タイトルを見たときは、正直「ムカデとケーキって、どういう組み合わせ?」と思いました。
そして読み始めてみると、いきなりムカデに襲われるという強烈な幕開け。
しかも、その描写が妙に生々しい。
刺され、腫れ上がった状態で必死にムカデを駆除する主人公の姿には、恐怖より先に「これはたまらん……」という感情が来ました(笑)。
一匹でも嫌なのに、まさかの大量発生。
そして、その異常事態の中でも仕事の心配をしたり、隣人との関係を気にしたり、向かいの女性を見て舞い上がったりする主人公。
この妙に現実的な人間臭さが面白いです。
特に、何かがおかしいと感じながらも、主人公がそれを「隣の爺さんの嫌がらせなのでは?」と現実的な方向へ解釈してしまうところがいい。
読者からすると「いや、それ本当にそうなのか……?」と疑いたくなる。
そして瀬戸さんとのやり取り。
ムカデ騒動から一転して、「誤配送の荷物」という自然なきっかけで距離が縮まり、ケーキを一緒に食べる流れになる。
ここで一気に空気が変わるのですが、なぜか素直に安心できない。
むしろ、「このケーキ、大丈夫か?」という嫌な予感がずっと残る。
この、日常的でちょっとした幸福と、不穏な違和感が同居している感じが好きでした。
そして何より、タイトルの「君とケーキと、青頭百足」。
ムカデ、ケーキ、そして「君」。
この三つがどう繋がるのか。
読み終わったあとにタイトルをもう一度見返したくなる作品です。
ホラーや怪異ものが好きな方はもちろん、
「何気ない日常が少しずつおかしくなっていく話」が好きな方にもおすすめしたいです。