冒頭からかなり強烈です。
現世で、目の前の人を救うために凶悪犯へ立ち向かった青年。
しかし、正義感だけではどうにもならず、最後には銃弾に倒れてしまう。
そして――死んだはずの彼を待っていたのは、暗闇でも天国でもない。
聖樹を中心に広がる美しい街。
妖精が暮らし、店が並び、学生たちが学校へ通う。
そこは、死者の魂が暮らす異世界の学園都市「エリュシオン」。
この「死んだ後にも日常がある」という設定が、とても面白いです。
宿題があり、授業があり、友人との何気ない会話がある。
それなのに街の外には「幽獄」が広がり、天魔と呼ばれる敵が襲来する。
つまり、楽園のように穏やかな日常と、戦場へ繋がる非日常が同じ世界に存在している。
そして物語の中心にいるのが、白い大鎌を操る少女・白瀬エイラ。
彼女は「死神アヴィス」と呼ばれるほどの異能を持ちながら、その力を誇示するタイプではありません。
むしろ冷静に周囲を観察し、自分が何をすべきなのかを判断して動く人物です。
その一方で、新入生の久我湊もまた、明らかに「普通ではない」。
身体能力の測定では異常な結果を見せながら、本人はまるで力を持て余すことなく、むしろ意図的に抑えているように見える。
何者なのか。
なぜ力を隠すのか。
そして、エイラたちのいるこの世界で、彼は何を背負っているのか。
物語は、こうした謎を少しずつ積み重ねながら進んでいきます。
特に印象に残ったのは、「人を決めつけること」への描写です。
エイラは「白い死神」と呼ばれ、湊もまた測定結果や噂によって、本人の知らないところで「危険な人物」「特別な存在」という輪郭を与えられていく。
けれど作中では、見えた事実と噂や推測を明確に分けようとする人物も描かれています。
このあたりが、単純な「異能を持った主人公が無双する学園ファンタジー」とは少し違うところでしょう。
もちろん、異能バトルとしての見せ場もあります。
白い大鎌。
空中を足場にして跳躍する能力。
想念から武器を生み出す「想念武装」。
そして外敵である天魔との戦闘。
しかし、この作品で本当に気になるのは「どれだけ強いのか」だけではありません。
死んだ人間が、もう一度与えられた人生をどう生きるのか。
そして、もしその人生そのものが誰かによって決められていたのだとしたら――。
タイトルにある「本来の人生を奪い返す」という言葉が、物語の先でどういう意味を持つのか。
美しい死後世界と、そこに潜む不穏さ。
学園の日常と、天魔との戦争。
異能を巡る謎と、登場人物たちが抱える「生前」の人生。
それらが絡み合っていくタイプの作品です。
異世界学園、異能バトル、死後世界、そして「運命への反逆」がお好きな方には、刺さる作品だと思います。
何より、「死んだら終わり」ではなく、
死んだ後から、本当の物語が始まる。
この発想が、この作品の一番の魅力ではないでしょうか。
死後の世界に広がる学園都市・エリュシオン。
そこでは魂に刻まれた願いが異能となり、学生たちは「天魔」と呼ばれる異形と戦っています。
【測れない二人】
周囲から「白い死神」と呼ばれる少女・エイラ。
かなりの強さを持つ彼女ですが、なぜかその資質は普通に測ることができず、「見通せぬ者」として周囲から畏れられています。
そして、新入生の湊。
身体能力もかなり高いのですが、どうやらそれだけではなさそうで……。
このちょっと変わった二人が、これからどう関わっていくのか。気になって読み進めてしまいます。
【丁寧に描かれる世界】
読んでいていいなあと思ったのが、描写の丁寧さ。
異能や武装など独自の設定がいろいろと出てきますが、一つひとつ描かれているので、情景がすっと頭に入ってきます。
特に戦闘場面は、誰がどう動いているのか分かりやすい。設定がしっかり作り込まれているのに、するすると読めるのは嬉しいところです。
【心に残った名台詞】
――味方だと思いたい相手と、味方だと確認できた相手は違う。
敵の敵だからといって、味方とは限らない。
謎の黒鎧について語った時の台詞ですが、物語の奥行を感じさせ、印象に残った言葉です。
エイラと湊、この二人がどんな物語を歩んでいくのか見届けたい方へ、オススメしたい作品です。
一章、二章まで読ませていただきました。
「何か、同種の嗜好を感じる」と思っていたのですが、読み進めるとやはり物語が面白く読みやすかったので、次々と読めました。
一話では、こちらの心理を綺麗に誘導され、作者さんの思惑通りに読まされてしまった感じがして、これは上手いな……と思いました。
一章は、死後の世界や願能、天魔といった、この世界がどういう場所なのかを少しずつ知っていく流れでした。
もちろん登場するキャラクターたちも気になるのですが、個人的には「学生兵」という立場がとても好きです。
学生でありながら兵士でもあるという、特殊な立場だからこそ生まれる日常や緊張感があって、こういう設定からしか得られない栄養を摂取する機会だと感じました。
そして二章は、世界そのものへの興味を引く要素が散りばめられています。
主人公の実力がどれほどのものなのか、新入生の湊はいったい何者なのか、そしてその実力はどの程度なのか。
そういった人物への興味を引っ張りながら、同時に「この世界には、まだ読者に開示されていない仕組みや設定がある」と感じさせてくれるのも面白いところでした。
特に、キャラクターがすでに知っていることについては読者が後から追いついていき、キャラクター自身にも分からないことについては、キャラクターと一緒に読者も世界を知っていく。
そんな話の流れなのかなと思いながら読んでいたのですが、この情報の出し方は個人的にかなり好みです。
謎をただ隠して引っ張るのではなく、「この世界にはまだ自分の知らない何かがある」と思わせてくれるので、設定が少しずつ見えてくるほど、むしろ世界そのものへの興味が増していきます。
一章で世界を体験させて、二章ではそこに人物への興味と、まだ見えていない世界の仕組みへの興味が重なってきた感じです。
この先、何が明らかになっていくのか楽しみにしています。
どこにでもある駅前。
夕方の買い物客。
ドラッグストアの照明。
惣菜屋から漂う油の匂い。
そんな日常を、一発の銃声が破壊する。
強盗事件に遭遇した主人公には、逃げることができた。
柱の陰へ下がり、非常口から逃げて、警察へ通報する。
それが正しい。
父親からも言われていた。
「絶対に英雄ごっこだけは止めろ」
それなのに、銃口を向けられた女性を見た主人公は――前へ出てしまう。
ここからの緊張感がすごい。
買い物袋を投げつけ、消火器で奇襲する。
銃を奪い、二人目の犯人も格闘で制圧する。
決して特殊能力を持った英雄ではない。
怖くないわけでもない。
それでも「目の前の誰かが殺される」という状況を見過ごせなかった。
だからこそ、二人の犯人を倒した瞬間には、「やった」と思いました。
――でも、終わっていなかった。
三人目。
主人公自身が死の間際に気づくように、計画的な強盗なら見張り役や逃走を担当する仲間がいてもおかしくない。
その一つの見落としによって、それまでの成功が一瞬でひっくり返る。
銃弾を浴び、床に倒れた主人公へ犯人が吐き捨てる。
「力が無けりゃ、何も守れねえんだ」
あまりにも残酷な言葉です。
主人公は間違っていたのか。
いや、彼が動いたから逃げられた人がいる。
二人の犯人も止めた。
確かに、守れたものはあった。
それでも――足りなかった。
正しいだけでは届かない。
勇気だけでも届かない。
善意など意に介さず、悪意は暴力によって踏み越えてくる。
そして主人公は、
「暴力には、より大きな暴力によって対抗するしかない」
というところまで追い詰められて、命を奪われる。
ここが、この第1話で一番印象に残りました。
もし主人公が最初から力を求める人間だったなら、ここまで重くは感じなかったと思います。
逃げることが正しいと分かっていた。
人を傷つけたいわけでもなかった。
それでも誰かを助けるために手を伸ばした。
その結果として、「力が足りなかった」という現実を突きつけられて死んだ。
そしてタイトルを見ると、この物語の舞台は「死の先にあった異世界学園」。
つまり、これは終わりではなく始まり。
死の瞬間に「力」の必要性を刻み込まれた青年が、魂に眠る異能を手にしたとき、いったい何を選ぶのか。
誰かを守るための力なのか。
自分の運命を奪い返すための力なのか。
それとも、あの日自分を殺した「暴力」と同じものへ近づいてしまうのか。
「正義の味方」になれなかった青年が、死後の世界で何者になるのか。
壮絶な死から始まるからこそ、その先の主人公の生き方を見届けたくなる第1話でした。