とある島で「貸し道具店」を営む主人公は突如現われた軍人の男によって監視生活を余儀なくされる。
任務優先の典型的な軍人である彼が、彼女の持っていないはずの異能の監視に務める真意は計りかねない。
島へやってくる空飛ぶ船の動向や貸し道具店の隠されし実態など、多くの事情と思惑を抱える主人公にとって、監視生活はなかなかに都合の悪いこと。使えるものは使うという彼女から飛び出したのは、偽装結婚の提案だった。
それぞれの秘めし想いが露わになるとき、二人の未来はどこへ羽ばたいていくのだろうか。
彼女は彼を手段として。
彼は彼女を目的として。
利害の一致が故の偽装結婚という関係性のぎこちなさは、物語が進むにつれて会話不足から来る気持ちの齟齬を生み出す。やがて『お願いだから、上手くいってほしい!』というじれったさに変わっていく。飄々としていた人物像がゆらゆらとはぐらかされていく感覚は、そのままキャラへの愛着へと繋がる。二人が生活を共にする中で見える互いの新しい一面や、場面ごとの空気感と、キャラクターの魅惑が綺麗に結びつくことがとても魅力的である。
本物か偽物か。
作中で何度も追究されるテーマはキャラクター性や固有設定、エピソードなどに深く関わってくる。
本物だと思っていたものが実は偽物だった。また逆も然り。ひらりとはためいては、手から飛んでいってしまう大切なものを手放すことはとても難しい。
偽物だとわかっていても、握りしめていたいものを離さなければならないときの葛藤。そんな選択をまがい物の二人はどんな想いで選び取るのか。
関係性の変化と個々の人間的な成長が振りまく、甘くて辛いひととき。
小さな羽ばたきと大きな波乱の予感を存分に楽しんでもらいたい。