主人公・深月の視点を通して、私たちはいつの間にか「一般利用者立入禁止」の禁忌の領域へと引きずり込まれます。
最初はただの不気味な古書だった『選別の矢』が、仲間との旅行、理不尽な村の伝承、そして逃れられない「選別」の呪縛へと繋がっていく構成お見事の一言。
特に秀逸なのは、「夢から覚めて日常に戻った」と思わせた後に突きつけられる、現実と幻の境界線が曖昧になる絶望感です。体に残る痛みの幻覚、そして最後にポケットから見つかる貸出カードという「消えない証拠」が、読者に「もしかしたら自分の日常のすぐ隣にも、この図書館はあるのではないか」という底知れぬ恐怖を残します。
ホラー好きはもちろん、じっとりと冷や汗をかくような心理サスペンスや、人間関係の澱(おり)を描いた作品が好きな方に強くおすすめしたい傑作です。