“何もない迷宮”から始まる物語なのに、読み進めるほど世界の裏側が見えてくる。
魔王が目覚めた瞬間から状況は最悪で、資源も記憶もなく、敵はアンデッドばかり。
そこへ現れるミストの存在が、物語の空気を一変させる。
彼が淡々と差し出す知識や策が、後になって効いてくる構造が心地よい。
腕力ではなく、噂、装備、布石。
積み上げた“準備”が勝敗を左右する展開は読んでいて爽快だし、群像劇としての視点の切り替えもテンポを崩さない。
魔王、側近、冒険者、貴族――それぞれの思惑が絡み合い、迷宮が本物の脅威へ変わっていく過程が面白い一作。