第六話 戴冠の翌日

軍議の翌朝、俺はまず白い孔雀について調べた。


三年後、兄が俺たちを南の内庭へ誘い出すために使ったものだ。昨日の兄は、初めて聞いた珍しい鳥の話をするようにレオへ約束していた。もしこの時点から一家を殺す準備を始めていたのなら、どこかに兄の命令が残っているかもしれない。


ところが、王宮の鳥舎を預かる役人が出してきた購入記録には、父王の署名があった。南方の商人から白孔雀のつがいを買い入れる話は四か月前から進んでおり、兄が王になるより先に代金の半分まで支払われている。少なくとも、俺たちを庭へ誘うために兄が用意した鳥ではなかった。


疑いが晴れたというより、手がかりにならなかった。


次に向かったのは、軍務院の人事局だった。


ロナルド・ベインの記録を見たいと言うと、役人は理由を尋ねることもなく分厚い綴りを持ってきた。三十六歳。北部の小領主の次男。十八で軍へ入り、二度の国境戦に参加している。華々しい武勲はないが、命令違反も部下への暴行もなく、補給の管理と隊の統率に優れるという評価だった。東部軍への転属案も、そうした堅実さを買われてのものらしい。


その転属案には、太い線が一本引かれていた。線の脇には、兄の筆跡で短い指示がある。


『東部への転属を認めず。王宮守備隊次席指揮官として召す』


日付は、戴冠式の翌日だった。


「この変更について、軍務卿から何か説明はあったか」

「いいえ、殿下。陛下から直接下りた御指示です」

「兄上は、それ以前にベインと会っているのか」


役人は別の記録も調べたが、面会の記録は一度もなかった。父王の時代、ロナルドはほとんど地方を離れておらず、兄が軍の視察で北部へ行った時期とも重ならない。兄が本人を知る機会は、少なくとも公の記録にはなかった。


それでも兄は、王になった翌日にロナルドを名指しし、東部軍から王宮へ進路を変えさせている。


俺はその足で、王都郊外の兵営へ向かった。


ロナルドは、王宮へ移る前の引き継ぎをしているところだった。訓練場の端で部下の報告を聞いていたが、俺を見つけるとすぐに話を切り上げ、姿勢を正した。記憶にある三年後より階級章は二つ下で、髪にもまだ白いものはない。それでも、左の眉からこめかみにかけて走る古い傷は同じだった。あの日、血で滲んだ視界の向こうに見えた王宮守備隊の指揮官も、この傷を持っていた。


「王弟殿下。こちらまでお越しになるとは思いませんでした」

「東部へ行く予定だったそうだな」

「はい。私もそのつもりで準備しておりましたが、昨日になって王宮守備隊へ出頭せよと命じられました」

「兄上と面識は?」

「ございません。てっきり殿下が御推挙くださったものと」

「俺ではない」


ロナルドは意外そうにしたあと、少し困った顔で笑った。


「では、なぜ私なのでしょう。王宮勤めの経験もなく、宮廷の作法にも疎い男です」


俺が知りたいと答えるわけにもいかず、訓練場へ目を向けた。隊列を組み直している兵たちの動きはよく、怒鳴らなくても指示が行き渡っている。人事記録の評価どおり、派手さはなくても部下を扱う力はある。


「王宮へ入れば、軍の規則より王命が近くなる。命令に疑問を覚えたとき、お前ならどうする」


唐突な問いにも、ロナルドは笑わなかった。


「まず、命令の意図を確認いたします」

「それでも実行せよと言われたら?」

「国法と軍規に反しない限り、従います」

「反していたら」

「従いません」


迷いのない返事だった。俺はさらに尋ねかけた。武器を持たない女と子供へ弓を向けろと命じられても同じことが言えるのか、と。しかし、今のロナルドへそれを問うのは、答えを確かめることにはならない。この三年間に何が起きるか分からないのは、彼も同じなのだ。


黙った俺を見て、ロナルドが逆に尋ねた。


「殿下は、王命であれば何にでも従われますか」


今度は俺が答えられなかった。俺は昨日まで、まだ何もしていない王を殺すべきか考えていた。法や軍規を口にして他人を測れるほど、自分の立つ場所も確かではない。


「妙なことを聞いた。忘れてくれ」

「承知いたしました」


帰り際、彼はふと思い出したように言った。


「殿下。北峡谷では、私の隊を見捨てずにいてくださったこと、今も感謝しております。王宮へ移っても、殿下の御名を汚すような真似はいたしません」


俺は頷くことしかできなかった。


白い孔雀は、兄が用意したものではなかった。ロナルドもまた、今は命令の正しさを自分で考える、ごくまともな軍人に見える。


だが兄は、即位した翌日、まだ会ったこともないその男を、三年後に王宮の兵を動かすことになる場所へ呼び寄せていた。


偶然と言うには、あまりに正確だった。

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