さんにんの家族

りゅう

日常?

 さんにんの家族が仲良く食卓を囲む。


 息子が今日の出来事を楽しく話す

 夫婦が笑って頷きはなしを聞く。


 絵にかいたような情景に折り目が付く


 閉じられるように中心から外側へ向け

 暗い闇が広がる。


 そして、世界が閉じられた。


 閉じた世界を上書きするように

 視界にはシミだらけの表紙が映る。


 「おなか、空いた」


 シミだらけの表紙を眺め

 腹に手をあてる少年がいた。


 少年を埋めるように

 まわりにはゴミが溢れていた。

 

 そんな少年の背後からは

 わずかばかりの光が差す。


 光から離れるように

 少年は四つん這いで進む。


 ゴミをかき分け

 目的の物を探す。


 ガサガサという音が止まる。


 少年は見つけたものを

 拾い上げる。


 砂塵の中から探し物を見つけたように

 嬉しそうな顔を浮かべる。


 手に持っていたのは、

 手のひらサイズの袋だ。


 袋を開きなかみを見ず

 勢いよく手を突っ込む。


 嬉しそうだった顔が

 暗くなる。


 手を伸ばした袋の底には

 穴があったのだ。


 現実を受け入れられないのか

 少年は袋の底を覗く。


 底にあったのは、

 反対側の景色だけだった。


 少年がさらに絶望する。


 そんな少年をバカにするように

 よこを虫が通り過ぎる。

 

 肥え太った体の大きな虫だ。


 「…………おなか

 …………すいた」


 闇のなか少年が

 腹を抑えていると音がした。


 扉が開く音だ。


 すぐに振り返り

 光が差す方を向く。


 少年が光に近づくと

 声が聞こえてくる。


 「あれ?子供いなかった?」


 「隣の部屋で寝てるんでしょ」


 男女の何でもないやりとりだ。


 少年は彼らと自分を隔てる

 扉を少しだけ開く。


 その先には甘い声をあげ

 男に寄りかかる母の姿。


 父でない男と楽しそうな母を

 少年は不思議に見つめる。


 「あれ?子供いるじゃん」


 「は?何見てるの寝てなさい」


 ははの怒声に驚き

 少年は闇の中へ戻る。


 歩いていると少年の足に

 一冊の本があたる。


 シミだらけの汚い本だった。


 その本を拾い上げ

 本を抱きしめる。


 「おなか、すいた」


 少年の目から涙が落ち

 落涙は本に落ち広がる。


 本に影のような輪郭をつくり

 新たなシミをつくる。


 父親が彼の前から消えてから

 今日までずっとこうだ。


 むかしを懐かしむように

 少年は本を開いてはシミを増やす。


 過去を破り捨て

 快楽に埋没する母。


 過去を本に閉じ込め

 開くたびに幸せを思い出す少年。


 日常は人それぞれ?


 そう言って笑う人もいるが、

 彼らの日常は、これだ。


 そんなふたりを笑うように

 男の声が二人の間に響く。

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さんにんの家族 りゅう @isagawaryu

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