいいのですね?」


 と心配そうに発言していた。

 ヘルメ的には、まだまだ子供に見えるか、初めてあった時からしたら、だいぶ身長も伸びたんだが。

 ルビアは、


「はい、心配要りません」


 と、やる気満々。

 

「魔命を司るメリアディ様の幻影が出現するでしょうね」

「あぁ」

「魔命を司るメリアディ様は、ルビアを大切だからこそシュウヤ様に託せると伝えていた」

「はい、〝知記憶の王樹の器〟の液体の時に反応ですね」


 キサラとヴィーネとヘルメの言葉に頷いた。

 キサラは、


「シュウヤ様の記憶を見て、魔界騎士を得た氣分と仰っていた」


 頷く。〝知記憶の王樹の器〟で記憶を共有しているから皆が理解している。


「また、それだけ魔命を司るメリアディ様にはルビアは<神子>で、<神の子>。凄く大事な存在……そこが少し心配で……同時に期待ができる」

「たしかに、光魔ルシヴァルにルビアが成っても、魔命を司るメリアディ様とルビアの絆は失われないと言っていたからね」


 キサラとレベッカの言葉に頷いた。

 メルが、


「眷族化なら、<筆頭従者長選ばれし眷属>のほうが良いかもですね」


 頷く。

 ヴェロニカが、


「魔界セブドラ側で魔命を司るメリアディ様の用事が増えるとして、でもアドゥムブラリとの繋がりもあるし、<空の篝火>を持つ総長だから魔命を司るメリアディ様と強い絆を得るチャンスよ、魔霧の渦森のゾルの小屋の地面に刻まれてあった魔法陣も発動できるかも」


 その言葉に皆が頷いた。ヴィーネは数回頷く。


 血銀行にいるミスティならなにかを発言していただろう。


 そして、過去の魔命を司るメリアディとの念話では、


『ふむ、それ故に光神ルロディスの強光は妾を苦しめることがある。光魔ルシヴァルの<血魔力>に内包している濃厚な光は苦手だが、濃厚な闇もある。それゆえ平気であったが、光神ルロディスの光は……中々な』

『……光神ルロディス様の光神は癒やしに通じると思いますが、それでも苦しむことに?』

『うむ、癒やしという点だけならば、生命の神アロトシュや光神ルロディスなど神界の神々とは相性が良いだろう。が、光神ルロディスの直の強光は、中々に耐えられるものではないのだ。そして、妾が苦しめば同時にルビアも苦しむ……苦しむが、その苦しみも妾の糧となり、またルビアの糧となるのだ……すべては螺旋する縁の糸で繋がっている』


 と、念話で伝えてきた。

 その時、ルビアと魔命を司るメリアディは一心同体に思えたっけか。

 メリアディ様は最後に、


『では、そろそろだ。ルビアを眷族にしたら、また顕れよう、妾ばかり得する話で恐縮だが、其方に頼み事もある……ではの』


 と念話で伝えてきた。だから必ず魔命を司るメリアディが出現するだろう。

 今のルビアは、


「……わたしを見守ってくださっている魔命を司るメリアディ様……深く感謝しています。恩寵の<魔命ノ三眼癒>の《大癒グランド・ヒール》があるから、今のわたしがある。その魔命を司るメリアディ様も、二十四面体トラペゾヘドロンを使い、【ベルトザムの村】で殺されるしかない状況から、わたしを救って下さったシュウヤ様に感謝していましたが、わたしも当然、シュウヤ様のことを深く深く……感謝しています。同時に……」


 と、ルビアは俺をジッと見てくる。

 女の顔だ、気持ちは分かる。頬を朱に染めたルビアは微笑んでから、

 

「……あと、王都グロムハイムに居るザガさんとボン君を紹介してくださった。そして、この魔竜王バルドークの剣とカシーンの剣をプレゼントしてくれた――」

 

 ルビアは腰ベルトの鞘から古竜の剣とカシーンの剣を引き抜く。

 たしかに俺がプレゼントした品だ。ニコッとしたルビアは、鞘に古竜の剣とカシーンの剣を仕舞う。そして、

 

「冒険者クラン【蒼い風】に入り、嫌なこともありましたが、それ以上に良い友達と戦友ができた……冒険者として貴重な経験を積むことができました。ザガさんに恩返しができたのもシュウヤ様のお陰です。感謝しかない……」

 と、また涙ぐむと、俺を見て、

「シュウヤ様に再度命を救われた魔人たちの乱……キュベラスたちには恨みを持ちましたが、今ではキュベラスたち、【闇の教団ハデス】を仲間として見ていますし、いずれは同じ眷族に成れると考えることができるのも、皆様とシュウヤ様の行為のお陰……皆を助けたいと思える聖者、聖王の心を持つシュウヤ様は光神ルロディス様が氣にいるのも当然です。また、その光神ルロディス様が認めた証しの〝黄金聖王印の筒〟を示し、ハミヤ様たちを救われた。そして、最近では<光の授印>と連動した、光の女神イリディア様と光の女神カーナディア様と会合を果たし、聖槍アロステに神槍ケルフィルなどを使い、幻瞑神魔封石を完成させて、【幻瞑暗黒回廊】を封じることに成功しました。ハミヤ様たちは、奇跡的な出来事と仰ってましたが、本当にそうだと思います。魔界の一柱闇神リヴォグラフの野望を打ち砕いたのですから! 本当に凄い、シュウヤ様こそ、真の聖者で、英雄です……凄すぎて、今でも鳥肌が立ちます………」


 とルビアは俺たちに両腕を見せてくる。

 ルビアの体を見た直後、ルビアは視線を浴びたことに嬉しさもあるのか、「あぁ……」と悩ましい声を発しながら体を震わせる、と、本当にまたも鳥肌が立っていた。


 ルビアの蒼い瞳は潤んでいる。

 ルビアの言葉と態度を見たヴィーネとヘルメは頷いた。


「はい、ご主人様はルビアを数百年単位で見ていたようですが、ご主人様もゴルディクス大砂漠と魔界セブドラで用事も多いですからね。今が良い時期かと」

「はい――先程と同じく離れて見守っておきます」

「シュウヤ様とルビア、がんばってください」

「うん、総長も次は少し休憩をかねて、皆から血の補給をしたほうが良いと思う、大丈夫と分かるけど――」


 ヘルメとヴェロニカがそう言って離れた。ヴィーネも頷いて、俺とルビアに微笑みかけると此方を見ながら浮遊し、芝生に移動した。

 ルビアを見ながら<血道第五・開門>を意識し維持。

 消えていた血の錫杖が目の前に召喚される。それを掴んで、


「では、<筆頭従者長選ばれし眷属>として迎え入れる、<光魔の王笏>――」

「はいっ」


 全身から放出された大量の光魔ルシヴァルの輝きを帯びた血がルビアの体を飲み込む。

 一瞬で深紅の波紋のような<血魔力>が石畳に広がり、石畳の訓練場は血に満ち満ちて血の深海を思わせる血の領域と化した。

 この血の領域は冷たく、重い圧力を伴っているようにも見えるだろう。

 俯瞰で見たら、輝きを放つ血の半球体に見えるかな、不思議な光景かも。


 その血海の中心で立ち泳ぎを行っていたルビアは仰け反りつつ口と鼻から大量の空気と銀色の魔力粒子が零れてルビアを守るように囲う。


 と、その銀色の魔力粒子が子宮を模った。

 

 同時に石畳の訓練場の周囲に居るキサラたちが演奏を奏で始めた。

 ダモアヌンの魔槍をギターにしての和風な三味線ロック――。

 ハスキーボイスでルビアの鼓動を表現するかのような高揚感を持たせながらの絶妙な魔声に鳥肌が立つ。シャナの歌声とイモリザの歌声も合うから、何回でも聞いていたい。


 三人の歌声が光魔ルシヴァルの血に共鳴し、血の海に小さいルシヴァルの紋章樹が無数に出現し消えていく。音楽と血の流れに乗っている血の錫杖がルビアの回りを巡りに巡り、カンが硬質な音を鳴り響かせていった。


 錫杖から波紋が周囲に放出され、血の世界に浸透していく。

 その波紋に触れた、たまたま出現中だった小さいルシヴァルの紋章樹は色付きながら儚く消えた。


 シューティングゲーム的なエフェクトで面白い。


 その錫杖から出た波紋は、ルビアの体にも衝突し、体に光の筋が現れ消えるを繰り返す。

 

 あの光の筋の現れ方は、ハンカイやクナたちと同じ。

 ルビアは体勢を下に戻し、俺を見つめてきた。


 ルビアの瞳には不安げな光が宿っていたが、その奥には決意と覚悟が見え隠れしている。それを後押しするようにルビアの瞳を見つめると、ルビアはかすかに双眸を揺らしつつ頷いた。


 俺も『がんばれ』と意味を伝えるように頷きを返すと、ルビアは優しい表情を浮かべてから、ゆっくりと頷いてくれた。


 そのルビアの気持ちに呼応したように無数の小精霊デボンチッチたちが回りに出現しては、ルビアの金色の髪を優しげに撫でていく。

 一部はルビアの体の中に血の流れと共に吸い込まれていった。


 続けて水鴉たちと血の精霊ルッシーたちと血霊衛士の簡易版も出現し、ルビアの回りで踊りを始めていく。


 水鴉たちの口から放たれる波紋を浴びたルビアは体内の魔力を増幅させた。


 七福神が乗るような宝船に乗った血妖精ルッシーも出現。

 すると、周囲で踊っていたルッシーと小精霊デボンチッチたちが宝船の背後に並び行進を開始。


 水鴉たちの一部はルビアの体に突入し消えた。

 一部の水鴉たちは血の流れに乗って飛翔していく。


 やや遅れて、他とは形と大きさが微妙に違う腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチが出現した。

 

 この腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチは、小精霊デボンチッチのリーダー的な存在だろう。


 <水神の呼び声>と<水の神使>に水神アクレシス様と関係が深い存在と分かる。


 【玄智の森】で大豊御酒と水の法異結界を俺が得た結果の存在で俺の一部でもある。


 その腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチが俺をチラッと見てからキリリッと顔の陰影を深めて、デフォルメ調に、イケメンずらをしてきた。


 ネットミーム的な印象を覚えて、少し吹くように笑った。


 カンを鳴らし、不思議なリズムを奏でていた血の錫杖を縮ませながら右手に引き寄せた。


 その血の錫杖を握り振るい始める。


 途端に、血の妖精ルッシーと血霊衛士の簡易版と小精霊デボンチッチたちは整列を行う。

 

 宝船も腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチの前に停まった。


 腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチは宝船を見据えるように小精霊デボンチッチたちの前で浮遊すると、司祭が着るような衣装を身に纏った。


 そんな司祭の腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチを見上げていた血の妖精ルッシーと血霊衛士の簡易版と小精霊デボンチッチたちも、衣装を歌唱隊が着るようなお揃いの衣装に変化させた。


 司祭の腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチは聴衆の皆に何かを語りかけるような仕種を取る。


 司祭の説教?

 教会の神父や牧師に司祭をモデルにした?

 『立てよ、国民』の流れか?

 

 司祭風の腰に注連縄を巻く小精霊デボンチッチが錫杖を振るうと、小精霊デボンチッチたちが静かに歌い始めた。


 オーケストラ風ではない。

 不思議な音色で血の世界の鼓動、心臓の律動に合わせた……なんとも表現しにくいが……と、感想を持ったところでルビアの真上に、三つの目を持つ魔命を司るメリアディ様の幻影が出現した。


 その魔命を司るメリアディ様の幻影はルビアと魔線で繋がっている。


 歌っていた一部の小精霊デボンチッチたちは、その魔命を司るメリアディ様の回りに纏わり付き始めた。

 魔命を司るメリアディ様の半透明な羽衣とインナーと膨よかな乳房などが揺れに揺れる。スタイルが良いメリアディ様だから魅惑的だ。


 スカートのひらひらの内側に潜っていくえっちな小精霊デボンチッチがいる。何していんだ……。


 魔命を司るメリアディ様は、スカートのひらひらを両手で押さえつつ悩ましい格好で、俺をキッとにらむ。

 

 ええ? と、己の血の世界の中で溺れるように空気が大量に零れた。

 すると、魔命を司るメリアディ様は微笑んでから魔力を発した。


 ルビアも体から魔力を発した。


 魔命を司るメリアディ様に付いていた小精霊デボンチッチたちは、その魔力の影響を受け後方に回転しながら離れる。スカートの下に潜り込んでいた小精霊デボンチッチも外に出ていた、一安心。


 と、一部の小精霊デボンチッチは、反転し、魔命を司るメリアディ様に向かうと各々の体が溶けながらルビアと魔命を司るメリアディ様の幻影に突入し、一体化。


 同時にルビアの体に入り込んでいる血の流れが加速する。


 小精霊デボンチッチたちを吸収した魔命を司るメリアディ様の幻影は髪の色を金と黒に何度も変化させた。


 様々なグラデェーションを髪に起こし髪形を自由に変化させていく。


 幻影だが素直に美しい。

 メリアディ様は三つの目で俺を見ながら満足そう微笑みつつ右手と左手に生み出した魔杖を振るう。

 魔杖の先端から魔印と波紋が生まれ、それがルビアと俺に直進してきた。

 魔印と波紋は血の世界に干渉しているように銀が泡ぶき、それが魔力粒子となって小形の子宮を模った。が、一瞬で三つを目を擁した子鬼のような存在に変化し、それが血の中に浸透するように消えていった。


 魔命を司るメリアディ様の魔力が光魔ルシヴァルと合わさる?


 更に、魔命を司るメリアディ様の半透明な幻影は、体に右上腕と左上腕を生み出すと突如して魔命を司るメリアディ様は消えた、否、いきなり目の前に転移してきた。


 ドアップの魔命を司るメリアディ様の三眼は綺麗だ。


『……シュウヤ、やっとルビアの想いに応えたか』

『はい』

『ふふ、妾の加護を持つルビアをこのまま頼む。そして、頼み事だが』

『はい、なんでしょうか』

『まずは、これをそなたに――』


 間近の魔命を司るメリアディ様が、突如、三つの勾玉が中央に嵌まっている半透明で七色の輝きを時々放っている、イリジウムのような輝きもあるが、不思議な鏡に変化を遂げた。


『それは〝メリアディの三眼鏡〟、魔力を有した地面に嵌め込み、魔力を込めたら、妾の一部を呼び出せる。その鏡の範囲内のみ土地の魔力、魔法陣、なんでも糧とする。また、妾の名、妾の魔命の力を有した品、魔法陣も、その鏡があれば効力を発揮する。魔霧の渦森の妾の魔力を利用している魔法陣を作動できるだろう。広範囲の魔力は吸わないから安心しろ、また、吸収した魔力で妾の一部が具現化するが、それは、お前の才覚次第……その現れた物が、魔界セブドラの【魔命を司るメリアディの地】、【メリアディの書網零閣】、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】にお前を誘うことになる』


 魔命を司るメリアディ様の幻影は、宙空に〝メリアディの三眼鏡〟を残すと、ルビアの体へと吸い込まれるように半身をルビアと重ねて、愛しむように抱きしめる。〝メリアディの三眼鏡〟を戦闘型デバイスに仕舞った。


 血の海に残った水鴉たちは、血の海の中で増殖していくと黄金角の計算式の図形と波形へと変化し、それがルビアの体に突入していく。

 小精霊デボンチッチと血の妖精ルッシーたちも明滅しながら、<光闇の奔流>を意味する陰陽太極図と似た模様に変化をして、それもルビアの体へと突入を始めていくと、途端に、体へ流れ行く血の勢いが加速され、ルビアの体が浮遊し、金色に包まれた。

 そのルビアの体を守るような素振りを見せた魔命を司るメリアディ様の半透明な幻影にも金色の魔力が出現していく。

 

 ――ルシヴァルの紋章樹の幻影が出現した。


 そのルシヴァルの紋章樹の無数の枝葉から魔線が放出され血の世界の中に弧を描きつつルビアの体と魔命を司るメリアディ様の体に吸着されていった。

 ルビアと魔命を司るメリアディ様は、人形劇のマリオネットで操られるような印象と成ると、ルビアの体に光の筋が増えていくと、魔命を司るメリアディ様の幻影はルビアの体に吸収されて消えた。

 

 同時に、ルビアの前に、<光魔の王笏>の印が浮かんだ。


 ルシヴァルの紋章樹の幻影が一氣に色づいた。

 

 幹に太陽を思わせる輝きを生み出す。

 その幹が太く縦に伸び太い枝を左右に生む。

 それら枝に無数の銀色の葉が誕生し、綺麗な花と三つの勾玉の果実が誕生した。銀色の葉と花以外にも、極彩色豊かな植物も咲き乱れていく。


 樹の屋根の天辺は太陽を思わせる明るさ。

 まさに陽。

 樹の根の真下は、月を思わせる暗さ。

 まさに陰。

 葉と花から銀色の魔力の波が太陽のプロミネンス的な動きで放出され、血の世界に閃光を起こす。

 銀色の魔力の粒子は周囲に散らす。

 太陽を彷彿とさせる樹の屋根と幹と枝から迸っている魔線と魔力の波がルビアの体と繋がった。


 ルシヴァルの紋章樹の根っこがルビアの体に絡み付くと、ルビアの体が半透明と化したが、魔命を司るメリアディ様の幻影も出現し、その体にも、ルシヴァルの紋章樹の根っこが悩ましく絡んでいた。


 半透明なルビアはルシヴァルの紋章樹に身を委ねる。

 と、目の前に陰陽の図が造られ、魔命を司るメリアディ様の裸に近い幻影も現れて、俺のことを抱きしめながら血の中に消えていった。


 と、ルビアがルシヴァルの紋章樹と重なった。

 半透明な魔命を司るメリアディ様の裸の幻影も出現し、腕を払いながらルシヴァルの紋章樹の枝を体から払い落としては、乳房を左腕で隠して、俺を睨んでは、舌を出して、ウィンクしてくる。


 と、そのウィンクから勾玉の魔力弾を発生させて、俺に衝突させてきた。

 魔命を司るメリアディ様の『……妾の愛をルビアと共にお前だけに……ぁん』となんとも言えない念話が心に響くと、魔命を司るメリアディ様の裸はルビアの体内に消える。

 刹那、ルシヴァルの紋章樹の根っこがルビアの体に更に絡み付いた。

 そのルシヴァルの紋章樹とルビアが重なっている幹から、榊のような棒が飛び出た。それを掴んで、ルビアの体を祓い撫でる。


 祓われる度に恍惚とした表情を浮かべたルビアの体に無数の血の筋が生まれては消えた。更に血の線から数学染みた暗号のような文字が宙空に現れ消えると榊のような棒はルビアの体に取り込まれた。

 

 ルシヴァルの紋章樹と幹と無数の枝と葉の合う位置に<筆頭従者長選ばれし眷属>を意味する大きな円が現れて、


 第一の<筆頭従者長選ばれし眷属>ヴィーネ――。

 第二の<筆頭従者長選ばれし眷属>レベッカ――。

 第三の<筆頭従者長選ばれし眷属>エヴァ――。

 第四の<筆頭従者長選ばれし眷属>ユイ――。

 第五の<筆頭従者長選ばれし眷属>ミスティ――。

 第六の<筆頭従者長選ばれし眷属>ヴェロニカ――。

 第七の<筆頭従者長選ばれし眷属>キッシュ――。

 第八の<筆頭従者長選ばれし眷属>キサラ――。

 第九の<筆頭従者長選ばれし眷属>キッカ――。

 第十の<筆頭従者長選ばれし眷属>クレイン――。

 第十一の<筆頭従者長選ばれし眷属>ビーサ――。

 第十二の<筆頭従者長選ばれし眷属>ビュシエ――。

 第十三の<筆頭従者長選ばれし眷属>サシィ――。

 第十四の<筆頭従者長選ばれし眷属>アドゥムブラリ――。

 第十五の<筆頭従者長選ばれし眷属>ルマルディ――。

 第十六の<筆頭従者長選ばれし眷属>バーソロン――。

 第十七の<筆頭従者長選ばれし眷属>ハンカイ――。

 第十八の<筆頭従者長選ばれし眷属>クナ――。

 第十九の<筆頭従者長選ばれし眷属>ナロミヴァス――。

 第二十の<筆頭従者長選ばれし眷属>の大きい円が生成される。


 類縁関係と派生関係などを意味するように枝分かれた樹状図として出現。

 芸術的に光魔ルシヴァル一門の類縁関係が樹木状に模式化された系統樹が展開される。


 第六の<筆頭従者長>のヴェロニカの名を刻んでいる円の縁から別の線が系統樹として、小さい円へと繋がっていた。


 その小さい円の中には<筆頭従者>メルと<筆頭従者>ベネットの名が刻まれてある。


 第十六の<筆頭従者長>バーソロンの名が刻まれている円の縁からも線が系統樹として小さい円に繋がっていた。


 その小さい円の中には、<筆頭従者>チチル、<筆頭従者>ソフィー、<筆頭従者>ノノの名が刻まれてあった。


 それとは別の小さい円がある。

 樹の造形が生かされた意匠が非常に美しい。


 <従者長>カルード――。

 <従者長>ピレ・ママニ――。

 <従者長>フー・ディード――。

 <従者長>ビア――。

 <従者長>ソロボ――。

 <従者長>クエマ――。

 <従者長>サザー・デイル――。

 <従者長>サラ――。

 <従者長>ベリーズ・マフォン――。

 <従者長>ブッチ――。

 <従者長>ルシェル――。

 <従者長>カットマギー――。

 <従者長>マージュ・ペレランドラ――。

 <従者長>カリィ。

 <従者長>レンショウ。

 <従者長>アチ。

 <従者長>キスマリ。

 <従者長>ラムラント。

 <従者長>エトア。


 続いて、光魔騎士などの名が刻まれている円が出現。


 光魔騎士デルハウト、シュヘリア、グラド、ファトラ、ヴィナトロス。

 バミアル、キルトレイヤの木彫り、ナギサ、ミレイヴァル、イモリザ、ツアン、ピュリンの木彫り、マルア、フィナプルスの彫り、アミラ、<古兵・剣冑師鐔>のシタン、ヘルメ、グィヴァ、古魔将アギュシュタン、<魔蜘蛛煉獄王の楔>の蜘蛛娘アキ、クナの本契約の魔印のような彫りの模様は消えていない。

 しかも、大きい円と小さい魔線が繋がっていた。

 悠久の血湿沼ナロミヴァス、闇の悪夢アンブルサン、流觴りゅうしょうの神狩手アポルアの魔印も系統樹に刻まれているが、第十九の大きい円と魔線で繋がった。


 まさに、光魔ルシヴァルのデンドログラム。


 ルビアは、そのルシヴァル紋章樹と融合。

 え? 身長が少し伸びた。

 金色の髪も魔命を司るメリアディ様のように長くなる。

 と、紋章樹の太い幹が呼吸をするように隆起し、呼吸の度に、ルビアの乳房が膨らみながら揺れて、生きとし生ける物の意味があるように周囲の銀色の葉が生まれて散りつつ、三つの勾玉と鴉のような連なった模様が生まれて、ルビアの額と双眸に模様が刻まれた。


 眼前に白銀と漆黒の鴉の幻影に魔命を司るメリアディ様の幻影も現れて消える。


 すると、系統樹としての<筆頭従者長選ばれし眷属>の新しい二十の<筆頭従者長選ばれし眷属>の円の中にルビアの名が一瞬で古代語で刻まれた刹那――。


 周囲の血とルシヴァルの紋章樹をルビアが吸い取ると、ルビアはその場で倒れ込む。そのルビアに寄った。


 ルビアを抱えて、


「大丈夫か、ルビア――」

「は、はい……」


 とルビアは俺の左腕を掴みながら起きた。

 目尻に血管が浮いている。


「ルビア、血を吸うか?」

「……ぁん……」


 と、そうだった、音に敏感になっているんだったな。

 黙って、片膝で床をついて、体勢を屈めながら首を晒した。


「――俺の血を吸え」

「はい……」


 と首に犬歯を当てて、俺の血を吸い取っていく。

 血を吸い終えても、興奮状態が収まらないルビアは、俺の頭をかきむしっては、抱きしめてくる。少し膨らんだ乳房の感触が鼻や頬に得られたが、暫し、好きなようにさせた。

 ルビアの背を軽く叩いてから、


「落ち着いたな」

「……はぃ」


 立ち上がり、アイテムボックスから処女刃を出してルビアに渡した。


「これが、処女刃、早速嵌めてみます」

「おう」

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