明確なる説

 推理を再開すべきか、謎としておくべきか。

 謎としておけば彼は確実に死ぬ、しかし……死ぬよりも辛いほど重い記憶もある。それを私は痛いほどに知っている。

 いっそこのまま彼の重荷を外してあげた方が……

「どうすればいい……いや」

 迷う時間はない。彼の気持ちを考えてしまってはキリがない。

 こういう時、私は考え方を変える。

『彼の為にはどうするべきか』ではなく『私はどうしたいか』に変えるのだ。

 私はどうしたいか、彼には……生きていて欲しい。

 自分の意思で死に向かっていた私を生に向けさせた彼、今度は私が彼の向かう先を変える番だ。

「……よし」

 頰を叩いて頭を切り替える。推理再開だ。

 携帯を開いて蜃機楼事件の最後に届いた、元に戻った犯罪予告サイトの写真を見る。

『・四月二十日に烏谷ハイランドで殺人をする。

 ・五月二日に皆坂デパートに放火をする

 ・六月七日に□l□lで通り魔をする

 ・六月十日にカララスーパーで万引きする

 ・七月三日にミナナキで大量殺人をする』

 携帯を開いたまま父親の行った場所を書いたチラシを探す。

「……あれ」

 チラシが多い。確かバイクカナミチのチラシだったはず……

「これはミキリドライブ……これは□l□lのチラシ」

発行日はそれぞれ五月二十八日と六月五日。

 目的のチラシは見つけた。しかし他に見たチラシが……私の仮説の正しさをめる。

 チラシの裏を見て、私は確信した

『五月二十九日・ミキリドライブ

 六月一日・バイクカナミチ

 六月七日・□l□l』

 父親が死んだのは□l□l、母親は皆坂デパート。

 日付は六月八日と五月二日

「謎は……解けた」

 最悪の仮説は……仮説では無くなった。

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