「過剰な正しさ」が極まった世界を描く、ブラックユーモア溢れるSFディストピアコメディの傑作です!
星新一のショートショートのような切れ味と、筒井康隆のような狂気的風刺が融合した、読後の爽快感(と少しの苦笑い)がたまりません。
物語の舞台は、タバコに続いて「酒」までもが法律で完全禁止された日本。
「文化だからといって健康被害を許容してよいのか」の一言で文化がすり潰され、居酒屋は「居食屋」、バーは「夜間会話施設」と言い換えられる徹底した言葉狩り。人々は互いの健康を監視し合い、挨拶は「お元気で」から「健康で!」へと変わる……。
この「ありそう(?)で嫌すぎる過剰健康社会」のディテール作込がとにかく秀逸で、開始数行で一気に物語に引き込まれます。
そして何より最高なのが、成り行きで「最後の酔煙者(※新語)」として指名手配されてしまう主人公の冷めた語り口。
大げさに国家を揺るがす大事件に発展していく中で、彼が抱くのは壮大な反骨精神などではなく、ただただ「自分の身体くらい、自分で少し不健康にしてもいいと思ってるだけ」という等身大のささやかな抵抗。
約1万人の警察に包囲されながら「ポイ捨てはダメだろ!」「健康になりましょう!」「やかましいわ!」とやり合う山狩りのシーンは腹筋崩壊必至です。
最高裁まで巻き込んだ大騒動の末に提示される皮肉なオチ、そしてラストの「掌返し」から繋がる最終行の美しすぎる伏線回収。
「他人のため」「健康のため」という正義の押し売りに対する強烈なアンチテーゼでありながら、説教臭さはゼロ。純粋にエンタメとして笑って弾けられる素晴らしい一作です。
自由と酒とタバコ(と不健康)を愛するすべての人へ。超オススメです!
飲酒と喫煙が法的に全面禁止となってしまった近未来の日本で、下らない法律なんかクソくらえ!と思っている一般人の主人公。
軽率な行動が原因で、彼自身の運命はあらぬ方向に転がっていき……というブラックジョークSF作品。
あらゆることに規制や配慮が叫ばれる現代社会の行き着く先を痛烈に皮肉っており、こんな極端な社会あり得ないと思いつつも「でももしかしたら……」をどこかで考えてしまいます。
主人公の小気味良い語り口によってテンポ良く読み進めることができ、星新一作品のような面白さがある快作です。
煙草片手に缶ビール一杯という小さな幸せは、文字通り"犯罪的な"幸福なのかも知れません。