独特センスな共通バッジ

 翌日、休日の朝っぱらから俺は地下図書館にいた。

「調査してきてくれ、こっちはこっちで調べておく」

「調査ってどうすんだよ、あの三人に直接聞くのか?」

「昨日の三人の会社はもう分かっている。襟に同じバッジがついていた」

 ひとねはパソコンの画面を俺に向ける。バッジは中々独特な形をしていて、お世辞にもセンスがいいとは言えない。

「この会社の社員証というわけではないらしい、恐らく部署専用と言ったものだろう」

「そんなものがあるのか?」

「普通はない、大方その部署の偉い人の提案だろう……ま、理由はなんでもいいんだ」

 ひとねはパソコンを元の位置に戻す。

「重要なのはこのバッジが付いている人はあの三人の関係者だという事だ」

「まあ、そうだろうな」

「ならばその人の話を聞けばいい」

 いやいや、平然と言ってるけど……

「なんて質問すんだよ、いきなり行って『あの人は慢心ですか?』って聞くのか?」

「そんな直接的な事は頼まない。君の探偵的能力に期待はしていない」

 ひとねはパソコンを少し弄ってまた俺の方に向ける。

「これを活用するんだ」

 画面に映し出されているのは不特定多数の人が見れる短文をボソッと呟くというアプリ『bostter』だ。

『ホナゴ』や『ディーク』など、この『bostter』内で有名人のようになった人も多い。

「……どう活用すんだよ」

「君にはさっきのバッジを付けている人のアカウントを探ってきて貰おうと思うんだ。尾行して電車とかで後ろからコソッとみればいい」

「……なるほど、金は支給されるんだろうな」

 電車に乗るのにも金はいる。何人もの人を尾行するのだったら尚更だ。

「円卓線を使えばいい、幸いその会社の最寄り駅は円卓線にある」

「ああ、なるほど」

 円卓線は円形状に一周する形の路線だ。

 つまり一駅分の切符でずっと乗れるという事だ。……いや、よろしくない事だけど。

 つまり俺は社員が帰りそうな時間に円卓線に乗って、その人の『bostter』のアカウントを覗き見すればいいってわけか。

 正直面倒だけど……頼まれたしな。

「わかった。来週の休みにやっておく」

「よろしく、お人好しさん」

 誰がお人好しだ、誰が。

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