第19話 多次元エネルギーpart2

 ユーハンは、自分と同じ境遇(きょうぐう)であるハイマンと出合って驚いた。


 そしてハイマンが、強靭な身体能力を持つことを知って、

「君の超人的な肉体能力と、僕の知識があればケリンシオ相手に十分戦えるはずだ」

 と、ついにケリンシオへ復讐できると喜んだ。


「いや、まだ俺たちにはケリンシオに対抗する力は無い」


 ハイマンは肉体を強化したり知識をつけても、たった二人では、物質文明を極(きわ)めた一京を超える人口を持つケリンシオには、とても勝ち目がないことはわかっていた。


「そうか。だが我々には時間だけはある。君がそう言うなら、そうしよう」


 ニ人は、焦(あせ)らずに味方を集めようと決めたのだが、ある事件が起きて、プルトニンを離れなければいけなくなった。


 惑星プルトニンの近隣(きんりん)の星が、前触(まえぶ)れもなく、いきなり消滅したのだ。


「ついにケリンシオ人の資源確保船が、この星系まで来たか」


 ケリンシオ人は、どんな物質でもエネルギーに変換する技術を持っており、惑星や恒星なとの星を片っ端から吸収している。


 今回の惑星消滅も、なんの前兆(ぜんちょう)もなく急に消滅したという事は、ケリンシオの資源確保船に吸収された可能性が非常に高い。


「まだ、我らの同士が集まっていない」

 だが、このままでは、いずれ惑星プルトニンも住民ごと吸収されるだろう。


 ユーハンは恩のあるクレマンに、ケリンシオ人のことを説明し、プルトニンが近々消滅する可能性が高いことを伝えた。


「私と一緒にプルトニンを離れましょう」


 そして共に脱出する提案をしたが

「そんな事はできない」

 と、クレマンは断った。


「どうしてですか。私の話しを信じていないのですか」


「君のことは信用しているが、私には一族や大勢の生徒が居る。彼らは、そのような話は信じないだろう、彼らを置いて行くことは出来ない」

 クレマンは、もっともらしい事を言っている。


「では、私が説得してみせます」

 ユーハンはどうしても、親切に講義をしてくれたクレマンを助けたかった。 


「プルト族にとって死は終わりではない。ケリンシオのことを説明しても、誰もプルトニンを離れないだろう」


「なぜです。死んでしまえば、元も子もないではありませんか」


「我々の身体はエネルギーで出来ている、死んでもエネルギーは不滅だ」 


 クレマンの思想は仏教で言う輪廻転生(りんねてんせい)に近く、肉体はエネルギーへと変わり、魂は永遠に不滅なのである。 


「その不滅のエネルギーが、ケリンシオ人の娯楽(ごらく)に消費されるんですよ。なんの生産性もない暇つぶしや快楽に使われるだけです」

 クレマンを死なせたくないユーハンは、とにかく必死で説得した。


 数秒の沈黙が流れた後、

「それは少し嫌かもな」

 流石(さすが)にクレマンも、それは嫌であった。


「ですよねぇ。早くこの星系から離れましょう。私が乗って来た宇宙船は亜空間航行が可能なので、他の安全な銀河まで短時間で行く事ができます」


「よし、わかった。身内の者たちを説得して来る」

 ようやくクレマンも、プルトニンを離れる気になったようである。


 早速(さっそく)、クレマンは一族や親しい友人たちを連れて、ユーハンやハイマンと一緒に宇宙船に乗り込んだ。


 しかし当然のことながら、クレマン達はケリンシオに対する復讐(ふくしゅう)には興味を抱(いだ)かず、道中で立ち寄ったアンドロメダ星雲の惑星イプロンに留まる事となる。


 惑星イプロンには、かつて超高度な文明があったようで、巨大な建築物や乗り捨てられた宇宙船などの残骸が、無数に打ち捨てられており、

「我々はイプロンで文明を築いてたイプロン人の研究がしたい」

 との、クレマンから申し出があった。


 クレマンの知識欲を湧(わ)き立てる魅力的な未知のテクノロジーが、惑星イプロンにはあったのであろう。


 ユーハンは、クレマンをプルトニンから脱出させただけでも満足であったので、別れを惜(お)しみつつ、アンドロメダ銀河の隣に位置する、天の川銀河へと向かった。

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