一本の鼻毛を、ただ測り続ける男。
七・二ミリ。変化なし。
最初はどう考えても笑うための題材なのに、
読み終わる頃には、その「変化なし」という言葉がまったく違って見えました。
少女はずっと「大丈夫」と言い続けます。
誰にも頼らず、一人で抱えて、とうとう「助けて」と口にする。
そこで鼻毛男は、励ましの言葉も人生訓も口にしません。
ただ定規を差し出して、
「測ってみるか」
と言う。
この一言がとても好きでした。
何も解決していない。
鼻毛も七・二ミリのまま。
それでも、少女は誰かと同じものを見ることができた。
そして最後の
「……明日も、測っていい?」
ここで胸を掴まれました。
変化しない鼻毛を描きながら、
人がほんの少しだけ前へ進む瞬間を描いている。
鼻毛でこんな気持ちにさせられるとは思いませんでした。
静かで、優しくて、妙に忘れられない短編です。
題名だけを見ると奇抜なコメディを想像しますが、読んでみると「助けて」と言えない少女の心を描いた、静かで優しい物語でした。
父を亡くし、借金を返すために働き続け、店も母との暮らしも失った少女は、それでも何度も「大丈夫」と自分に言い聞かせます。そんな彼女がとうとう鼻毛男の服をつかみ、「助けて」と口にする場面が特に印象的でした。男は励ましの言葉を並べるのではなく、いつもの定規を差し出して「測ってみるか」と言います。少女が涙を拭きながら七・二ミリの鼻毛を測り、「変化なし」と記録する。その何でもない共同作業が、ひとりで背負い続けてきた少女にとって初めて誰かと重荷を分ける時間になっています。
鼻毛という可笑しな題材を最後まで変えず、それを人と人をつなぐ小さな救いに変えてしまうところが素敵でした。笑える題名の奥に、誰かに助けを求めることの大切さが静かに残る一作です。