香油の匂い、リュラの音色、大理石の回廊にこもる夜の熱気。華やかなアレクサンドリアの屋敷へ入り込むような感覚で読み始めました。
そこで暮らす若き医師フィロタスは、相手の脈や呼吸から、言葉にされない心の揺れを感じ取ります。大切な人に寄り添う近さが、その人の隠している不安まで伝えてしまうところに、静かな緊張がありました。
彼を庇護するヒュパトスとの親密な時間にも、戦況や政治の影が差してきます。忠義と家族を守る選択の間で苦しむテレマコスの告白も印象的で、この人たちは何を守り、何を手放すことになるのだろうと気になります。
公開中の8話まで読了。身近な温もりが失われるかもしれない怖さとともに、フィロタスの行く末を追いたくなる作品です。