ようこそ第六生徒会へ
印雅
第1話
登場人物
赤城有夢 (アカギ・アルム)
陽井灯 (ハルイ・アカリ)
弥生 (ヤヨイ)
大里まとい(オオサト・マトイ)
※学生寮の中
四月三日。
少し古めの学生寮の一室。3畳半。
色の褪せた畳の床には布団といくつかのダンボール。
ちょっと大きめの真新しい制服を着た赤城有夢。15歳。少しくせ毛で線の細い地味目の男子。
今日は入学式と壁に貼られたカレンダーに書かれている。
三月末に入寮したが、荷ほどきは全然終わっていない。
有夢「えーっと……ハンカチ、ティッシュとお財布、生徒手帳にマスク」
各アイテムをポケットから出して確認する。
財布は小学生から使っている年季の入ったスポーツメーカーの二つ折りのマジックテープで留めるタイプ。
有夢「……あっ、地図、地図。地図どこだっけ?」
有夢、花粉症のせいで鼻をすすりながら準備をしている。
突然、部屋のドアを叩く音がする。
灯「有夢いるかい? いないなら諦めるが、いるなら一緒に学校へ行きたいんだけど、もし嫌じゃなければ一緒にどう?」
有夢、返事をすると引き戸の入口が開き、同じ制服姿の男子生徒が立っていた。
陽井灯。15歳。有夢と同じ寮住まいで新入生。パッとしない地味な男子。少し毛深い。身長は有夢より低い。
有夢「あ、えっと……あかり君だっけ。おはよう。ちょっと待って、学校の地図が見当たらなくて」
灯「あかり君なんて水臭い。昨日も言ったけど俺の事は《ともしび》と呼んでくれ。それと地図なんて無くても人の流れに着いていけば問題ないさ」
有夢「え、あ、う、うん」
灯、地図を探していた有夢を急かすように部屋から連れ出す。
寮の廊下には『片付けて』と貼り紙がされた誰の物か分からない荷物がちらほら置いてある。
※通学路
外は快晴。
有夢と灯は辛うじてまだ桜の花が残っている通学路を歩いている。
他の多くの生徒も学校へ向かって歩いていた。
ナレ「
ナレ「五万人以上が通う学園にはあらゆる学科が混在し、それに伴う学校施設や寮、そして学生街。その大きさは学校と言う枠を超え、ひとつの都市と言ってよい規模で運営されていた」
※巨大な学園の敷地
※増改築を繰り返す校舎
※どこまでも続く森
※雪の残る山々
※海と港
※色々な施設
※活気のある学生街
ナレ「この学園は他の学校と大きく違う点が二つある。ひとつは高等専門学校でもないのに五年制であること」
※大きな洋館の風景。
ナレ「そしてもうひとつが――」
洋館の玄関の前では家政婦姿の妙齢の女性が掃き掃除をしている。洋館の入口には『生徒会館』と書かれた表札が掲げられていた。
※通学路
有夢と灯が並んで歩いている。
灯「有夢は学生街にはもう行った?」
有夢「いやまだ行ってないよ。聞いた話ではお店がいっぱいあって食べたり遊んだりできるらしいね」
灯「そうなんだよ。話で聞く分には超楽しい所らしいんだけど。学校へ行かずに学生街に入り浸ってる不良達も結構いるみたいで」
有夢「まぁ数万人も生徒がいればね……」
灯「嫌じゃなかったら今日、学校が終わってから一緒にどう? ほら、俺達みたいな陰キャがソロでそういう所うろついてるとロクな目に遭わないからさ」
有夢「ジャンプしてみろ的な?」
灯「そうそう、そんな感じ。言われた事ある?」
有夢「ないかなぁ。僕が住んでたのど田舎だから、みんな顔見知りで」
灯「あーそうなんだ。ゲーセンとかカラオケとかは?」
有夢「ないない。若者の溜まり場はホームセンターだったよ。そこが村でいちばん近代的だった」
灯「ホームセンター……。ホムセンはキャンプ用品売り場とか見てて面白かったな。もちろんキャンプなんて行った事ないけど」
有夢「地元のホームセンターにはキャンプ用品売り場なんてなかったよ。普段の生活が半分キャンプみたいな場所だったからね」
灯「マジか……じゃあコンビニは?」
有夢「ホットスーパーってのがあったよ。朝七時~夕方六時までだったけど」
灯「多分それコンビニじゃないと思うけど、まぁいいや。有夢、学校に着いたら別々になっちゃうかもしれないから、ライン交換しておこうよ」
有夢「ごめん……スマホ持ってないんだ」
灯「え、マジか。教えたくないなら正直に言ってくれよ?」
有夢「いや、ホントにスマホ持ってないんだよ」
灯「珍しいな。まぁ厳しい親だと持たせてくれないもんな……苦労したんだな」
有夢「そういう訳じゃ――あ、でもこれからバイトして買うつもり」
灯「じゃあバイトするなら学生街なわけだし、下見も兼ねて――あ、えっと、ここだったかな?」
灯、立ち止まり、道沿いの植木の間を覗き込む。
有夢も一緒に覗くと、植木の奥に林の中へ続く細い道が隠れていた。
灯「この前見つけたんだけど、こっちの道を行くとショートカットできるんだぜ。教えるからこっち行こう。絶対役に立つからさ」
灯、答えも聞かずにさっさと脇道に入っていく。
有夢「あ、待って」
有夢、慌てて後を追う。
※林の中の脇道
有夢「大丈夫? なんか急に森の中って感じになってきたけど」
灯「大丈夫、大丈夫。この前通ったんだから。細い一本道で間違いようがないから」
有夢、ドンドン進む灯の後を追う。
周りは杉の木。通学路と違って木々の背丈が高く薄暗い。
花粉症の有夢、杉の木を見るだけで鼻がムズムズする。ポケットからマスクを取り出して付ける。
目も痒くなってきて、我慢できすに両目をゴシゴシと擦る。
立ち止まっては目を擦って歩き出すを繰り返す。気が付くと目の前の道が二股に分かれていた。そして目の前にいたはずの灯の姿が消えていた。
有夢「あれ、あかりくん? どこ行った?」
有夢、大きな声で灯を呼ぶが返事はない。
有夢、辺りを見回しても灯の姿はない。
林の中はしんと静まり返って薄気味悪い。
有夢「一本道って言ってたのに……」
有夢、目の前の二股の道を見ながら途方に暮れる。
どちらの道が正しいのか迷っていると、片方の道の先に真っ白い狐が姿を現した。
有夢と狐、一瞬目が合う。
有夢「白い狐……綺麗だな」
有夢、その神々しさに思わず狐を追いかけてしまう。
狐を追って進むと白い建物の裏側に出た。建物の壁沿いにぐるりと周り、建物の正面へ移動する。
狐が建物の中に入ったように見えた。
有夢「ここは――第三総合研究棟……」
入口にそう書かれた看板が掛けられていた。
有夢、吸い込まれるように中に入っていく。
入口の脇に布が被せられた何かが置いてあった。
布がパサリと落ちる。布の中身は立て看板で『選抜会場入り口』と書かれてあった。
※第三総合研究棟
内部は理科実験室や調理室、ただ机が並んでいる部屋や空っぽの部屋、音楽室のように壁に孔の空いた部屋等、色んな部屋があった。廊下はリノリウム。
有夢「狐ちゃーん。出ておいでー」
有夢、キョロキョロビクビクしながら廊下を歩き、か細い声で狐に呼びかける。
有夢、階段の上に何かの気配を感じて二階に上がる。二階に上がると、こっちだと言われているかのように狐の姿がチラチラ見える。
狐、とある部屋に入っていった。
有夢、後を追ってその部屋にそっと入る。
部屋は準備室のような小さな部屋。本がぎっしりと詰まったガラス戸のキャビネットやうっすら埃を被った机、地理の授業で使う巻かれた大きな地図、地球儀等が沢山置かれていた。
有夢「どこかなー?」「出ておいでー」
机の下や棚の隙間、床に置かれた荷物の裏などを覗くが見当たらない。
有夢(うーん……気のせいだったのかな)
そう思った時。
――見つけた。
有夢「ん?」
有夢、荷物の隙間の何かに目が行って、そのままブラックアウト。
※とある部屋
有夢、知らない部屋のベッドの上で目を覚ます。
有夢、首だけ動かしてざっと周囲を見る。
有夢(ここは……どこだ?)
有夢、今の状況が全く分からないままゆっくりと上体を起こす。
有夢、部屋の隅で花瓶の花を取り換えている制服姿の女子生徒と目が合う。
まとい「あっ」
有夢「え」
お互い数秒間無言で見つめ合う。
女子生徒が大きな声を出しながら部屋から飛び出していった。
まいと「みんなぁ! 生徒会長が目ぇ覚ましたでぇ!」
有夢「え……えっ?」
有夢、状況が飲み込めず、慌てふためく。
ナレ「この学園は他の学校と大きく違う点が二つある。ひとつは高等専門学校でもないのに五年制であること」
ナレ「そしてもうひとつが――」
ナレ「生徒会長が一人ではないということ」
続く
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