笑顔で説明されるほど怖い、という感覚をここまで丁寧に積み上げる短編は珍しいです。最後の一場面で、それまでの優しさ全部の意味が変わる。読後しばらく胸のあたりが重かった。嫌な気持ちになりたい方にこそ。
潜入ものって、ちょっと憧れますよね。謎多き工場への潜入調査。日を追うごとに謎が解けるどころか、どんどん増えていき、好奇心を刺激されて読む手が止まりません。私個人の感想ですが、描写が鮮明だからこそ、結構トラウマものです……。
負債持ちの社会的孤立者が行き着いた山奥の工場。そこは温かい「家族」のような職場……のはずだった。なぜ軍手が……。本作の凄みは、怪異ではなく「善意100%で狂っている人間たち」の恐怖を描き切った点にあります。奇妙な規則や同僚たちの異様な共通点など、じわじわと増していく違和感の提示が秀逸。一見するとありがちな潜入劇ですが、すべての伏線が一点に収束した瞬間は何とも言えない後味の悪さ(誉め言葉)。「親切な笑顔」が何より恐ろしいと痛感させられる、サスペンスホラーです!