第十七章 残る課題
海を見る仕事は数時間で終わって、私たちは船室で眠るように言われた。
ゆっくり休ませてくださるとは、思っていなかった。
船室に入って、私はすぐ眠っちゃった。
カイはどうしていたのかしら。
ちゃんと寝たのかしら。
途中、ドアが開いた気がしたけど。
翌朝。
お父様の知人がいらっしゃる国についた。
私はカイと一緒に船を下りた。
船員さんから何か報告を受けている船長さんがいる。
「なるほど。調査ありがとな」
船長さんが船員さんにお礼を言っている。
……何でしょう。
私は船長さんに近づいた。
船長さんは私たちに気がついたみたい。
こちらを見ている。
「ありがとうございました」
私は深くお辞儀をした。
なんとかお父様の知人のもとに行けそう。
この国まで来たら、あともうちょっと。
……本当にどうなることかと、思っていました。
カイもお辞儀をしていた。
そういえば、カイがお礼している姿、初めてみたような。
「へっ、危なっかしいのか、堅苦しいのか、わかんねぇ奴らだぜ」
船長さんは照れたような顔をしていた。
すっごく頼もしい方だった。
「さっき、報告を受けた。お嬢ちゃんの手配書はこの国には回ってないってな」
えっ、頼んでも、いなかったのに。
すごく手が回るのが、早い。
びっくりした。
「もしかして、わざわざ確認してくださったんですか?」
どうして、私たちのために?
……私たち、妙な二人組って言われていましたし。
気に入ったという理由だけで、乗せてくださっただけでもありがたかったのに。
「まぁアレだ……働いてくれた礼、みてぇなもんだ」
船長は頭をかいている。
働いてくれたお礼?
船に乗るための交換条件だったのに、お礼?
不思議な人だ。
「全く。そんな顔をすんな。いいか、よく覚えとけ」
船長さんが目を閉じた。
そして目をはっきりと見開いた。
息を大きく吸うのが見えた。
「船長ひとりじゃ、船は動かせねぇ」
船にはたくさんの船員さんがいた。
船長さんと船員さんが協力して船を動かしていた。
「意地を張る相手を間違えるなよ」
間違える?
「……」
……全然、そんな姿、船で見なかったのですが。
よくわからない。
「……」
隣にいるカイも黙っている。
私たち二人とも何も言えなかった。
「じゃ、元気でな」
船長さんはそんな私たちを置いて船に戻っていった。
私は船が出発するのを見届けてから、振り返って歩き出した。
不思議な人だった。
……何だったんでしょう。
先程の言葉を思い返してみた。
『船長ひとりじゃ、船は動かせねえ』
船は多くの人の手によって動いている。
何かを動かすのなら手をとりあうことが大切、ということかしら。
『意地を張る相手を間違えるなよ』
……意地を張る相手を間違えてはいけないというのは、何なのでしょう。
意地を張るって自分の意見を押し付けること、だったと思う。
お父様もおっしゃっていた。
人を決めつけてはいけないと。
意地を張ってはいけない。ならたしかにそう。
自分の意見を押し付けたり、相手を決めつけたりはしてはいけない。
船の上なら自分の意見ばかり言っていたらいけないと思う。
……であれば、相手を間違えるとは何でしょう?
船長さんの言い方だと、自分の意見を押し付けていい相手がいるような?
でも、そんなことをしたら、先に進まなくなるような?
……よく、わかりません。
カイに聞いてみたら、わかるかしら。
振り返って聞こうとした。
いつもの少し後ろに、カイがいない。
……あら?
まだカイは船を見送った場所に立っていた。
もう船は見えなくなった、というのに。
もしかしたら、カイも考えていたのかしら。
「カイ!」
私は大きな声で名前を呼んだ。
カイが振り返ったのが見えた。
「早く行きましょう!」
呼びかけた。
カイが走ってくるのが見えた。
今は、先に進もう。
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