本作は吸血鬼同士のバディのお話。
けれども物語のスタートは、人間の女の子と、人間を装った彼から始まります。
主人公・レニーの辿る凄惨な現実。
吸血鬼のエルザは種族が違うゆえか、地獄の底まで残忍で、人の心が壊れる様を楽しむまである。
それに立ち向かう、人間の絆。
力は弱くとも、ちっぽけでも。
レニーが最後まで折れずに生き続けることが、彼女への渾身の一矢なのだ。
そして、カイ。
伊達男然とした彼の背景にあるものも残虐であり、胸が締め付けられるもので。
そんな過去を経ても頼もしく笑う彼に、惚れないでいられるだろうか……。
唇を噛み締めながら、必死でエールを送る場面がたいへん多くありました。
その度に光る「絆」。
一発逆転でも完全勝利でもない。
しかしそれを信じることだけはできる。
それくらい大きくて確かな希望なのだと、気づかせてくれる物語です。
レニーが主人公として本当に魅力的で、投げやりになりそうな場面でも決して折れず、屈しない。誇り高い魂に一度触れたら、彼女を応援せずにいられません。
作者様の重厚でありながら、巧みにコントロールされた読みやすい描写は
光景をリアルに頭の中に描いて、捕らえられてやみません。
覚悟の決まったダークファンタジー。目を逸らさずに見た先に、願いが生まれる。
彼の絆が永遠であれと、願ってなまない物語です。