疑似神格に権利が認められている世界で、その権利を守りながらも危険性を監査しなければならない、という設定がとても面白かったです。
特に御食津根のように、直接人を傷つけるわけではなく、参拝者本人には「満たされている」と思わせながら少しずつ生気を奪っていく存在が、「物理的な実害」を基準にした法律では取り締まれないという部分が印象に残りました。単純に悪い神を倒せば解決する話ではなく、法律や権利そのものが壁になっているところに、この世界ならではの難しさを感じます。
また、草間・朱鷺野・鷹取の三人が、それぞれ現場、法、政治という違った視点を持っているのも面白いです。中でも3話で、財団と以前から関係のあった鷹取が悪意なく監査情報を漏らしてしまう展開にはひやりとしました。神崎が鷹取の「自分の勘を評価されたい」という部分を丁寧に満たしながら信頼を築いていたことも含め、人間側の操作の方がむしろ恐ろしく感じます。
御食津根の背後にある東邦精神文化研究財団がどこまで広く関わっているのか、そして冒頭で示唆された「局の歴史から意図的に消される一夜」に三人がどう辿り着くのか、続きが気になりました。
頭の良さ、知識の豊富さ、社会人経験がある読者には、とんでもなく心に刺さる作品だと思います!
社会の闇を敢えて隠さず描いている。
行政の物事を全く変えようとしない姿勢へ少しずつ切り込みを入れる。
法律の穴を指摘し続ける事で、救うべき人間を増やす為に、廃案にされても、心折れず前に進む。
政治家として、利益享受、癒着はありながら、その状況を利用して、少しずつ証拠を掴み、闇を暴こうとする。
三人それぞれの正義を、心情と過程、方向性を通して、丁寧に描かれています。
特に社会構造へのあくなき探求心。汀さんは、本気で世の中をよくしたいと願っている。その姿が、とってもカッコいいです!
拝読しました。
権利神格監査課という設定がまず面白いです。
神様が出てくる話なのに、派手に戦うというより法律や制度の隙間から問題を追っていくのが新鮮でした。
御食津根の神社の話も、最初は普通の神社っぽいのに、参拝した人たちが少しずつ生気を吸われているというのがじわじわ怖いです。
しかも本人たちはそれを、幸せになった、と思っているのが厄介に感じました。
鷹取が財団の人に少しずつ情報を渡してしまっているところも、これは絶対まずいやつでは、とハラハラしました。本人に悪気がないから余計に怖い……
一気に怪しい存在が増えてきて、人造神格の話まで出てきたことで、最初の神社の事件だけじゃ終わらなそうな感じがしてきました。
神格と人間と法律がどう絡んでいくのか、財団が何を企んでいるのか、今後とも拝読させていただきます。
レビューを読んでくださる方へ、まず最初に。
他の作品を引き合いに出して語るのは失礼にあたるかもしれませんが、一人でも多くの方に届いてほしいという思いから、あえて書き記しておきます。
「本作はSCP財団のように、日本の怪異や神格を行政的かつ専門的に扱っています」
そう記しておきます。知的好奇心をくすぐる重厚な考察と冒険が同居しており、ぜひご一読をおすすめしたい作品です。
以下、個人的な感想とレビューになります。
コントロールできないものを制御しようとする試みは、現実の世界でも絶えず続けられてきました。
天候すら操作しようと試みられてきた歴史を思えば、人間の管理欲・支配欲には際限がないように思えます。
本作では、曖昧でありながらも身近な概念である「神」を管理・統制し、崇め、使役する人間模様を通して、道具としての神、親しみやすい存在としての神、そして時に恐るべき存在としての神が、多面的に描かれています。
言葉が通じることもあれば、神罰を下すこともあり、何かに興味を抱いて守ろうとすることもある。
まるで人間の合わせ鏡のようにも映る神々の姿の中に「人の営み」を見出し、それを循環させていく物語が、重厚かつ堅実に紡がれていきます。
文章は「端正」で密度が高く、それでいて結末を急いでただ突っ走るようなこともありません。
行政の言葉と生身の人間の言葉が重なり合い、神と対峙する場面では軽快な興趣と親しみやすさを醸し出しています。
単にシリアスなだけでなく、冒険と決着が織りなす少年心と、真摯に物語や言葉を紡ぐ姿勢が共鳴し、最後にはその夕暮れを受け入れて微笑むことができるような、実に見事な仕上がりの秀作です。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。