刺さる文体でしたね。カッコイイ。
『夜明けを、泳げ』という題名から、もう格好いい。
3話時点のレビューです。
東京湾岸の倉庫で目覚め、海を眺め、身なりを整え、決まった手順で朝食を作る。ひとつひとつの所作が映像のように浮かび、星野リクトという男の美意識や生き方まで伝わってきます。
ダージリンとロイヤルコペンハーゲンを愛する一方で、携帯ガスコンロと鉄のスキレットを使い、古いシトロエンの面倒も見られる。この上品さと無骨さの同居がたまりません。「バターも回れば虎になるのだろうか」という妙にかわいい発想も、気取りすぎない人間味になっていて好きです。
穏やかな隣人との会話から、パリの地震、目白ヨゴレとのアポ、深夜のクラブ『ノーヘブン』へ。静かな朝の風景に、少しずつ不穏な世界が入り込んでくる構成も鮮やかでした。
最後に聞こえる貨物船の汽笛が、遠い国だけでなく、これから始まる物語へつながっているように感じられます。
タイトル、空気感、台詞回し――全部ひっくるめて、とにかく好みです。リクトが明日の夜、何に足を踏み入れるのか。続きを追いたくなる一話でした。