一見すると「落とし物を拾っただけ」の話が、少しずつ不穏な意味を帯びていく構成が巧いホラー掌編。特に、住所付きの鍵、誰かに供えられた花束、そして「正当に自分のもの」という主人公の小さな欲が、逃げ場のない恐怖へ繋がっていくのが印象的です。最後に残るのは、怪異そのもの以上に「知らず知らず怪異の条件を満たしてしまう怖さ」。そして何度でも繰り返される「鍵を探す」という執念が、嫌な余韻を残します。
……と、ここまでは普通のホラーですが、解説編の最後の一文がぐっと深い後味の悪さとしてしみわたりました。最高です。