千五百九十八話 グルカファントムと別荘のような魔造家の中


「にゃ」


 黒虎(ロロ)が鳴いて鼻先を魔造家とグルカファントムに向け匂いを嗅ぐ。と振り向くように俺を見てきた。


「グルカファントムに挨拶してきていいぞ」

「ンン、にゃ」


 頷いた黒虎(ロロ)は振り返り、尻尾を傘の尾のように立たせながら四肢と前後させノシノシと歩いてグルカファントムに近付く。

 菊門の桃色のお尻さんが可愛い。

 その黒猫(ロロ)は、


「にゃごぉ~」


 と、少し気合いが入った鳴き声で挨拶を行う。

 グルカファントムは耳をぺたんと寝かせ頭を下げて体を小さくした。大きな緑の虹彩と黒い瞳が、相棒を愛らしい上目遣いで見つめてから「……ギュッ」と小さい鳴き声を発した。


 体の大きさをある程度調節できるのか。


 黒虎(ロロ)は、「にゃ~」と鳴いて、小さい黒猫の姿に変化させると、


「ギュァ!?」


 と鳴いたグルカファントムは黒い瞳を散大させて驚いていた。


 両耳と鱗の一部が逆立つように上向かせているし、尻尾の先端から稲妻と炎が放出されていた。

 雷と炎属性もあるのか、驚きの表現はネコ科っぽい。

 驚いたようなリアクションが面白いなぁ。


 尻尾も太さと長さから立派な骨の仙椎(せんつい)と尾椎(びつい)を持ち、それを支え動かす長尾挙筋などの筋肉も太い。


 子猫の黒猫(ロロ)はグルカファントムの前足に頭部を当てて、体を擦り当ててから跳躍を行う。

 グルカファントムの頭部の上に乗っていた。グルカファントムは見上げ、


「ギュォ~」


 と鳴き、口を拡げて桃色の長い舌を見せていた。

 黒猫(ロロ)も下を見て大きい緑と黒い瞳を覗き込んでいる。


 皆が、

 

「グルカファントムちゃん~、よろしく~。わたしはレベッカっていうのよろしく~」

「グルカファントム~わたしはユイ、よろしく」

「グルカファントムちゃん! わたしの名はミスティって言うのよろしくね」

「ん、グルカファントム、わたしの名はエヴァ」

「グルカファントムちゃん、興味深イ、ドラゴンちゃんデスネ! フフ」


 レベッカとユイとエヴァとミスティとクリドススがグルカファントムに近付き挨拶していく。


 すると、グルカファントムはサイレントにゃのような鳴き声を発した?


 と、上顎と下顎を拡げて、口を動かしては綺麗な歯と舌を晒す。

 ドラゴンらしく鋭い歯も多いが、草食動物っぽさもあるのか、奥歯が平たい。


 グルカファントムは口を閉じて瞬きを繰り返しながら皆を見て、エヴァをジッと見る。

 魔導車椅子状態だったエヴァは、骨の足に金属を付着させて両足を造って立っていた。


 そのエヴァにグルカファントムは近付く。

 エヴァは、「ん」とかすかな声を発して人差し指を、そのグルカに伸ばすと、グルカファントムはエヴァの人差し指に鼻先を付けた。

 エヴァは、


「ふふ」


 微笑むと、それを見たグルカファントムは、大きい瞼をゆっくりと閉じる挨拶を返してから、じりじりと後退していた。


 猫と同じなら、瞬きは親愛の情だからエヴァのことが気に入ったのかな。


「初っ端にエヴァの優しさに気付いたかぁ~」

「エヴァは優しいから動物たちにも通じるんだと思う」

「うん、エヴァはテイマーもできる」

「ん」


 エヴァは少し照れたように頬を朱に染めていた。

 

 やや遅れて、ヴィーネとキサラとヴェロニカとメルとベネットとフーとサザーがルビアとボンとエトアとアドリアンヌとベリーズとキーキとシャルドネとアドゥムブラリが、グルカファントムに近付いて、


「「グルカファントムちゃん~よろしくね~」」

「ふふ、あ、今、私を見ました~可愛いドラゴンちゃんのグルカちゃん~、よろしくお願いします~」

「「よろしくお願いしますわ」」

「グルカちゃん、こんにちは、よろしくー、わたしの名はエトアでしゅ!」

「緑と黒の瞳が可愛いですね~」

「おぉ~ヴァルアの騎魔獣とはまた違うな」


 アドゥムブラリの言葉に頷いた。

 グルカファントムはアドゥムブラリの声に、反応し、


「ギュュ~」


 と、鳴いている。


「なんて可愛らしいお目目を持つドラちゃんなのですか! ~私が落札したかった!!!」

 

 シャルドネが興奮している。

 キーキに腕を引っ張られながらもグルカファントムに近付こうとしていた。


 グルカファントムは、


「ギュゥッパッ」


 と、鳴いて歯を晒しつつ笑う?

 面白い。


「愛称はグルカちゃん、ファントムちゃん?」

「ふふ、どちらも可愛いですから、好きなように呼びましょう」


 メルの言葉に皆が頷き、ヴィーネが、


「そうですね、グルカも、ファントムもどちらも名が素敵ですから好きなように呼びましょう」


 グルカファントムはヴィーネとメルとヴェロニカたちにも頭部を寄せて甘えていた。可愛い。


「ギュゥ~」

「ふふ、わたしにも甘えてくれるのですね、嬉しい」

「可愛い~」

 

 メルもヴェロニカも嬉しそうだ。

 キサラもグルカファントムの頭部を撫でていた。

 そのキサラは、


「ファントムちゃん、わたしはキサラです、よろしくお願いします」

「ギュォ~」


 ちゃんと返事をするのは可愛い。

 キサラは、


「シュウヤ様、ファントムちゃんは魔造家を仕舞っても外に出したままが可能なのでしょうか」

「ギュ?」


 疑問げに鳴くグルカファントムは俺を見てきた。

 

「たぶん、可能だと思う。そして、この魔造家のマスター鍵が近くにあればグルカファントムはいつでも呼び出せるはず。勿論、魔造家も、このマスター鍵に魔力を込めたら、たぶん一瞬でキーホルダーと化すだろう」


 と鍵を皆に見せた。

 鍵には俺の名が刻まれている。


「「「おぉ」」」

「それは便利ですね、ご主人様の名が刻まれている鍵、魔造家ごとグルカファントムと契約した証拠でしょうか」

「そうだろうな、どこでも出せるハウスが魔造家だ」

「はい」


 桃色髪のアウローラの御姫様が使用していた魔造家はテントだったから、この品がいかに高級品か、貴重品なのか分かる。


「庭に、異界に流れている川と繋がった池付きの一軒家と、魔造虎のようなドラゴン付きとか、凄いアイテム! でも、だれが出品したのか氣になってくるわ」


 レベッカの言葉に皆が、


「「「たしかに」」」

「「「それはたしかに」」」


 と反応していた。

 たしかに、それはそうだよな。

 珍しい品を出品した者もそれなりの者のはず。


「「ふふふ」」


 と、意味ありげに微笑むアドリアンヌとシキ。


「ふふ~♪」

「ふっ」


 そして、シャルドネやレザライサたちやギュルブンも笑顔を見せていた。

 あぁ、盟主たちは出品する側でもあるんだったな。そして、ガロンは呆然としたまま皆の会話に入らず、仲間が全員死んだんだ当然か。過去に【月の残骸】の時に絡まれているが、今となってはな、同情はしてしまう。が、それはそれ、キュベラスを見て、

 

「キュベラス、セーフハウスとして出現させた魔造家だが、スノードーム状のアイテムに戻せるんだろう?」

「はい、一瞬です、戻しますか?」

「おう、戻してから、また展開しといてもらう。そして、闇神リヴォグラフ側がここに急襲をしかけてきたら直ぐに仕舞ってくれていい」

「はい、【闇神異形軍】の動きなら大丈夫と思いますが、では、一度仕舞います――」


 キュベラスは浮遊する。ローブは胸元が開けるタイプ。

 胸の膨らみと腰のくびれは魅惑的だ。

 そのキュベラスは浮遊しながら展開させていた魔造家に近付く。

 細長い左腕を翳す。

 左手首と甲に嵌めているお洒落な装備が氣になった。

 と、左の掌の上にハート状のクリスタルを出現。


 そのクリスタルの上部にだけ、富士山の雪化粧のように粉雪のような魔力が降っては積もっており、周囲に雪のような魔力粒子も散っていた。お洒落だ。と、一瞬で魔造家をそのハート状のクリスタルに吸い寄せるとスノードームのアイテムに変化、元通りか。魔造家は消える。


「「おぉ」」


 元の土地は土と苔のような草が生えていた。

 境界線の向こうから此方側の異界に、川のような液体の流れがある。それが、どんな水なのか氣になった。あの川のような液体の中には未知の次元魚が泳いでいる? そういえば、巨大な深海魚のようなモンスターは【幻瞑暗黒回廊】に居たからなぁ~。


 そんなことを考えつつもヴィーネたちに、


「魔造家は造るのに時空属性が必要なんだっけか?」

「はい、職人としての腕前、スキルは何種類か必要で、素材も貴重な物ばかりと聞いています」

「オードバリー家は有名ね」

「……魔造家の未知のアイテムを直に見られるのは、楽しいものだ」


 ファルス殿下の発言に皆が頷いていた。


「はい、後、キュベラスもアイテム持ちよねぇ」

「ふふ、シュウヤ様たちがお望みならば地下オークションに出品されるような貴重なアイテムを差し上げられます」

「「おぉ~」」

「黒の預言者(ブラック・プロフェット)のキュベラスだから、相当な物がありそう……」

「ふふ、素晴らしいですわ、私のように、すべてをシュウヤ様に捧げる想いのようですわね……」


 と、クナが怪しく瞳を輝かせながら語る。

 俺を見たクナはウィンクをしてくれた。

 キュベラスは、微かに頷いて、クナを見てからキサラを見て、


「はい、【闇の教団ハデス】の救世主はシュウヤ様です……」


 と発言。


「気持ちは分かりますが、随分と、殊勝ですわねぇ」


 アドリアンヌの言葉にキュベラスは、


「当然です、戦いの後、私を殺せた。それをせず私の言葉を信じ、【闇の教団ハデス】の皆を仲間にし、闇神ハデス様もシュウヤ様を信じてバフラ・マフディの想いを受け継いでくださった……更に、わたしたちを、こき使っていたルキヴェロススも倒してくださった。そして、今、クリムと組んでいた【御九星集団】のキーラも倒してくださった――」


 と、発言し、片膝の頭で地面を突く。

 アドリアンヌは、


「ふふ、言われてみたら納得ですわね、【闇の枢軸会議】も瓦解に近いですし、魔界セブドラの神々に協力し、傷場の争いも控えている……そして、闇神リヴォグラフの子飼いを殺し続けている、あんっ……あぁぁ……重要なそのような事象を考えると心が滾って……シュウヤ様の熱い体がほしくなりますわ、ぐふふ――」


 と、発言し、近付いて耳元で、


「シキもシュウヤ様の下に付くようですから、【星の集い】は同等としても、私個人としては、永遠にシュウヤ様に付いていきたいと考えてます……帝国に帰らずメル様の傍にいても宜しいです?」


 と熱い感情を俺に見せるように聞いてきた。

 黄金の仮面越しに見えている蒼と金色の瞳は揺れている。

 少し遠目の位置で見ているホワインを見て、


「ホワインなどの部下の意見を聞いてからだと思うが……」

「ふふ、それは、はい。大丈夫ですわ」


 アドリアンヌは自らの気持ちを俺だけでなく皆に示すように、豊かな胸を右肩と二の腕に押し付けてくれた。アドリアンヌのおっぱいは中々の大きさだ。

 一気に鼻の下が伸びた。

 

 直ぐに皆が、


「ちょっ、アドリアンヌもシュウヤの眷族になりたい流れ? その流れは少し先だからね、まったく……」


 と、レベッカがアドリアンヌを押しのけた。

 右腕を取り戻して、ボクシングの勝利者を祝う審判のように俺の右腕を上にあげて、ヴィーネたちに見せていた。<筆頭従者長(選ばれし眷属)>たちから拍手が起きている。


 その反応に笑った。笑顔のキサラが、


「ふふ、はい、ナロミヴァスが先ですし、エラリエースとエトアとラムーとシャナも控えています。<筆頭従者長(選ばれし眷属)>と<従者長>の眷族には暫くは成れませんね」

「あぁ、そうだな。だが、<光魔の王笏>などが進化するかもだから、皆をスムーズに眷族に迎えられるかもしれない」

「昔は気絶をしたけど同時にとか?」

「あぁ、不可能ではないような氣がする」

「「なるほど」」

 皆も薄々<血魔力>の進化を感じたかな。

 先程使用した<霊血の泉>を体感しているからな。

 ファーミリアは<霊血の泉>の時は、避けていたように分からないと思うが、血魔剣を用いた眷族化か、その前に吸血神ルグナド様に直に眷族に迎え入れたいと言いに会っておきたいところ、そこでキュベラスを見て、


「キュベラス、立ってくれ。そして、セーフハウスをもう一度展開しといてくれ」

「はい!」


 キュベラスは立ち上がり、もう一度スノードームを放る。

 と先程と同じ位置に、庭と鍛冶部屋が付いた一軒家を生み出していた。

 

 良し。さて、そこでグルカファントムを見て、


「グルカファントム、俺の名はシュウヤ、よろしく頼む」


 グルカファントムは見上げて上目遣いで俺を見てから……。

 お辞儀をするように姿勢を下げ「ギュッ」とかすかな鳴き声を発し、尻尾を立てていた。

 尻尾の先端から炎を発しつつトコトコと歩いてくる。

 頭部と体を右足の膝に当ててきた。目を閉じながら頭部を傾けて、猫のように、己の耳元を、俺の脛や脹ら脛に擦り付けてきた。甘えてくれる、可愛い。その様子を見ていた皆が興奮して、


「「「可愛すぎる~」」」

「カワイスギ!」


 レベッカとエトアとサラとクリドススまでもが大興奮。

 グルカファントムを触っていないが、皆触りたそうだ。

 グルカファントムに、


「グルカファントム、皆が触りたいようだが、触っていいかな」


 と、聞くと、「ギュゥ~」と鳴いたグルカファントムは皆に向け胸元をむせるポーズを取った。可愛い。

 

「ぎゅぅっぱ」

 と、面白い声を発したグルカファントムは、触っていいと了承。


「皆、お触りOKが出た」

「「「「はい!」」」」

「「わぁぁぁ」」

「ちょ、わたしも触りたい~~」

「「「――グルカちゃゅぁぁん!」」」

「「うふふ」」


 グルカファントムは皆のあまりの勢いの良さに、驚いたように黒い瞳を大きくしては、「ギュゥ~」と鳴きながら二つの太めな後ろ脚で後退る。

 その太めな後ろ脚が可愛かった。

 皆、「「あぅ~」」と触ろうとしていたが、止めて、つんのめり気味に止まった。

 その行動が面白い。さて、グルカファントムに、


「グルカファントム~この鍵を意識してアイテム化を意識すれば魔造虎のようにアイテムと成るんだろう?」


 グルカファントムは両耳をピクピクと動かし、ピクンッと強めな動きで上向かせると、両翼をワシャワシャと動かし「――ギュゥ!」『そうだ』と言わんばかりに鳴いていた。

 ドラゴンらしく両翼を拡げる。

 と、少し浮遊して、皆から離れて迂回するように俺の傍に飛来――。

 可愛いすぎる。そのグルカファントムの頭部に乗っている黒猫(ロロ)も楽しそうに、「にゃぁ~」と鳴いていた。


 生き物としての、


「ぐぅぅ、きゅるるるぅ」


 独特の肺呼吸か不明だが、呼吸音が愛しい。

 そのグルカファントムは鼻先を向けてきたから……。

 俺もエヴァのように人差し指を鼻先に当てた――。

 ウンチ君を突くようなツンツクツンはしない。

 鼻頭は、少ししっとりしていて冷たい。

 二つの鼻腔がフガフガと拡がり窄んで、それが非常に可愛らしかった。

 

「グルカファントム、一時的にアイテムに変化してくれるか?」

「ギュゥ~ガォ~」


 グルカファントムは頷いて後ろ脚で立つように上向いた。

 少し胸を張る仕種を取る。

 乗っていた黒猫(ロロ)が「ンン」と鳴いて地面に降りて、俺の足に猫パンチをしていた。そんな黒猫(ロロ)をレベッカが捕まえる。

「ロロっ子をとったど~」と宣言しながら黒猫(ロロ)の頭部にキスしていた。

 

 更に、お腹にぶぅぅ~と息を吹きかけられて猫吸いを喰らう黒猫(ロロ)。

 黒猫(ロロ)はでれーんとして、なすがまま。

「「ふふ」」

「ロロちゃん~」

「グルカちゃんを触れなかったから、ロロちゃんの可愛さで、もふもふパワーを補充するんだから」

「「ふふ、はい~」」


 もふもふパワーってのがあるらしい、笑った。皆は黒猫(ロロ)を撫でまくる。

 黒猫(ロロ)も嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らしていた。


「では、グルカファントムを一時的にアイテムに戻す」

「「はい」」

 

 グルカファントムの緑と黒い瞳を見ながら――。

 〝グルカファントム、アイテムに戻れ〟と、強く念じながら鍵に魔力を込める。

 刹那、グルカファントムは魔力粒子となって鍵に付く。

 それが瞬く間にドラゴンのキーホルダーのフィギアと成った。


「凄い~一瞬」

「アイテム化なら持ち運びが便利!」

「魔造虎と同じような感じね~」

「あぁ」

「強いならヴァルアの騎魔獣と一緒に戦えますね」

「あぁ、まぁ追々だな、戦うのは俺たちだけで済ませたい」

「ん、優しい」

「「ふふ、はい」」

 エヴァが抱きついて頬を胸に預けてくれた。

 可愛いエヴァの温もりを得ていると、俺の右腕を持つレベッカが、

「その鍵があれば、他の人でも運用は可能なの?」


 そのレベッカの言葉に、


「鍵だけがあっても、たぶんだめだと思う」

「そっか」

「少し魔造家の中を見てみよう」

「「はい」」

「ん、楽しみ」

「にゃお~」


 皆から解放された相棒と、その皆を連れて魔造家の玄関の門を潜り、幅広な軒天を見ながら入り隅と黒い玄関扉の前にまで移動。

 玄関扉の鍵穴にマスター鍵をさし込むと自然と黒い玄関扉が光を帯びていくまま、鍵を回した。

 鍵に付いているグルカファントムのキーホルダーが輝き、キーホルダーから出た炎が玄関扉に当たって、印のような彩りが増えた。カチャッと音が扉の内部から数度開いた。別の鍵も扉の中にはあるようだな。


「「わぁ」」

「ふふ、模様も鍵のキーになっている?」

「そうかもです」

「うん、鍵がこれで外れるなんてお洒落~」

「「はい」」


 自動的に扉が開き始めた。急いで鍵を外し、戦闘型デバイスのアイテムボックスに仕舞う。

 開けた玄関は広く、涼しい風が流れていた。下駄箱はなく、魔力を帯びた沓拭マットが置かれている。

 廊下は短く傾斜しており、その先にはエントランスホールのような大広間が広がっていた。

 中央には大きなソファ、円卓、複数の椅子が配置されている。本棚と一緒のお洒落なサイドテーブルとふりかけのような粉が入った瓶が並ぶ、ヨーヨーとトランプのような玩具もある。

 右側にはキッチンがあり、左側の壁には棚が並んでいた。

 花瓶の花は生きている不思議な花か?

 香具と魔力を帯びたオブジェと浮いている掃除機のような魔導具が存在していた。

 大広間の奥には縁側があり、その先には広い庭が見える。縁側の廊下は工房部屋に続いているようだ。

 掃除機のような魔導具は小さくなってキッチン側に向かう。

 

「エンチャント~」

「ンンン」


 ボンと黒猫(ロロ)が大広間を楽しそうに駆けていく。


「魔導具が浮いていたし、アギトナリラのような管理人がいたりする?」

「居るかも知れない。妖精のような存在が棲んでいるかもな」

「わぁ~面白いです」

「はい!」


 ルビアとエトアは仲良くなったか。共に大広間を歩いて小道具を見ている。


「ふふ、いきなり別荘地をゲットした氣分ねぇ」

「そうなるけど、異界の外は【幻瞑暗黒回廊】でしょ? 闇神リヴォグラフ側と【魔術総武会】が戦っているし、いつ何時、ここに乗り込んでくるか……」


 先程も闇神リヴォグラフの赤い双眸が出現していたからな。

 とはいえ、【幻瞑暗黒回廊】に隣接している異空間の基地化は便利だ。


「あぁ、長居はしない。俺たちを追跡している存在の可能性もある。が、サケルナートを失ったことは向こう側には痛すぎるようだな、案外、ここは大丈夫なのかも知れない」


 と、灯台下暗し的な発想で皆に意見をしてみた。

 キュベラスは天上から庭の様子を眺めてから頷いている。

 ヴィーネとクナも頷いていた。

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