どこにでもある駅前。
夕方の買い物客。
ドラッグストアの照明。
惣菜屋から漂う油の匂い。
そんな日常を、一発の銃声が破壊する。
強盗事件に遭遇した主人公には、逃げることができた。
柱の陰へ下がり、非常口から逃げて、警察へ通報する。
それが正しい。
父親からも言われていた。
「絶対に英雄ごっこだけは止めろ」
それなのに、銃口を向けられた女性を見た主人公は――前へ出てしまう。
ここからの緊張感がすごい。
買い物袋を投げつけ、消火器で奇襲する。
銃を奪い、二人目の犯人も格闘で制圧する。
決して特殊能力を持った英雄ではない。
怖くないわけでもない。
それでも「目の前の誰かが殺される」という状況を見過ごせなかった。
だからこそ、二人の犯人を倒した瞬間には、「やった」と思いました。
――でも、終わっていなかった。
三人目。
主人公自身が死の間際に気づくように、計画的な強盗なら見張り役や逃走を担当する仲間がいてもおかしくない。
その一つの見落としによって、それまでの成功が一瞬でひっくり返る。
銃弾を浴び、床に倒れた主人公へ犯人が吐き捨てる。
「力が無けりゃ、何も守れねえんだ」
あまりにも残酷な言葉です。
主人公は間違っていたのか。
いや、彼が動いたから逃げられた人がいる。
二人の犯人も止めた。
確かに、守れたものはあった。
それでも――足りなかった。
正しいだけでは届かない。
勇気だけでも届かない。
善意など意に介さず、悪意は暴力によって踏み越えてくる。
そして主人公は、
「暴力には、より大きな暴力によって対抗するしかない」
というところまで追い詰められて、命を奪われる。
ここが、この第1話で一番印象に残りました。
もし主人公が最初から力を求める人間だったなら、ここまで重くは感じなかったと思います。
逃げることが正しいと分かっていた。
人を傷つけたいわけでもなかった。
それでも誰かを助けるために手を伸ばした。
その結果として、「力が足りなかった」という現実を突きつけられて死んだ。
そしてタイトルを見ると、この物語の舞台は「死の先にあった異世界学園」。
つまり、これは終わりではなく始まり。
死の瞬間に「力」の必要性を刻み込まれた青年が、魂に眠る異能を手にしたとき、いったい何を選ぶのか。
誰かを守るための力なのか。
自分の運命を奪い返すための力なのか。
それとも、あの日自分を殺した「暴力」と同じものへ近づいてしまうのか。
「正義の味方」になれなかった青年が、死後の世界で何者になるのか。
壮絶な死から始まるからこそ、その先の主人公の生き方を見届けたくなる第1話でした。