第28話 復讐は1日にしてはならず。

「コラ!」


 優心さんが、俺の頭を叩く。

 ってか、何処から現れた?


「なに?」


「コラ!ダメ、昴!」


 そして、もういっかい俺の頭を叩く。


「な、なに?」


「今、昴のマイナスオーラが飛んできたから叩きに来たの」


「マイナスオーラ?」


「今、ダメなこと考えようとしていたでしょう?」


「ダメなことってなに?」


 万桜さんが、首を傾げている。


「……なんにも考えてないよ」


 俺は、そう言ってごまかした。

 確かに俺は嫌な過去を思い出そうとした。

 だから、なんだというのだ?


「ほら、今も考えようとしてるじゃん」


 優心さんが、もういっぱつ殴ろうとしてきたので俺はそれを手で受け止めた。


「別にいいじゃん。

 何を考えようと……

 思想の自由ってやつだよ」


 俺が、そう言うと優心さんが俺を睨む。


「ダメ!

 絶対にダメ!

 私の前で、不幸は禁止!」


 優心さんの目が涙目になっているように見えた。

 なんかバツが悪い。


「……昴君。

 ちょっとこっちの用事を手伝ってよ」


 亜金君が、そう言って俺の手を引っ張った。

 なんの用事だろう……?

 亜金君と、結構な距離を歩いた。


「用事って何?」


 連れて来られたのは、森の奥……


「ここまでくれば大丈夫」


「何が?」


 今の俺は少し機嫌が悪いっぽい。


「ここは、魔法が一切使えない森なんだ。

 通称オリハルコンの森」


「魔法?なんのつもり?」


 俺がそう言うと亜金君はため息混じりに言葉を放つ。


「ふぅ。

 優心さんの心を読む魔法も届かないんだ。

 ここなら自由になんでも考えれるよ」


「え?」


 俺は少し驚く。


「あんまり前世のことは考えないほうがいいよ」


「前世?

 あ……

 そうか、亜金君も前世の記憶が残っているんだっけ?」


「うん。

 と言うか、この世界では前世が残っている人って結構いるんだ。

 知ってるかもしれないけれど……」


「ああ。

 なんか、そんな感じの話を聞いたことある」


「それでね、その人たちに共通して言えること。

 それは、前世ではあまりいい思いをしていなかったってことなんだ」


 前世でいい思いか……

 確かにしてはいないな。

 と言うか前世の死に方って散々なモノだった気が……

 藁で魔王に喧嘩売ったんだっけ?

 それで、この世界に飛ばされた。

 むしろ死んだのか飛ばされたのかさえわからない。


「そうだな。

 前世は、苦痛でしかなかった」


「そう。

 その未練が、現世での強さを発揮するんだ」


 未練か……


「でも、俺は強くないぞ?」


「でも、防御力や魔法耐性は凄く高いと思う」


「でも、それだけだ……」


「そっか……」


「ああ……」


 暫く沈黙が続く。

 亜金君も俺も何を話していいのかわからないのかもしれない。


「昴君は前世で、復讐とか考えたことある?」


「ああ……

 他人を使って復讐したことがある。

 だけど、そこには何もうまれなかった。

 残ったのは虚しさだけだ」


「そっか……」


「復讐は一日してならず。

 一日もしてはならず……ってやつだな」


「それは前世の記憶ってやつ?」


「ちょっと違うがな」


「もしかして、ローマは一日にして成らずってやつ?」


「知っているのか?」


 俺のは思わず声を出してしまった。


「記憶にあるよ。

 どんなことでも努力しなければ成し遂げることができないみたいなやつでしょ?」


「ああ。

 そうだったな……」


 そこまでの意味は知らなかったけど……

 適当な語呂合わせで言ってみただけだったけど……


「俺の記憶の中に昴君の記憶と重なっているモノがあるかもだね」


「そうだな……」


 俺の心のなかが少し暖かくなった気がした。


「気持ちは晴れた?」


「少しな……」


「なら、良かった。

 つらいこと悲しいことはここで考えるといいよ。

 俺が小さい頃から使っている秘密基地なんだ」


「いいのか?

 そんなことを俺に教えて……」


「いいよ。

 ここは広いしね。

 この森に入ってしまえば出逢うことのほうが難しいよ」


「って、それってこの森からの脱出も難しいんじゃ……?」


「出たいって念じれば出してもらえるよ。

 入るときは何も考えなくてもいいし何かを考えてもいい」


「そうなのか?」


「うん。

 試しに念じてみて」


 俺は、亜金君に言われるままに念じてみた。

 出してくれ……

 すると一瞬で景色が変わり俺は森の外にいた。

 すぐに亜金君が現れる。


「出てこれたみたいだね。

 出口が決まってこの場所だから安心してここに来てね」


 亜金君がニッコリと笑う。


「ああ……

 ありがとうな」


 俺は、小さく頭を下げた。

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