短い。短い作品なのに、書かれたものより、ほんの少し多い物語が眠っている。
そんな作品だと感じました。
舞台は、日常の、ほんとうにワンシーン、ひとこま。
「会社の後輩が、ノコギリを借りにきた」という、タイトルそのまま。
けれど私たちのひとこま、そして数えきれないその積み重ねにもまた、
言葉にされない、そして記憶されることもない、一瞬が宿っている。
それは光かもしれないし、闇かもしれない。
その危うさと不確かさが、ほんのひとつの場面を切り取った本作の、
ほんの少しの美しさにも似た、何かなのだと思います。