第3話 攻略法を思い出せば無双できそうな件

○主人公の部屋 翌朝

陽彩を攻略することを決めた後、眠りについた駿。

正直に言えば、起きた時に現実世界に戻っていることを少しだけ期待していた。

だが翌朝起きると知らない天井が目に入り、ここがまだゲームの世界であると再認識させられる。


駿「夢じゃないのか…」


ため息をつきながらふとベッドの近くにある時計を見る。

時計は8時45分を表示している。

その瞬間、青ざめる駿。


駿「8時45分!?確かこのゲームの午前行動帯は9時…!ヤバい!」

慌てて飛び起きて、体をあちこちにぶつけながら最低限の身支度を整えようとする。

しかし自分の本当の家ではないので勝手がわからず、必要なものを探すのも一苦労する。


駿「あ゛ーっ!なんで昨日の夜あんなに漁ったのに何がどこにあるか覚えてないんだ俺!」


自分に怒りながらも何とか身支度を済ませ、再び時計を見ると8時59分。

もうどうにもならないと悟り、遅刻の言い訳を考えながら扉を開ける。

すると、昨日と同じように眩しい光に包まれる駿。


駿NA「うおっ、眩しっ…!あれ、これって昨日と同じ…?」


○オフィス内

目を開けるとそこは自分の部屋ではなく、会社の自分のデスク前だった。

二度目の経験ではあるが、あまりの超常現象に呆然とする。


駿NA「またテレポーテーション…本当に現実じゃないんだな…そして、俺は間に合ったのか?」


キョロキョロと周りを見て、時計を探す駿。

時計を見ると、ちょうど9時になったところだった。

駿を咎める人は誰もおらず、安堵する駿。


駿NA「耐えたー…考え方によってはギリギリまで家にいられるって結構チートだな」


思わずゲーマー的な思考になり一人にやける駿。

そこに陽彩がやってきた。


陽彩「おはよう」


ここはゲームの世界で、陽彩はヒロインキャラだと分かっていても、推しに声をかけられるほど嬉しいものは無い。

内心どぎまぎしながらも、ポーカーフェイスを心がけて返答する。


駿「お、おはよう」


陽彩「プレゼン当日に遅刻ギリギリなんて余裕なのね」


駿「そういう訳じゃ…」


陽彩「まぁプレゼンは13時からだし、また30分前に最終確認したいから声かけて」


駿「分かった」


そして自分の席に戻って作業を始める陽彩。

駿も自分のデスクにあったPCを立ち上げてみるが、ここである事に気づく。


駿NA「あれ、これってイベントが起きるまで仕事してなきゃいけないのか?」


駿NA「せっかくギャルゲーの世界に来たってのに、ここでも仕事をするのかよ…

しかも、ゲームじゃ仕事の詳細関係ないから、ここが何をしている会社で何をすればいいのかわかんねぇよ…」


ゲームの世界でも仕事をしなければいけない事実に辟易とする駿。

何をすればいいのかわからず、適当にPC内のファイルを適当にいくつか開いてみる。

しかし、ゲームの本筋とは関係がないからか何の資料なのかがさっぱり理解できない。


駿NA「ファイルを開けても何が何だかさっぱりわからん」


どうしたものかと考えていた時、さっきの陽彩の言葉を思い出す。


○回想

陽彩「まあプレゼンは13時からだしー」


○オフィス内

駿「プレゼン…そういえば…」


○主人公の部屋 メモ回想

『今週末 陽彩とプレゼン 資料用意 ※PC調子悪い?バックアップこまめに』


○オフィス内

駿「そうだ!!!!」


急に大声を出して立ち上がる駿。

周りの社員は一瞬駿を見るが、すぐにPCに視線を戻す。


駿NA「あのメモが正しければ、今日のプレゼンはあの"イベント"のはずだ!

という事は、攻略を進めるために俺が今やっておくことは…!」


自分が立ち上がったままなのに気づき、辺りを見回しながらゆっくりと座る駿。

自分のPCの中から、それらしき資料を探し始める。


駿NA「あのイベントの始まりは、サーバーに上げていた資料が壊れていたことが発端だったはず…という事は…」


フォルダをしらみつぶしに開き、プレゼンの資料のようなファイルを片っ端から開いていく。


駿「どれだぁ…?」


すると、今までのファイルは見ても理解できないものばかりだったのに、

急に内容が理解できるファイルを見つけた。

思わず前のめりになる駿。


駿NA「この資料だけ内容が理解できる…?という事は絶対これだ!」


駿はそのファイルを自分のデスクトップにコピーし、コピーしたファイルも見て破損していないことを確認した。


駿NA「俺の"経験"通りなら、これで対策はバッチリ!…のはず」


一仕事終えた満足感からか、陽彩との最終確認までの時間をPCを適当に操作して時間を潰す駿。


○オフィス内 12時25分

駿「そろそろ約束の時間か…陽彩に声をかけようかな」


駿が立ち上がって陽彩の席まで行き、声をかけようとした瞬間、陽彩が小さい声で呟いた。


陽彩「嘘でしょ⁉︎なんで⁉︎」


焦った様子でPCを操作している陽彩。

ただ事ではない雰囲気を感じ、陽彩に声をかける。


駿「どうかしたのか?」


駿に声をかけられ、泣きそうな目をしてこちらを振り返る陽彩。

その表情に思わずときめいてしまうが、何とか堪える駿。


陽彩「実は…サーバーに上げてたプレゼン資料のデータが壊れちゃったみたいで…

修復するにもかなり時間がかかりそうなの…」


駿NA「きたきたきたきた、ビンゴ!」


予想が的中し、内心舞い上がる駿。


陽彩「どうしよう…作り直す時間なんて無いし、修復も時間がかかるからもう間に合わない…!」


駿はドヤ顔にならないよう細心の注意を払いながら、用意していたセリフを言う。


駿「大丈夫、俺たまたま午前中にデータのバックアップを取ってたから、それでどうにかならないかな?」


駿の言葉にポカンとする陽彩。

言葉の意味を理解した瞬間、両手で駿の肩をつかむ。


陽彩「本当に!?ちょっと見せて!」


駿「お、おう こっち来てもらってもいいかな?」


陽彩に触れられてドキドキしながらも、自分のデスクまで移動する二人。


午前中に取っておいたファイルを開いて、問題ない事を確認して安堵する陽彩。


陽彩「うん、これなら大丈夫だ!ナイスプレイだよ!ありがとう!」


満面の笑みでお礼を言う陽彩。


陽彩「でもよくバックアップなんて取ってたね、そんなにマメだっけ?」


理由を聞かれてどきりとする駿。


駿NA「まさか『このイベントが起きるのを知ってたから〜』なんて言える訳がないし…ここは無難に」


駿「いやぁ、たまたま?なんて?」


目を逸らして頭をかきながら答える駿。

我ながら苦しい事を言っているとは思ったが、これ以上の言い訳が思いつかなかった。


陽彩「たまたま…でも本当に助かったよ!これ最終確認して一緒に頑張ろう!」


駿「お、おう!」


駿のPCを二人で話し合いながらプレゼン資料の最終確認を進める後ろ姿。


○プレゼン終了後 会議室前 廊下

駿・陽彩「失礼いたします。」


無事プレゼンが終わり、会議室から出る二人。

お互い無言で休憩スペースまで歩いていく。


○休憩スペース

自販機でコーヒーを2つ買い、1本を陽彩に渡す。


駿「お疲れ、はいこれ」


陽彩「ありがとう。じゃあとりあえず…」


プルタブを開け、乾杯をする二人


駿・陽彩「お疲れ様ー!」


コーヒーを一口飲み、お互い満足げな表情になる。


駿「いやぁ、かなり好感触だったな」


陽彩「一時はどうなるかと思ったけど、うまくいって本当に良かった!」


コーヒーをもう一口のみ、申し訳なさそうな表情で駿を見る陽彩


陽彩「本当にごめんね。君がバックアップを取っておいてくれなかったら、どうにもならなかったなって。」


陽彩「私が主導してたものなのに、私がバックアップ取り忘れるミスをしちゃったから…」


陽彩「それなのに君は一切私を責めずに助けてくれて、本当にありがとう」


目をふせる陽彩に、駿はどう返したらいいか迷ってしまう。


駿NA「"香田駿"としてはどう言えばいいのか分からないけど、"主人公・香田駿"なら…」


駿「陽彩がすべてを背負う事は無いよ。頼りないかもしれないけど陽彩の不安を俺にもちょっとだけ預けてほしい」


駿「このバタバタは誰にもバレてないし、今回の事は二人だけの秘密にしよう」


駿NA「こんな感じのセリフだった…はず!」


駿の言葉に、再び笑みを浮かべる陽彩。


陽彩「なに、二人だけの秘密って…でも本当にありがとう」


笑い合う二人。

駿は笑いながらも、攻略方法に関して確信を得た。


駿NA「これだ…!やっぱりゲーム通りのイベントとセリフまで全く同じだ!」


コーヒーを飲み干し、立ち上がる駿。


駿「じゃぁ俺先に戻ってるわ」


廊下を歩きながら、今後の事を考える駿。


駿NA「バロメーターが無いから本当に好感度が上がってるか不安だけど、やるだけやってみるか」


○数日間 オフィス内で検証

検証①

陽彩が好きなお菓子をあげる駿。


陽彩「これ好きなの、ありがとう!」


嬉しそうな陽彩に満足する駿。


検証②

差し入れで飲み物をもらったものの、1本は陽彩が好きなものでもう1本は苦手な飲み物。

好感度を上げるなら好きなものを譲る一択だが、わざと先に陽彩が好きな飲み物を持って行く駿。

陽彩の冷たい視線に冷や汗をかく。


検証③

陽彩がうっかりミスをしていた部分をさりげなくフォローし、それに陽彩が気づく。


陽彩「私のことよく見てくれてるんだね」


少し嬉しそうな陽彩。その表情を見て嬉しくなる駿。


検証④

次はうっかりミスをあえてスルーしてみる駿。

二人揃って上司に軽く怒られる。


陽彩「君がちゃんと見てくれてないからだよ」


怒ったような、拗ねたような感じで駿に八つ当たりをする陽彩。


駿NA「なぜだ…」


○検証を数日続けた後、自分の部屋 夜

検証を始めて数日後、自分の部屋で検証結果をPCメモにまとめている駿。


PC画面には検証内容と自分のとった行動や言動、それに対しての結果が綺麗にまとめられている。


駿「何日か検証やってみたけど、やっぱゲームと全く同じイベントが発生して、全く同じ言動をすれば好感度が上がった感じがするし、間違えたら下がってるって感じがするな…」


駿「ということは…」


PCメモに『結論:ゲーム通りに攻略すればいける!』と打ちこみ、満足そうに頷く。


駿「陽彩ルートの攻略を思い出せば、無双できるって事だな」


-第3話END-



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