雨の日になると、駅まで迎えに来る父親。
それは一見すると何でもない家族の日常なのですが、読み進めるうちに、その「ちょっとしたこと」の見え方が少しずつ変わっていきます。
特に印象的だったのは、父親が自分の気持ちをほとんど言葉にしないこと。
だからこそ、毎回差し出される傘や何気ない行動から、父と子の間にある距離や感情が静かに伝わってきました。
大きな事件も、劇的な変化もありません。
それでも最後まで読むと、最初からそこにあった一本の傘が、少し違ったものに見えてきます。
短い物語の中に、家族だからこその煩わしさと優しさが詰まった掌編でした。