酒と音楽が流れる場末のバーで交わされる、どこか投げやりな会話。その何気ない時間の中から、ワタルという男の過去と「強さ」への執着が少しずつ浮かび上がってくる構成が印象的でした。
特に、幼少期の孤立から柔道に出会い、ひたすら強さを追い求めていく過程が丁寧で、現在の彼の言葉に重みを与えています。
「アートなんて糞だ」という冒頭の言葉も、単なる暴言ではなく、彼が何を嫌い、何を求めている人間なのかを考えさせる仕掛けになっているように感じました。
派手な展開ではないのに、酒、ジャズ、柔道、そして「強さ」というモチーフが静かにつながっていく。独特の空気感が魅力的な一話です。