まず、主人公・次郎くんの「衝動」がすごくリアルで、胸に刺さりました。
「親は兄ちゃんばっかり」「高校浪人(進学できなかったこと)を恥だと言われる」……。大人から見れば「まだ15、16歳なんだから」と思うかもしれませんが、あの年頃の男の子にとって、家が居場所じゃないと感じる絶望感って、世界が終わりそうなほど重いものですよね。
5000円とお菓子をカバンに詰めて、20kmも自転車を漕いで東京へ来た。その無鉄砲さが、危うくて、でも最高にかっこいいです。東京駅を見て「異世界」だと感じたり、人混みに圧倒されたりする描写に、彼の心細さと興奮が混じり合っているのが伝わってきて、こっちまでドキドキしました。
そして、ヒロインの彩花ちゃん!彼女の存在がこの物語の「光」ですね。
家出した次郎くんを叱るわけでもなく、2時間かけて会いに来て「とりま歩こう!」と言える彼女のカラッとした明るさ。次郎くんが一人で抱え込んでいた重たい空気を、彼女がひょいっと軽くしてくれている感じがして、読んでいてすごく救われました。
「じろー」と呼ぶ距離感や、ちょっと抜けてる次郎くんを笑うやり取りに、二人の積み重ねてきた時間が透けて見えて、すごく微笑ましいです。
文章の端々に混ざる「次郎だぜ☆」といったおどけた表現も、背伸びしたい年頃の男の子が、不安を隠して自分を奮い立たせているようにも見えて、なんだか愛おしくなりました。
現実は甘くないし、5000円なんてすぐになくなってしまうはず。でも、この二人の危なっかしい冒険がどこへ向かうのか、その「橋を渡った先」にある景色を、親戚のお兄さんのような気持ちでずっと見守っていたい……。そう思わせる、疾走感のある素敵な書き出しでした。
続きがめちゃくちゃ気になります。二人の夏が、どうか残酷なだけではなく、彼らにとって大切な何かを見つける時間になりますように!