第3話 再会

1、城塞都市の大通り。昼



スチュアート紀335年。一字軍(マーロ教皇の命令で東方を攻めた軍隊)の凱旋パレードが催され、凱旋した893が城塞都市の大通りを練り歩く。熱狂する観衆の肯定的な声が響き渡る。


大通りに面した建物の屋根を走る人影。14歳のウィリアムとアナベル。

ウィリアムとアナベル、凱旋した893の顔を順々に見下ろす。


ウィリアム「いたか!?」

アナベル「いない!」


ウィリアムとアナベルの後方に14歳のヘンリーがいる。

ヘンリー、屋根にはって下方に手を伸ばしている。その手の先、バルコニーにいるのはマリア。


マリア「私はいいよ、ヘンリー。無理だよ」

ヘンリー「大丈夫だよ、マリア」


マリア、ためらいながらもヘンリーの手を握る。

マリアを屋根に引き上げるヘンリー。


ヘンリー、おっかなびっくりで屋根を歩くマリアの手を握り、ゆっくりと、ウィリアムとアナベルを追いかける。


ウィリアム「いたか!?」


アナベルの返事がなく、立ち止まって振り返るウィリアム。

アナベル、口元を抑えながら涙を流している。

ウィリアム、寂しい表情を浮かべた後、アナベルの視線の先に目を向ける。


凱旋パレードに、馬に乗って進むカールソンの姿がある。カールソンは白髪になっている。大袈裟に手を振ったりしている他の893と違い、浮ついたところのないカールソン。


ウィリアムの表情が一気に明るくなる。


ウィリアム「ヘンリー! 早く来い! カールソンさんだ! 一字軍の英雄、カールソンさんだ! 東方最強の893、ディーンサラを倒したカールソンさんだ!」


マリア「大丈夫。行って」


ヘンリー、マリアとウィリアムを交互に見た後、マリアの手を放し、ウィリアムに駆け寄る。

ヘンリー、カールソンを見つけて飛び跳ねる。


ヘンリー「かっけぇ!」

ウィリアム「ああ! かっけぇんだ、カールソンさんは!」


アナベル、駆け出す。

マリア、心配を露わにする。


マリア「アナベル!」

アナベル「ごめん。大丈夫だから」


アナベル、屋根からバルコニーに降りる。


ヘンリーとウィリアム、肩を組み、カールソンに声援を送り続ける。



2、城塞都市の酒場。夜



凱旋パレードの興奮冷めやらず、大勢の客が酒場で大騒ぎしている。


酒場の客A「お前、見たか!? 風神のカールソンを!?」

酒場の客B「見たとも! 他の893とは風格が違ったぜ!」

酒場の客C「俺は四年前、絞首台に上ったカールソンも見ているぜ!」


他の席の客も酒場の客Cに注目する。

酒場の客C、エールを飲み干し、もったいぶって話を続ける。


酒場の客C「カールソンが貴族を殺した罪で絞首台に上った時さ! 俺は処刑場の最前列で見ていたんだ! その日は三人、吊るされることになってた! 他の二人は泣きわめていたよ! 母さん! 父さん! 神様! ってな具合にな! そこをいくとカールソンは大したものでな! 泣き言一つ言わず、唯じっと、乾いた目で絞首台を見詰めていたんだ! そうして、カールソンが絞首台に上った時・・・・・・」


ウィルソンが他の席で高々とジョッキを掲げる。


ウィルソン「リチャード・ギア侯爵が現れたのさ! そうして、リチャード侯爵は声高に言った! マーロ教皇が第9回の一字軍東方遠征を決定された、よって、スミス会直系ウッド組若頭補佐カールソン・フィッツロイはブリテンランドの法のもと兵役に就き、我がギア部隊に配属される! ってな! これで絞首刑は中止になったって塩梅だ!」


酒場の客C、顔を真っ赤にして立ち上がる。


酒場の客C「このクソガキ! 俺の話を横取りしやがって!」

ウィルソン「あんたの話じゃねぇ! カールソンさんの話だ!」


酒場の客C、ウィルソンに殴りかかる。

ウィルソン、酒場の客Cのパンチをかわし、カウンターのパンチをお見舞いする。

酒場の客C、吹っ飛んで気絶する。

盛り上がる他の客。


給仕のアナベル、怒る。


アナベル「喧嘩なら外でやって!」


ウィルソン、笑って外に出る。

ヘンリー、給仕のマリアに銀貨を手渡す。

マリア、恭しく頭を下げる。


マリア「ありがとうございます」

ヘンリー「こちらこそ、ごちそうさま」


ヘンリーも外に出る。



3、城塞都市の通り。夜



上機嫌で夜道を歩くヘンリーとウィリアム。


ウィリアム「カールソンさんは自分の力で運命を変えたんだ! 天下のマーロ教皇の軍でこれ以上ないってくらい大きな手柄を立てたんだ! もうスミス会の会長だってカールソンさんを絶縁には出来ねぇ! くそったれの貴族どもだってカールソンさんを吊るせねぇ!」

ヘンリー「ああ! ああ!」


ヘンリーとウィリアム、通行人二人とすれ違う。


通行人A「それで、決まったのか、風神のカールソンが自分の組を持つって話?」

通行人B「とっくに決定事項らしいぜ。この秋にもフィッツロイ組の誕生だ」


ウィリアム、振り返り、通行人の肩を掴む。


通行人B「痛ぇ!」

ウィリアム「本当かよ、その話!?」

通行人A「なんなんだよ、お前!?」

ウィリアム「本当かって聞いてんだ!」

通行人B「フィッツロイ組の話か!? 本当だ!」


ウィリアム、通行人の肩を放し、気が抜けたようになる。


通行人A「飲み過ぎだろ!」

ヘンリー「すみません!」


通行人二人、文句を言いながら夜道に消える。


ウィリアム、満月の夜空を見上げ、武者震いする。


ウィリアム「あの日と同じ夜空だ。ヘンリー」


ヘンリーも夜空を見上げる。


ヘンリー「ああ。同じ夜空だ」

ウィリアム「俺は決めたぜ。いや、既にあの日、決まっていたんだ」


ウィリアム、夜空に拳をかざす。


ウィリアム「俺の命は、カールソンさんのために使う」


ヘンリーも夜空に拳をかざす。


ヘンリー「俺も決まってた」


目を合わせ、それから、拳をこつんと合わせるヘンリーとウィリアム。



4、城塞都市にある和風の屋敷(フィッツロイ組の本家)の前。昼



紅い落ち葉が舞う。

洋風の建物ばかりの中で目立つ和風の屋敷(フィッツロイ組の本家)。その前で羽織袴姿の893が20人、整列している。

洋風の馬車がフィッツロイ組の本家の前で停まる。

馬車からカールソンが降りてくる。


20人の893が一斉に頭を下げる(リアル極道の方がやるのと同じ姿勢)。


20人の893「ご苦労様です!」


カールソン、手を上げる。


カールソン「ああ、ご苦労」


ご苦労様です! という大きな声が続く。それはヘンリーとウィリアムの声。

ヘンリーとウィリアムがカールソンのそばに駆けてくる。


ドスを抜こうとする20人の893。それを手振りで止めるカールソン。


ヘンリーとウィリアム、カールソンのそばで頭を下げる(リアル極道の方がやるのと同じ姿勢)。


ウィリアム「元スミス会直系ウッド組若頭補佐、現スミス会直系フィッツロイ組組長、カールソン組長! 本日はお願いがあって参上いたしました!」


喜びを抑えきれない表情のヘンリーとカールソンとは対照的に、カールソンは無表情。


カールソン「願いとは、何だ?」

ウィリアム「はい! 私ウィリアムとこちらのヘンリーを、どうかカールソン組長の子分にしてください! お願いします!」

ヘンリー「お願いします!」


カールソン、無表情のままヘンリーとウィリアムに歩み寄る。

ウィリアムとヘンリー、興奮した顔を上げる。

ウィリアムとヘンリーを見詰め、カールソン、表情を変える。激怒。


カールソン、ウィリアムの顔を本気で殴る。それから、ヘンリーの顔も本気で殴る。

吹っ飛び、殴られたことが信じられないような顔をするウィリアムとヘンリー。


カールソン「お前らを子分にすることはない・・・・・・カタギで生きろ」


カールソン、フィッツロイ組の本家の敷地内に入る。20人の893が無表情で後に続く。


20人の893のうち、一人だけがヘンリーとウィリアムに近寄る。その男の名はロバート。


ロバート「残念だぜ、実に残念だ。カールソン組で一番の下っ端の俺としてはよ、兄貴風を吹かせたかったのさ」


ロバート、笑いながらフィッツロイ組の本家の敷地内に向かって歩き出す。


ウィリアム、ロバートの足にすがりつく。


ウィリアム「お願いします! 俺とヘンリーをカールソン組長の子分にしてください!」


ロバート、困ったような顔をする。


ロバート「俺に言ってどうする」

ウィリアム「カールソン組長に口を利いてください! 何でもしますから!」


ヘンリーもロバートの足にすがりつく。


ヘンリー「俺も何でもします!」

ロバート「なんだって内の親父にそこまでこだわる?」

ウィリアム「俺たちにとって、カールソン組長は命の恩人であり憧れなんです!」


ロバート、表情を引き締める。


ロバート「憧れの人が言うことは、素直にきくもんだぜ」


ヘンリーとウィリアム、表情が弱々しくなる。

ロバート、笑みを浮かべる。


ロバート「そろそろ放してくれや。でなきゃ、お前らの脳天をたたき潰しちまう」


ヘンリーとウィリアム、俯き、ロバートを放す。


ロバート、フィッツロイ組の本家の敷地内に入る。


両膝を地面に着けたまま動けないヘンリーとウィリアムの後ろ姿。



5、城塞都市の酒場。夜



ヘンリーとウィリアムが酔いつぶれている。


ウィリアム「酒が切れたぞ! ママのエールを持ってこい!」


アナベル、ヘンリーとウィリアムの席を両手の平で叩く。


アナベル「いい加減にしなさいよ! 二人とも、明日も仕事があるでしょう!」


笑いだすヘンリーとウィリアム。


アナベル「何が可笑しいの!?」

ウィリアム「仕事なんかねぇ! 辞めちまったからな!」


アナベル、顔面蒼白になる。


アナベル「辞めたって、コブラーさんの靴屋を?」

ウィリアム「四年近くも働いて、未だに見習いの職人なんざ、やってられるか!」

ヘンリー「俺も辞めたよ、鍛冶屋」


アナベル、わなわなと震え出す。


アナベル「ウッド組の人が世話してくれた仕事を、いつまでも見習いでいるのが嫌だからなんて理由で、辞めたの?」

ヘンリー「フィッツロイ組に入るつもりだったんだよ」

ウィリアム「馬鹿!」


アナベル、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。


アナベル「なにそれ? カタギの仕事を辞めて、893になろうとしたって事?」

ヘンリー「カールソン組長のそばに居るためにはそれしかないだろ」

ウィリアム「お前、本当、馬鹿!」


ヘンリーの口を塞ぐウィリアム。それから、ウィリアムはアナベルの様子をうかがう。

さっきまで青ざめていたアナベルの顔が、今は真っ赤になっている。


アナベル「この、ろくでなし! ウッド組が私たちの仕事を世話してくれた理由は!? 私たちを城壁の内側で暮らせるようにしてくれた理由は!? カールソンさんがウッド組の上の人にお願いしてくれたからに決まってるでしょ! あの人は、自分が大変な時でも、私たちのために動いてくれた! それなのに、仕事を辞めて、フィッツロイ組に入ろうとするなんて、カールソンさんに対する裏切りでしかないじゃない!」


ヘンリーとウィリアム、後ろめたそうな顔をする。


アナベル、テーブルをひっくり返す。


アナベル「出てけ! 恩知らずは出てけ!」


ウィリアム、悪態をつきながら酒場を出る。

ヘンリー、マリアに支払いをしようとする。


アナベル「私が払う! 早く出ていけ!」


ヘンリーも酒場を出る。


酒場の奥から酒場のママが出てくる。


酒場のママ「アナベル。他のお客さんも居るんだよ」


酒場の他の客たちが唖然としてアナベルを見詰めている。

アナベル、必死に怒りを静めようとしながら口を開く。


アナベル「ごめんなさい・・・・・・」



6、貧困街の人が多いエリア。夜



粗末な小屋(売春宿)に近付くヘンリーとウィリアム、貧困街の女たちに話しかける。


ウィリアム「繁盛してる?」

貧困街の女B「さっぱりさ。私らももうババアだからね」

ウィリアム「あんたと、そこのあんた。一晩買うよ」

貧困街の女B「銀貨四枚だ」

ウィリアム「二枚の間違いじゃないのか?」

貧困街の女B「値上げしたんだよ」

ウィリアム「ちくしょう!」


ヘンリーとウィリアム、小屋に入る。貧困街の女たちが小屋に入ろうとすると、ウィリアムが制止する。


ウィリアム「一晩、俺ら二人だけにしてくれや」

貧困街の女C「馬鹿にしてるのかい?」

ウィリアム「金は払ってるんだ。俺たちの自由だろ?」

貧困街の女C「うちは宿屋じゃないよ!」

貧困街の女B「よしな。楽できるんだから、いいじゃないか」


貧困街の女B、弱々しい足取りで去る。

貧困街の女C、ウィリアムとヘンリーに向かって左手の中指を突き立てる。


貧困街の女C「男同士でせいぜい乳繰り合ってな!」


貧困街の女Cも去る。


ヘンリーとウィリアム、仰向けに寝っ転がる。


ウィリアム「お前、いい加減、アナベルの893嫌いを理解しろよ」

ヘンリー「ごめん・・・・・・けどさ、アナベルの言ってたこと、正しいよな」


黙りこくるウィリアム。


ヘンリー「カールソンさん、本気で怒ってたな。俺たち、あの人を裏切っちまったんだな・・・・・・明日から、どうする? 乞食でもやるか? それとも、また働かせてもらえるよう親方に頭を下げるか?」


黙りこくるウィリアム。


ヘンリー「寝たのか?」

ウィリアム「起きてる」


上体を起こすウィリアム。


ウィリアム「アナベルが言ったことは正しいかもしれねぇ。俺は靴職人に、お前は鍛冶職人になるのが正しいのかもしれねぇ。それでも、俺は・・・・・・俺は、どうしてもカールソンさんみたいな男になりてぇんだ」


再び仰向けに寝っ転がるウィリアム。


ヘンリーとウィリアム、天井を見詰める。



7、城塞都市の貴族街。夜



貴族街の通りを馬車が走る。

馬車の中で若い貴族の男女が激しいキスをしている。


建物の屋根から黒装束の男(名前はサイト。人種は中東系)が飛び降りる。

サイト、馬車のキャビンに着地。

御者、物音に気が付くも前を向いたまま。


御者「うっかり者が、おまるごと投げたか?」


サイト、御者の脳天にドスを刺す。

御者、息絶える。

サイト、素早く御者の死体の隣に座り、手綱を握る。

馬を止めるサイト。


若い貴族の男女、ようやく異変に気が付く。


若い貴族の男「どうした!? なぜ止める!?」


外からキャビンのドアが開く。

サイト、素早くドスを繰り出し、若い貴族の男の喉を刺す。若い貴族の男、息絶える。

若い貴族の女が悲鳴を上げようとするが、それよりも早くサイトが右手で若い貴族の女の口を塞ぐ。


若い貴族の女の瞳にドスの切っ先が映る。



8、城塞都市の人が多い広場。昼



ヘンリーとウィリアムがだらだら歩いている。


ヘンリー、青空を見上げる。


ヘンリー「もう昼だ。飯でも食う?」

ウィリアム「食い物よりエールが欲しいぜ・・・・・・」


ウィリアム、広場に人だかりが出来ていることに気が付く。


ウィリアム「喧嘩か? ちょうどいい」


ウィリアム、人だかりに近付く。ヘンリーも後に続く。

ウィリアムとヘンリー、人だかりをかき分けて進む。

ウィリアムとヘンリー、人だかりの中心に吟遊詩人が居るのを目にする。


ウィリアム「なんでぇ。吟遊詩人かよ」


吟遊詩人、小型のハープを奏で、歌い出す。


吟遊詩人「昨夜起きた世にも恐ろしい事件! 前途ある男女を襲った悲劇! ああ! 麗しのジョージ! カヴェンシュ家の一粒種! ああ! 麗しのエレノア! セシル家で唯一美しい花! 彼らの恋と命を引き裂いた凶刃! 絡み合う柔肌に刻まれた衝撃の文言!」


吟遊詩人、ハープのメロディと声音を変える。


吟遊詩人「英雄ディーンサラの高潔な命を、騙し討ちにて奪った恥知らずのカールソン・フィッツロイ! 我ら唯一絶対の神に誓う! 西方の異教徒に死の罰を下し、ディーンサラの無念を晴らさん!」

ウィルソン「嘘を言うんじゃねぇ!」


激怒しているウィルソン、駆け寄って吟遊詩人の胸ぐらを掴む。


ウィルソン「カールソンさんは騙し討ちなんて絶対にしねぇ!」


吟遊詩人、苦しそうにする。


吟遊詩人「僕は、昨夜起きた事件について歌っただけだ・・・・・・」


ウィルソン、冷静を取り戻し、吟遊詩人の胸ぐらを放す。


ウィルソン「貴族の体に刻まれたっていう文言、一字一句間違いはねぇんだな?」

吟遊詩人「僕は事実をありのままにしか歌わない」


ヘンリー、既に人だかりをかき分け、走り出している。

ウィリアムも人だかりをかき分け、ヘンリーを追う形で走り出す。



9、城塞都市にあるフィッツロイ組の本家の前。昼



ヘンリーとウィリアム、汗だくになりながらフィッツロイ組の本家の前まで走ってくる。

屋敷の閉じられた門を激しく叩くヘンリーとウィリアム。


ヘンリーとウィリアム「カールソンさん! ご無事ですか!? カールソン組長!」


門が内側から開かれる。

門を開いた893、顔をしかめる。


893「昨日のクソガキどもが、何を血迷ってやがる?」


ウィリアム、893の羽織を掴む。


ウィリアム「カールソン組長は無事なのか!?」

893「放さねぇか、畜生!」


893、ウィリアムの顔面を思いきり押す。

ウィリアム、吹っ飛ぶ。


ヘンリー「殺された貴族の体に、カールソン組長への殺害予告と取れる文言が刻まれていた! カールソン組長はご無事ですか!?」

893「おめぇも畜生か!」


893、ヘンリーを殴る。

ヘンリー、吹っ飛ぶ。


ウィリアム、必死の形相で再び893の羽織を掴む。


ウィリアム「カールソン組長は!? カールソン組長は!?」


ヘンリーも893の羽織を掴む。


ヘンリー「ご無事なんですよね!?」


893、気圧される。


893「てめぇらは、うちの親父が訳の分からねぇ殺人鬼にタマを取られると思ってるのか?」


大きく目を見開くヘンリーとウィリアム。


ヘンリー「それじゃあ・・・・・・」

893「無事に決まってるだろうが」


全身の力が抜けるウィリアムとヘンリー、893の羽織を放し、へたり込む。

893、羽織の乱れを直す。それから、門を閉める。


ウィリアム「冷静になってみれば当たり前の話だ。カールソンさんが簡単にタマを取られるわけがねぇ」

ヘンリー「だけど、この城塞都市の内部にカールソンさんのタマを狙ってる奴が居るのは確かだ。いくらカールソンさんが強くても、絶対にタマを取られねぇなんて保証はねぇ」


ウィリアム、少し黙った後、勢いよく立ち上がる。


ウィリアム「カールソンさんのタマを狙うクソ野郎のタマを俺たちが取ればいい」


ヘンリーも勢いよく立ち上がる。


ヘンリー「恩返しになるな!」

ウィリアム「ああ! あの人に、恩返しできる!」

ヘンリー「しかし、クソ野郎の居場所をどうやって探す?」

ウィリアム「俺に考えがある! 走りながら話すぜ!」


ウィリアム、駆け出す。ヘンリーも駆け出す。



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